予測その1-推測について
今回はWPAサイクルの中で最も重要な要素であるP、つまりPredict、予測について話を行っていきます。
WPAサイクルの項にも少し書きましたが、予測とはこれからの数秒間で相手がどのように歩いていくのかをあらかじめ推測し、 推測した情報を基に最適な歩き方を決定するという一連の流れを表します。 もっと分かりやすい言葉で言えば予測とは次のように言い表されます:
予測とは、相手にも自分にもベストとなる歩行イメージをつくりあげるプロセスのことである
それではまず予測を行うための最初のステップとなる、相手のこれからの歩き方を推測することについて話していきます。 相手のこれからの歩き方を推測するためにはまず現在の周りの状況を認識する必要があります。 これはWPAサイクルのW、つまりWatchの段階で行っておきます。
Watchの段階で得た周囲の情報を基にしながら推測を行っていきます。 ここではいくつかの例を紹介しながら、どのような推測をすればよいのかを見ていくことにしましょう。
1. 相手が真っ直ぐこちらに歩いてきている
相手が真っ直ぐこちらの方向に歩いている場合は、これからも現在と同じようなスピードで真っ直ぐ歩いてくる可能性が高いです。 ただしときには相手のちょっとした目線や体の向きの変更があるかもしれません。 このとき相手は実際は変更した方向に歩いていきたい可能性が高いです。
このように相手が真っ直ぐこちらに歩いてきている場合には、現在の相手の目線や体の向き、スピードで数秒後も歩いてくるだろうと推測することができます。
2. 前方に柱などの障害物がある
障害物が前方にある場合には、障害物の陰から人が急に現れる可能性があります。 Watchの段階で誰かが柱の裏に入っていくのを目撃していれば、 柱の裏に入っていくときにスピードや方向を基にして柱の陰からその人がいつ、どの方向に、どのスピードで出てくるのかをある程度は推測することができます。
しかし場合によっては前方をうまく確認できずに 障害物の陰からいつ、何人が、どの方向に、どれくらいのスピードで出てくるのか正確に推測できないことも多々あります。 このときは、いかなる場合にでも障害物の陰から急に人が出てくる可能性を常に肝に銘じることが大切となります。 不測の事態に備えた心の準備をすることがここでいう推測となるわけです。
3. 何か別のものを見ながら人がこちらに歩いてきている
本やスマホなど、何か別のものを見ながらこちらに歩いているケースを考えます。 このときは1つ目の場合と同様に相手の歩いている方向、スピードから推測を行うことが重要になりますがさらにもう一つ考慮にいれなければならないことがあります。 それは不確実性です。
何か別のものを見ながら歩いている人は、いま現在歩いている方向から向きがいろいろな方向にぶれたり スピードが速くなったり遅くなったりといった、不確実でランダムな行動を行う可能性があります。 ランダムな行動を完璧に推測することは不可能ですから、ここでも2つ目の場合と同じように急に歩行の向きやスピードが変わる可能性を肝に銘じることが大切となります。
よって何かものを見ながら歩いている人に対しての推測には相手の現在の歩行方向、スピード+ランダムな動きに対する心構えの両方が必要となります。