ロビンフッドのゲームストップ株取引制限と最大顧客シタデルの関係

[2021/01/29 ロイター通信]米ロビンフッドに批判殺到、ゲームストップなどの取引制限巡り

ロビンフッドは市場のボラティリティーや情報の周知徹底の必要性を理由に挙げ、このところ急激に値上がりしていたこれら銘柄の取引を停止するとブログで発表、特定の証券の取引に必要な証拠金も引き上げた。
ただ、同社はその後の投稿で、29日から対象銘柄の購入を限定的に認める方針を示した。
取引を制限された各銘柄は28日の取引で急落。ゲームストップは44%安で引けた。ただ、ロビンフッドからの最新発表を受けて時間外取引では急反発している。
ツイッターには個人投資家によるロビンフッドへの批判が殺到。ユーザーの一人は「利用者に自由な取引を提供するとの約束を果たすよりも自社が炎上するのを選ぶなんて狂っている」と投稿した。

ロビンフッドは手数料がゼロの個人投資家向けブローカーとして、多くの個人投資家をひきつけ、昨春の米国でのコロナパンデミックで在宅時間が長くなったことで、個人投資家による口座開設が殺到しました。

勘違いしてはいけないのは、こうした個人投資家はロビンフッドの顧客ではないことです。

ロビンフッドの顧客は、高頻度取引(HFT)やマーケットメークをするヘッジファンドです。彼らに個人投資家の取引情報を提供した対価が収入源だからです。

ロビンフッドの最大顧客は、ヘッジファンドのシタデルの傘下にあるシタデル・セキュリティーズであり、収入の半分程度を依存しています。

シタデル等のヘッジファンドは、受け取った取引情報から将来のスプレッドを予測することができ、高頻度取引により利益を得てきました。

さて、ゲームストップ株を大量に空売りしていたヘッジファンドのメルビン・キャピタルは、個人投資家の爆買いによる株価暴騰で、損失が急拡大し、破綻寸前に陥りました。

これを見た2つのヘッジファンドがメルビンに計27.5億ドルの資金を提供し、メルビンの命は首の皮1枚でつながっています。

救済措置をしたヘッジファンドの一つがシタデルであり、20億ドルを提供しました。

ロビンフッドが昨日、ゲームストップ等、多額のショートポジションのある株式の売買を一時停止した一つの背景に、最大の顧客であるシタデルの圧力があったと考えるのは自然です。

メルビンのさらなる損失拡大を抑えるためです。空売りした銘柄の株価の上昇が止まらないと、損失は無限大に増えていき、救済した意味がなくなりますから。

何故、シタデルがメルビンを救済したのか、その理由はいまのところわかりません。取引制限をすれば、個人投資家とのトレードで収入を得ているシタデルの業績にも響きますから、相当切実な理由があると考えられます。

今年1カ月足らずの間に、米国のショートセラー(多くはヘッジファンド)はすでに推定700億ドル以上の損失を被っています。

ショートポジションを持っている事実上すべてのヘッジファンドが打撃を受けていることになり、損失が無限大に拡大していけば、多額のレバレッジをかけるこうしたショートセラーは皆潰れてしまいます。

シタデルのメルビン救済や、ロビンフッドの取引制限措置には、こうした背景があるのかもしれません。

今回の取引制限は、法律や規制、SEC等の指図に基づくものではなく、取引システムが不安定になったことを表向きの理由に、ロビンフッド等のブローカーが自分たちの判断で行ったもので、前例のない行為です。

最初に前代未聞の制限措置を取ったのは、ロビンフッドではなくTDアメリトレードでした。その後ロビンフッド、インタラクティブブローカーズ、シュワブ等のブローカーが追随しました。

ただ、タイミングが悪すぎでした。

現在、トランプ前大統領のツイッターアカウントの永久凍結などで、ICT企業が政府を超越する権限を持つことがあらわとなり、民主主義や言論の自由の崩壊を危惧する声がとてつもなく大きくなっている最中にあります。

ロビンフッドの勝手な取引制限措置は、ウォール街の利益を優先し、いちベンチャー企業の分際で身勝手に権限を行使したものと映り、民衆の怒りの火に油を注いでしまったようです。

ロビンフッド以外のブローカーには怒りの矛先はあまり向けられておらず、ロビンフッドが事実上のスケープゴートにされた形です。残念。

ロビンフッドは取引制限措置を本日解除しますが、後の祭りです。

個人投資家は、ますます一致団結し、反撃に出ることでしょう。この記事を書いている時点で、ゲームストップ株は時間外取引ですでに株価が100%以上値上がりしています。

そうなるとショートセラーは、損失補填や追証で現金の用意を迫られますから、保有する株式・債券等を投げ売りするしかありません。

市場の嵐にご注意ください。なお、ロビンフッドのビジネスモデルは崩壊してしまったんではないですかね…