4月の米国のインフレ率が鈍化したことに、市場はぬか喜びしています。
Fedが年内利下げに踏み切るとの見方を強めたことで、株高となり、世界株式は過去最高値を更新しました。
食料・エネルギーを除いたコアインフレ率が低下し続けていることを市場は好感しています。
しかしそれでも4月のコアインフレ率は前年同期比3.6%と、インフレ目標2%には程遠い大きさとなっています。
コアインフレを細かく見ると、商品価格は前年割れし下げを拡大しているものの、サービス価格は上昇しています。
コア商品価格が低下しているのは、新車・中古車価格の下落が続いているためです。
パンデミック時にサプライチェーンが混乱し、パワー半導体などの車載半導体が大量に不足したため、自動車価格は大きく値上がりしました。新車の納車待ちが1年と言われていたときもありました。
これら供給の問題がかなり解消されたことから、自動車価格の値下がりが続き、商品インフレは鎮静化しているのです。
その一方でサービス価格が上昇していますが、実はこれも多くは自動車要因です。それは自動車保険と自動車整備・修理の値上がりです。
特に深刻なのが自動車保険の値上がりです。2022年以降、自動車保険の保険料は加速しながら値上がりを続けてきました。
いまでは前年から20%以上値上がりしており、米国で社会問題になっています。
自動車整備・修理のインフレ率も、10%前後の高い数字が続いています。
自動車保険の値上がりは、自動車整備・修理費用の増加、自動車故障の増加、自動車事故発生の増加が原因です。
自動車整備・修理費用の増加は、需要の増加、供給不足、それに車の修理が難しくなっていることによって起こっています。
これらをもたらしている要因は様々あります。そのうちの一つは新型コロナウイルスの感染拡大です。
サプライチェーンの混乱と半導体不足で新車が供給不足となり、故障しやすい中古車の販売が急増しました。
また急増感染拡大の期間に自動車メーカーは生産中断を余儀なくされ、これが自動車の品質悪化につながりました。これらによりパンデミック以前と比べ全損する車が増え、保険金請求が増加しています。
市場は低下しているコアインフレに注目しますが、食品、エネルギー、住居を除いたスーパーコアインフレ率が今年から反転上昇し続けていることを無視しています。
4月にスーパーコアインフレは4.88%にまで高まりました。
スーパーコアインフレの上昇が止まらないことの本質は、サービス分野における深刻な人手不足にあります。
自動車整備を始め、生活には欠かせないものの、仕事がキツい、古臭くて汚いイメージ、なのに賃金が安いエッセンシャル職業に若者たちは就きたがりません。
このことが、米国のインフレを粘っこいものにし、長引かせることになります。この状況で原油価格が1バレル100ドルに達しようなら、インフレ鎮静への市場の期待は失墜します。
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