発生から一週間経ったトルコ大地震について、気になることを書きたい。
今回のトルコ・シリア国境付近のM7.8とM7.5の二度にわたる大地震は、阪神淡路大震災の22倍のエネルギーに相当すると言われる。
被害の範囲は南北で300キロ、東西で450キロ。面積にすると13万5000平方キロメートルとなり、これを日本に当てはめてみると、関東、中部、近畿地方を合わせた広さになる。
阪神淡路大震災と比べて遥かに強い地震が広い規模で生じたことになる。約1350万人が被災したと言われる。
建物への被害について、全体像はわかっていないが、少なくとも8,000を超える住宅および商業ビルが倒壊したようだ。
学校、病院、役所などの公共の建物も大きな被害を受けている模様だ。都市間のガス、石油のパイプラインや送配電網にも損傷が起きている可能性がある。
今後、トルコには多額の復興費用が発生することになる。最低でも100億ドル、場合によっては840億ドルの復興費用が掛かるとの試算がある。840億ドルはトルコGDPの10%に相当する。
しかしトルコ大地震と比べるとスケールがかなり小さいと言わざるを得ない阪神淡路大震災ですら、復興費用は1150億~1180億ドル程度にのぼった。
しかもトルコでは日本のように厳格な耐震基準のもとで建物が建設されておらず、地震に弱いレンガ造りの家が多く、長らく地震活動のない「空白域」であったため、大地震への備えは皆無であったと言ってよい。
となれば、復興費用はGDPの10%では済まないのではなかろうか。
トルコ大地震は最悪のタイミングで起こった。
トルコではエネルギー価格や原材料価格の高騰、電力価格高騰、利下げ、最低賃金の2倍への引き上げなどによりハイパーインフレとなっている。昨年10月のピークの85.5%からは下がったものの。それでも今年1月時点で57.9%もある。
経常赤字が続いている。外貨準備は他国からの外貨借入に大きく依存している。大地震が起こったことで、外国人観光客からの外貨獲得もしばらく期待できなくなるだろう。
ハイパーインフレが続き外貨流出が続く中、復興作業が進んでいけば、モノとカネが大きく動き、インフレ率は3桁に乗るのではなかろうか。
今年5月14日~6月18日の間には大統領選挙も行われる予定だ。
エルドアン大統領は2003年に首相に就任して以来、20年間にわたって実権を握り、独裁色を強めてきた。有力な後継者は見当たらない。
政権基盤が決して盤石とは言えないなか、大地震への対応を誤れば、大統領選の結果にも影響があるだろうし、政治・社会の混乱は必至である。それはインフレの火に油を注ぐことになろう。
エルドアン大統領はロシアとウクライナを仲介し、ウクライナの港からの穀物輸出再開につなげた。
トルコの動乱は、今後の世界中の食料供給にも影響を与えるかもしれない。