中国のアルミニウム生産に変調の兆し

アルミニウム市場について少し調べてみました。

アルミニウム価格は2000年代に上昇し、2008年にピークを付けた後、今日まで、いくつかの変動がありながらも下落傾向が続いてきました。ただ昨春以降、価格上昇が続いています。

価格推移は、概ね、他の商品と似たようなものとなっています。

2010年代のアルミニウム価格の下落は、中国の長年にわたるアルミニウム生産能力の拡張とそれに伴う供給増によってもたらされました。

WTOに加盟して以来、中国のアルミニウム生産量は急速に増えていき、瞬く間に世界最大の生産国となっていきました。

2012年以降は世界の生産量の過半数を中国が担うようになり、昨年は全世界の57%を生産したと推定されています。

生産したアルミニウムは、パネル、サッシなどの建築、電力設備、自動車などの中国国内の需要を満たした他、余剰生産分は海外にも輸出されました。

中国からのアルミニウム輸出額は2019年にかけて上昇傾向が続きました。これが国際アルミニウム価格の大きな下押し材料となってきました。

しかし、中国のアルミニウム生産動向に変化が出てきました。

中国政府は2017年にアルミニウム生産施設の建設に関する厳しい措置を導入しました。

国内の生産能力の上限を4500万トンに設定したほか、新しい製錬施設建設には、古い施設の閉鎖を条件づけました。

また中国政府は2021年から25年までの5カ年計画で、一次アルミニウムとアルミナの生産や生産能力を減少に転じるよう勧告しています。

こうした動きの背景には、経済覇権奪取を狙う中国が、アルミニウム、鉄鋼等の企業に多額の補助金を提供して国際競争環境を歪めたことや、大気汚染・気候変動をもたらしてきたとの国際的な批判をかわす狙いがあります。

環境に関して、中国のアルミニウム産業は年間約6億トンのCO2を排出しており、これは中国全体の約6%に相当する、大きなものです。

アルミニウム産業では、製錬での電力使用が主要な生産コストであり、安価かつ安定して調達できる電力が必須です。

アルミニウム製錬において、コストや環境面で最も優れた発電は水力発電です。

中国の場合、2018年にアルミニウムの製錬のための電力の9割を、安価ですが大量の二酸化炭素や汚染物質を排出する石炭火力に依存していました。この石炭依存の割合は、世界的に見ても大きいものです。

中国は昨年、2030年までに炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを果たすとの目標を表明しました。

もし中国が本気であれば、アルミニウム製錬における石炭依存度を減らす必要があります。

昨年下半期に中国はアルミニウムの生産量を大きく増やし、第4四半期には四半期として過去最高でした。

しかし昨年1-10月にかけて、中国のアルミニウムやアルミニウム合金の純輸入量が大きく増えました。過去数年間には見られなかった動きです。

アルミニウム市場の構造が変わりつつあるようです。