日本は世界最大の経常黒字国であるとの幻想

[2024/01/12 NHK]11月の経常収支 10か月連続黒字 エネルギー価格下落が要因

日本が海外との貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す去年11月の経常収支は、10か月連続の黒字となりました。エネルギーの輸入価格が下落したことが要因で、黒字額も前の年よりも1500億円余り増えました。

財務省が12日に発表した国際収支統計によりますと、去年11月の日本の経常収支は1兆9256億円の黒字となりました。

黒字は10か月連続で、黒字額は、前の年の同じ月より1533億円増え、統計が比較できる1985年以降では11月としては最も大きくなりました。

[2023/12/29 日本経済新聞]円、3年連続「最弱通貨」 金利差拡大で対ドル141円台

2023年も円は「最弱通貨」に沈んだ。円相場の年間平均は1ドル=140円台と1990年以来33年ぶりの低水準になった。円はユーロなど他の通貨に対しても下げ、通貨の総合的な実力を示す「日経通貨インデックス」では年間騰落率がG10通貨と呼ばれる主要通貨のうち3年続けて最下位だった。24年は緩やかに円高が進むとの見方もある。

昨年、日本円は世界の主要通貨で最も売られました。

為替は実需で動きます。海外から日本に流れる資金が海外に流出する資金よりも大きければ円高になり、その逆だと円安になります。

為替の実需を図る基本的な指標が経常収支です。日本は世界最大の経常収支黒字国であり、昨年はエネルギーの輸入価格が低下して経常収支は増加しています。

にもかかわらず、昨今の日本円は円安基調がずっと続いています。

実は経常収支は日本と海外とのキャッシュフローの流出入を正確に表現するものではありません。

経常収支のなかには、黒字として計上されても実際に日本に還流せず海外に留まったままのものがあります。

例えば再投資収益というものがあります。これは日本企業が海外子会社で得た収益のうち現地で留保させた分のことです。

アベノミクスの始まった2013年ごろから再投資収益は増えだし、2021年以降はそのペースが加速しました。

再投資収益は日本企業が2000年代、2010年代に海外M&Aを積極的に進めたことで増え始めました。

海外M&Aは一服しましたが、2020年代に入り、海外で稼いだ収益をそのまま現地で設備投資や買収資金に充てるという動きが本格化しています。

他にも、米国債などへの投資で得た債券利子は、通常再投資に回されるので、日本には戻ってきにくいです。

2022年の経常収支は10.7兆円の黒字でした。しかしこうした日本に戻ってこない分を除いた「実質経常収支」は8.8兆円の赤字でした。

下図の青線が皆さんが目にする経常収支、黄線が「実質経常収支」です。日本の為替は黄線で決まっていきます。

★日本企業はもう、円安で稼げなくなりました。

あなたが毎月支払っているネットフリックス、アマゾンプライム、スポティファイといったサブスク料金は、海外への資金流出となりサービス収支の赤字に貢献しています。

近年の円安ドル買いの進展を見て、流れに乗り遅れたとあなたが思われているのであれば、それは大きな間違いです。

日本円の実質実効為替レートはすでに1ドル360円時代の水準に落ち込んでいるのに、実際の為替レートは超円高すぎます。

日本円の行く末について、本日配信のアボマガ・エッセンシャルの記事にて詳述していますのでよろしければご覧ください。

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