嵐近づくなか、市場の混乱を見捨てる米中

[アボマガお試し版 No.182]嵐が近づいていますの記事(一部)です。2021/10/04に配信したものです。
 
アボマガ・エッセンシャル(有料版)にお早めにご登録されると、当記事のフルバージョンをご覧いただけます。
→ご登録はこちら

市場はいま、大きな転換期を迎えようとしています。
 
中国恒大集団の債務不履行問題が表面化し、不動産バブル崩壊の懸念がにわかに高まっています。
 
これは、中国政府が不動産開発会社への融資規制「三条紅線」を昨年8月に導入したためです。
 
かつての日本の不動産バブルが何年もかけて崩壊したのは、当時の大蔵省が「総量規制」を導入し、不動産市場に湯水のごとく流れていた資金がパタッと止まったためでした。
 
「三条紅線」は事実上の総量規制であり、不動産市場と経済・金融が密接に結びついた中国は、かつての日本と同じ道を辿ってもおかしくありません。
 
30年前と異なるのは、現在は金融のグローバル化が遥かに進んでいるため、中国不動産バブルの崩壊は中国国内の問題にとどまらず、やがて世界の市場に波及してもおかしくないことです。
 
それだけではありません。天然ガス、石炭、原油価格が急騰し、インフレ懸念がますます高まっています。
 
1年間で天然ガスは132%、石炭は281%、原油は94%、それぞれ値上がりしました。すべて供給不足やサプライチェーンの混乱が主因です。
 
特に天然ガス・LNG価格高騰が最大の懸念材料です。中国・日本・欧州・韓国でLNG争奪戦が本格化していくことでしょう。日本で再び電力卸価格が高騰し、市場連動型電気料金プランの契約者は一年前の地獄に再び見舞われる可能性があります。
 

 
最近、長期金利の上昇が続いています。インフレ懸念が高まれば、長期金利はますます上昇していきます。
 
株式、債券、不動産バブルはすべて長期金利の低下・低位低迷によって形成されてきました。長期金利の上昇はこのトレンドを反転させることになります。
 
 
リーマン危機やコロナ危機のとき、中国や米国は速やかに巨額の財政出動やQEを行い、市場の早期回復に努めました。
 
しかし世界の工場である中国は石炭価格高騰による電力不足に対処するため、自国や世界の経済を犠牲にして、企業の電力利用に制限を掛け、企業活動を抑制しています。
 
Fedはテーパリングや利上げに向けて動き出しており、エネルギー価格高騰・高位維持が続けば、世界経済が停滞してもインフレが落ち着くまでQE拡大は難しくなります。
 
金融危機が起こっても、過去2回の危機とは異なり、政府や中央銀行が速やかに対処してくれることを望むことは難しいようです。