いま米国では主に若者の違法薬物の被害の増加が大きな社会問題になっています。
日本でもよく知られているのはオピオイド、とりわけその一種である化学物質フェンタニルの過剰摂取です。
フェンタニルは手術時の麻酔や集中治療時の鎮痛薬などとして広く使用されてきましたが、ヘロインより何十倍も強力で、重さにして2ミリグラム、食塩で例えると20粒程度のひとつまみにも満たない量で死に至ります。
米国の薬物過剰摂取による死者数は増加の一途を辿り、コロナパンデミックの発生した2020年以降に加速しました。
2021年の薬物過剰摂取による死者数は10万7622人にのぼり、その約3分の2に当たる7万238人はフェンタニルによるものだと言われています。
同年に銃が原因で死亡した米市民の数は約4万8000人ですから、その1.46倍の人々がフェンタニル中毒で亡くなったわけです。
日本であまり知られていませんが、米国では実はもう一つ、別の違法薬物が若者のあいだで急速に広がっています。使い捨て電子たばこです。
米国ではジュールのフレーバー付き電子たばこが未成年者のあいだで流行し、急性肺疾患などの呼吸器障害を起こし緊急入院する若者が続出しました。
これを受けて当時のトランプ政権は2020年にフレーバー付き電子たばこの販売を禁止にしました。これによりジュールのフレーバー付き電子たばこは米国市場から淘汰されました。
ところが使い捨て電子たばこは規制の対象外だったのです。この穴を突いて、ジュール撤退で空いたフレーバー付き電子たばこ市場に使い捨てタイプがどっと流れ込んだのです。
フレーバー付き電子たばこには、ピンクレモネード、キャンディ、スイカ、レモンドロップ、ストロベリー ピニャ コラーダ、トロピカル レインボー ブラストといった甘くフルーティーで未成年者の心をくすぐる多種多様なフレーバーがあります。
しかも使い捨てタイプは紙巻きたばこと同じように吸って捨てるだけなので誰でも気軽に吸え、比較的安価のため、ジュール以上に若者を虜にしているのです。
使い捨てたばこはジュールよりも遥かに大量のニコチンリキッドを含んでいます。
そんな中毒性の高い使い捨てベイパーの99%は、FDAの認可を受けていない、違法販売されているものです。だから大問題なのです。
いまではフレーバー付き使い捨て電子たばこへの規制も強化されたものの、毎年数百万本の使い捨て電子たばこが米国に流入し、ほとんど食い止めることが出来ていません。
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フェンタニルとフレーバー付き使い捨てたばこを米国に大量に供給しているのは、中国です。
フェンタニルは、中国で製造されたものがメキシコの麻薬組織を介して米国に密輸されています。
フレーバー付き使い捨てたばこはハイテク産業の集積地である深圳市で製造され、米国に輸出されています。世界の電子たばこの9割以上は中国製です。
使い捨て電子たばこ会社はいくつもありますが、なかでも張勝偉氏がCEOを務めるヘブンギフツ(Heaven Gifts)という企業が頭一つ抜けています。
ヘブンギフツが2021年の終わりに販売開始した使い捨てたばこ銘柄のエルフ・バーは、米国の中高生の電子たばこ利用者の56.7%が使用している超人気商品となっています。
フェンタニルについては外交問題になっています。
先月に米中首脳がサンフランシスコで会談し、中国によるフェンタニル製造・輸出取り締まりで合意しました。
しかしフェンタニルは原料の化学物質を入手すればラボや小規模な工場で製造でき、しかも軽量でコンパクトで、メキシコの麻薬組織が関与しているため、取り締まることは容易ではありません。
使い捨て電子たばこについても米FDAは外国企業に罰則を科すことは出来ず、対応は全く追いついていませんので、このままだと外交問題に発展しそうです。
中国は清の時代、大英帝国により若者がインド産アヘン中毒者だらけとなりました。かつて被害者だった中国は、いまや加害者になっているのです。
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今回は高配当利回りで長期投資家の資産形成にうってつけとされてきた、たばこ銘柄に関する話題です。
中国製の使い捨て電子たばこは米国のみならず、欧州にも急激に流入しており、若者たちを虜にしています。果たして欧米のたばこ会社にとってビジネスの脅威になるのでしょうか。
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