今回はスーパーマーケットチェーンのクローガー(KR)のフォローアップです。2020年のクリスマスイブに31.39ドルで紹介して以降、約50%値上がりした、紹介銘柄のなかでも有望な配当成長株の一つです。
昨年10月の話になりますが、米国のスーパーマーケットチェーンの売上規模第1位であるクローガーが、第2位であるアルバートソンズを246億ドルで買収するという発表が出ました。すべて現金による買収です。
1株34.1ドルでの買収で、過去30日間の出来高加重平均価格に対して30%のプレミアムとなります。アルバートソンズの2021年度のEPSは2.7ドルでしたので、P/Eレシオ12.6倍で買収できることになります。破格の安値と言えるでしょう。
この発表に市場は非常に驚きました。業界一位と二位のスーパーマーケットチェーン同士が合併することなんて前例のないことだからです。
もし合併が実現した場合、米国の食料雑貨店の実店舗での売上シェアは15.6%となり、ウォルマートの21%に次ぐ規模となります。ただしオンラインでの売上も含めると合併会社の市場シェアはウォルマート、アマゾンに次ぐ第3位となります。
また企業の収益でみると、合併会社はウォルマート、コストコに次ぐ第3位になります(アマゾン除く)。コストコは商品販売からの売上以外に会員料金から収入を得ているため、合併会社の収益はコストコよりも下になります。
米国の食料雑貨店市場は分散しており、6割近くが独立系です。そのため合併しても全米規模で劇的にシェアが増えるわけではありません。
ただ160を超える都市部においては、ウォルマートとクローガー/アルバートソンズが食料品市場の70%以上を支配することになるようであり、事実上2社による寡占状態となります。

前代未聞の買収発表に多くの人々が怒っています。筆頭は労働組合です。クローガー、アルバートソンズ双方の労働組合だけでなく、組合員130万人からなる全米最大級の食料品労働組合も合併に反対を表明しました。
さらに買い物客のなかにも怒っている人たちがおり、買収差し止めを求める訴訟を起こした人たちもいます。
彼らが2つのスーパーマーケットチェーンの合併に反対している理由は大きく次のことです:
・大量の従業員が解雇される恐れがある。・合併が地域内の食料品店の減少につながり、食料や生活必需品へのアクセスが不便になる。・合併で地域的寡占化が進み、販売価格が値上がりする恐れがある。
独立禁止当局もこの合併を問題視しています。合併により食料雑貨店業界における競争を阻害し、地域的寡占・独占が生じやすくなり、納入業者に対する優越的地位を高めて不当に安い仕入れ価格を要求することを懸念しているようです。
両社は2024年初めまでの合併完了を目指すとしていますが、正直、この買収が許可されるのかどうか現時点でも定かではありません。
買収実現が不透明なことからアボマガでの配信も控えてきたのですが、合併について述べておくことはクローガーの成長戦略のさらなる理解にもつながりますので、今回扱うことにしました。
合併が実現した場合のシナジー効果
高インフレとサプライチェーンの混乱に負けず
クローガーへの評価は不当だ
・・・(続きはアボマガ・エッセンシャル配信記事にて)・・・