突然ですが「DOE」という言葉をご存知ですか?
この前日経の記事を見ていたらこの略語に出くわしました。
DOEは「Dividend on Equity」の略で、日本語では株主資本配当率と呼ぶそうです。
何でも、日本企業のなかに、配当の最低額を保証したり、減配幅を小さくするために、配当政策を配当性向に基づくものからDOEに基づくものへと変更している企業が出てきているとか。
エーザイは2007年にはDOEを配当基準に採用していたようです。もしかしたら日本株の投資家には馴染みがあるのかもしれません。
私は日本株をやりません。米国株を中心に世界株に投資しており、有料メルマガでも多数の米国株・非米国株を紹介していますが、DOEという言葉を初めて聞きました。
試しにグーグルで「DOE」「dividend on equty」と検索しましたが、ヒットしたのは日本企業の海外投資家向けIRページばかりでした。
「DOE investopedia」と検索したら、「エネルギー省(Department of Energy)」の略語として「DOE」が出てきました。
どうも、DOEという投資概念は海外では使われていないか検索にも出てこないほど超マイナーで、日本のみ広がっているガラパゴスな概念のようです。
海外企業では、配当政策は配当性向の3割とか、5割とか、配当性向に基づくのが一般的です。
これは配当とは利益から出すもの、もっと正確に言えばフリーキャッシュフローから出すものだからです。
海外の優良企業はROEが20%、30%、50%以上ある企業も珍しくなく、こうした企業は概して安定してフリーキャッシュフローを伸ばせる優れたビジネスモデルを持ちます。
そのため配当性向に基づく配当政策を敷いていても、毎年増配を続けることができます。米国株は短期的に収益が落ち込んでも、減配しない企業が多いです。
他方、DOEに基づく配当政策というのは、配当は内部留保から出すものであるという考えがなければ普通出てきません。
日本企業は20年以上にわたり、正社員を切り捨て非正規労働者に置き換え、コストカットに邁進することと並行して、ひたすら内部留保を増やし続け、守銭奴同然でした。
その結果、純資産が膨れ上がり、ROEやROICは低減し、日本企業の収益性は悪化の一途を辿りました。
収益性の低さは利益やフリーキャッシュフローの不安定さに繋がり、赤字になることも珍しくありません。これでは配当性向に基づく配当政策は安定しません。
利益、フリーキャッシュフローはすべて投資家に帰属するものです。
これらは成長投資に充てて将来の株主利益を高めるために使うべきであり、それが期待できないならば、さっさと配当と自社株買いに回して投資家に利益還元するのが筋です。
内部留保から配当支払い、自社株買いをするというのは、「利益・キャッシュフローは企業のもの」であり「その分け前を株主たちにくれてやろう」という上から目線の心理から発出するものです。
DOEに基づく配当政策に移行する日本企業が増えているというのは、こうした心理が日本の経営幹部たちの間にいまだに残っており、収益性の大きいフリーキャッシュフローの安定したビジネスモデルを構築する自信がない心の現れなのかもしれません。
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