ウォール街の強気見通しの裏で進むインサイダー売り

ウォール街の強気見通しが止まりません。

バンクオブアメリカが最近公表したレポートによると、今年の米国の経済成長率は4.6%から5.0%程度になると予測しています。

これは、今年1月に世界銀行が経済見通しの中で示した、ベースラインシナリオにおける米国の予想経済成長率である3.5%を大きく上回る数字です。

この強気見通しは、新型コロナウイルスをめぐる米国の状況が今後大きく改善すると予想しているためです。

米国の新規感染者数は1月8日に30万人超えのピークをつけたあと減少しており、19日は18.5万人でした。

死亡者数は増加を続けていますが、これは新規感染者数の増加に数週間の遅れをもって現れるため、近いうちに減少傾向になるとみられています。

なお、米国のCOVID-19による累計死亡者数は41万人を突破し、米退役軍人省が発表する第二次大戦の戦死者数である40万5399人を超えました。

人手不足等による配布の遅れなどで米国のワクチン接種は計画通りに進んできませんでしたが、ペースは少しずつ加速し、最近は1日当たり80万回程度の接種が出来ています。

ゴールドマンサックスの推計では、米国の介護施設入居者と介護スタッフの約45%がワクチンの一回目の接種を行ったそうです。

感染者数の減少とワクチン接種ペースの加速により、感染により入院する人々(大半は高齢者)が3-4月までに急減し、病床に余裕が出るとみられています。

このようにいくつかの事実を見ていくと、米国のCOVID-19の状況はたしかに改善の方向に向かっているかのように見えます。

しかし仮にCOVID-19の状況が改善し、景気が大きく回復すれば、これまで市場を支えてきた、事実上の財政ファイナンスの継続根拠が失われます。

増税や量的緩和の縮小・量的引き締めへと舵を切る必要が出てきますが、こうした未来をウォール街は無視しています。

もちろん、変異株の流行や、変異株へのワクチンの有効性に問題が出るなどして、COVID-19の状況が改善するというシナリオが崩れる可能性もあります。そのとき、市場は昨年3月のように再び動揺するかもしれません。

市場がどうなるのかは知りませんが、最近米国企業で、インサイダー売りが歴史的水準に増えているようです。自社株買いも再開しており、経営陣は株価を吊り上げた上で利益をむさぼっていることになります。

米国企業の経営陣の市場に対する見方は、ウォール街とは真逆のようです。

画像ソース: Zero Hedge