最近、経済・金融分野の「大本営発表」が目立つようになってきました。
日経平均の高騰、賃上げ、経常黒字、貿易赤字の圧縮といった出来事に仰々しい見出しが付けられることが増え、さも経済成長の好循環が回り始めたかのような印象を日本国民に与えようとしています。
先週、日銀がマイナス金利を解除したときの報道には驚きました。
「マイナス金利解除」「17年ぶりの利上げ」「大規模緩和は役割果たした」といった見出しが大賑わいし、日経新聞は一面だけでなく全部で8ページ、マイナス金利解除に関する報道がありました。
大規模緩和は終わっていません。
そもそも「大規模緩和」「異次元緩和」とは、アベノミクス3本の矢の1本として、黒田前総裁時代の2013年にデフレ脱却のために日銀が導入した金融緩和政策のことです。
その柱は政策のターゲットを金利から量へと転換し、年間50兆円(翌年に年間80兆円に拡大)規模の長期国債を買い入れてマネタリーベースを増やすことです。
ところがその後新たな金融緩和策が打ち出された結果、いつの間にかマイナス金利政策、イールドカーブ・コントロール(YCC)、ETF買い入れといったものが大規模緩和を指すようにすり替えられていきました。
今回の会合で日銀は、マイナス金利、イールドカーブ・コントロール、ETF買い入れの3つを撤廃しました。
これらが導入されたのは最初の2つが2016年、ETF買いは2010年であり(本格的な買い入れは2015年から)、大規模緩和、異次元緩和が導入された2013年ではありません。
他方、植田総裁は今後も毎月6兆円(年間72兆円)規模の国債買い入れを続けると言っています。
植田総裁は「大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」と言いましたが、事実に照らせば、本来の意味での大規模緩和は現在も生き続けているのです。
2013年当時なかった指し値オペも継続となるので、むしろ2013年当時よりも強力な緩和政策を敷いていることになります(ゼロ金利+量的緩和 with 指し値オペ)。
今回の日銀の会合は、「大規模緩和は終わった。これからは普通の金融政策に戻していくぞ」と、さも出口戦略を実行に移し始めたかのように印象付けるためのショー以外の何物でもありません。
なんのために?それは、本来の意味での大規模緩和を、出口戦略に関する批判を受けずに、今後も末永く続けられるようにすること以外にありません。
量的緩和をやめてしまえば、株式市場も、日本政府の財布も、揃って爆発してしまいますから。
経済・金融分野でも過度な印象操作が日常茶飯事になってきたので、ニュースをご覧になる際はご注意ください。
それと、今回の日銀の会合が終わり、量的緩和の継続が決まり、しばらく利上げもなさそうなので、もう日本側の材料で為替が円高に振れることはほぼないでしょう。せいぜい財務相や財務官の口先介入くらいでしょうか。
今後日本の為替が円高ドル安に振れるかどうかは米国次第で決まっていきそうです。
先のFOMCでは、市場はFedがややハト派的になったとして短期的に円高ドル安に少し振れましたが、ドットチャートはややタカ派寄りにシフトしました。
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長期資産形成の友であるたばこ銘柄のフォローアップをしています。
新NISAが始まりJTが高配当株として大人気ですが、海外株を紹介している身として「たった4.9%の配当利回りしかないの?」と思うしかありません。
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