皆さんはバブル崩壊について、どのようなイメージを持っているでしょうか。
普通の人は、バブル崩壊に対して悪いイメージ、暗いイメージを持っていることでしょう。
バブル市場に参加していた人々がパニックに陥り、多額の損失を出すことだけにとどまりません。金融機関はリスク回避のため貸し渋り、貸し剥がしに舵を切り、財務状況の悪化した企業や金融機関は次々と倒産し、不況に陥ります。失業者が増え、消費は冷え込みます。
特に日本人の場合は、1990年代初頭の不動産バブルの崩壊から現在まで経済はほとんど伸びず、実質賃金が上がらないどころか減少傾向が続いてきましたから、尚更、バブル崩壊に対して悪いイメージを持っていることでしょう。
1990年代の日本の不動産バブルの崩壊や、2007年のサブプライムローン危機に端を発する不動産・株式バブル崩壊は、経済や金融に大打撃を与える悪いイメージを持つものでした。いずれも不動産の金融化が原因にあります。
現在の中国の不動産バブルも、銀行やシャドーバンキングから資金を調達したデベロッパーが需給を無視して高層マンションを次から次へと建設し、富裕層が投資目的で住宅を購入して価格が吊り上がって形成されており、崩壊すれば経済や金融に大きな禍根を残すことでしょう。中国の不動産市場はGDPの1/4程度を占めます。
しかしバブル崩壊は何もすべて悪いものではなく、多くの人々が待ち望んでいるものである場合もあるのではないでしょうか。少なくとも現在の米国の住宅バブルを見ているとそのように思います。
パンデミック以降、米国の住宅価格や賃料は大きく値上がりしてきました。中古物件不足や建設人材の不足や資材の高騰、そして何よりもFedのQE・ゼロ金利政策が価格を必要以上に押し上げてしまった感があります。
この状況に多くの米国人は困っています。せっかく住宅ローン金利が歴史的な低さであるにも関わらず、快適なリモートワークが可能な一戸建て住宅をなかなか購入できずにいます。
パンデミックで仕事を失い、家賃を払えず家の強制立ち退きに迫られた人たちは、安い賃料の借家物件を見つけられず、泣く泣くホームレス生活を送っています。
彼らは、住宅価格や家賃の大きな調整を望んでいます。人手不足で低所得者の賃金上昇率は物価上昇率を大きく上回っており、住宅バブルさえ落ち着けば低所得者にとっても快適な住居を探す意欲が生まれます。
2000年代の住宅バブルの際は、住宅ローンの半分が信用スコアが720未満で、そのうちのおよそ半分が信用スコア660未満のサブプライムローンであったため、住宅価格の急落と金融危機がセットになりました。
現在の米国の住宅ローン残高は先の住宅バブル期を上回っていますが、その大半は信用スコアが760以上の優良者向けであるため、住宅価格の急落が先のような金融危機に結び付くような状況ではありません。
多くの米国人にとって、現在の住宅バブルの崩壊は待ち望むべきことになっています。
現在の米国の住宅バブルは需給逼迫も反映していますから、根本的な解決方法は住宅建設を急ピッチで進める以外にありません。
しかし低金利も大いに住宅価格高騰に貢献しているはずです。Fedのテーパリング加速や早期利上げは、住宅ローン金利を高めるデメリットはあるものの、家を求める多くの米国人に大きな機会を与えるかもしれません。
パウエル!仕事しろよ!