OPECプラスの追加減産は欧米側の結束を壊していく

昨日のOPECプラスの追加減産発表は、市場にとって不意を突かれた格好となりました。

原油価格は急伸し、ブレント原油は1バレル85ドルに乗せました。アボマガ・エッセンシャルで紹介している石油関連銘柄も5%程度値上がりしました。

今年末まで日量200万バレルを減産するという現行の方針を維持したまま、7月以降に日量160万バレル程度の減産が加わることで、合計で日量366万バレルの原油減産となるようです。これは世界需要の3.7%に相当します。
https://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN2VZ0HE

OPECプラスの突然の追加減産発表は、国際政治における中国とロシア、より広義に拡大BRICSの影響力が急速に目に見えて拡大しているなかで起こりました。

新興国は相次いで拡大BRICSや上海協力機構への参加を申請・検討しています。サウジアラビアもこの流れに加わり、欧米から中露へと外交の軸足が明らかに移っています。

サウジアラビアと以前から反米・親中露のイランが和解したことで、世界の原油・天然ガスの大半を中露・拡大BRICS側が握ることになりました。

これはエネルギー貿易の決済通貨に人民元が広く使われていくことを意味します。ペトロダラーシステムは崩壊し、米ドル貿易圏は縮小し、代わって人民元やその他非欧米側の通貨が使われる貿易圏が形成されていきます。

中露・拡大BRICS主導で新興国の結束が強まるなか、OPECプラスの突然の追加減産発表は欧米側の結束を大きく揺るがしかねません。

一つは対ロシア制裁をめぐる動揺です。欧米側は米国主導でロシア産石油の購入に1バレル60ドルの上限を設けることで協調しています。

昨年12月にEUでこの取り組みが合意されたときはウラル原油価格は1バレル60ドルを下回っていましたが、今回の突然の減産発表でウラル原油価格も急上昇し、1バレル60ドルを超えてしまいました。
https://tradingeconomics.com/commodity/urals-oil

欧州は米国との約束を守るか、それを破ってでもロシア産の石油を(闇取引を使ってでも)調達するかの選択に迫られ始めたわけです。もし米国との約束を破れば、欧米側の結束は決定的に揺らいでしまいます。

なお日本は米国からロシア産の石油・ガスを調達する「お許し」を得ており、目下ロシアからのエネルギー輸入を増やしているところです(そのかわり、半導体分野の中国への輸出制限をきちんとやれよということでしょうか)。
https://jp.wsj.com/articles/japan-breaks-with-u-s-allies-buys-russian-oil-at-prices-above-cap-9d43cd77

もう一つは金融分野での動揺です。Fedは高インフレと銀行不安という、解決策が正反対の2つの難題に直面しています。

インフレが短期的にやや落ち着きそうなタイミングで、OPECプラスは減産発表を行い、原油価格が急上昇しました。

Fedが金融システムを優先して高インフレ対策を怠れば、欧米の庶民の生活はますます困窮し、デモが多発・大規模化し収拾がつかなくなり(フランスのように)、現政権は持たなくなります。拡大BRICS側の産油国の財政も潤います。

かといってインフレ退治を優先すれば、銀行不安が再燃し、金融システムが崩壊し、大恐慌に陥り、やはり欧米の内政は泥沼化します。

OPECプラスの突然の追加減産発表は、拡大BRICS側による欧米側への強烈な一撃であり、米国単独覇権時代の終焉を告げる象徴的なな出来事の一つだというのが、私の見立てです。

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