売買益目当ての投資は時代遅れだ

米国の長期金利(米国債利回り)が5月以降ほぼ休まずに上昇し続けてきました。

10年物の利回りは2020年のボトムでは0.5%程度でしたが、現在は4.8%近くあります。

30年物の利回りは2020年のボトムでは0.6%程度でしたが、現在は4.9%以上あります。

米国債利回りが0%台からここまで上昇するということは、米国債価格が大暴落しているということです。

10年物米国債価格は2020年3月のピークから46%下落し、30年物は53%も下落しました。

メディアでは大々的に報道されていませんが、米国債市場にはすでに「リーマン危機時の株式市場」と同レベルの恐ろしい状況になっています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-04/S20WCFT0AFB401?srnd=cojp-v2

一般に国債は安全資産と言われています。

国債の安全性は、本来、デフォルトしないできちんと決められた日に利息が支払われ、満期を迎えると元本を償還してくれる点にあります。

でも1980年代以降、2020年まで40年間も金利が下がり続けたなか、投機家たちが群がるようになりました。

国債の安全性は、いつの間にか「低金利が進むことで市場価格が上がり続ける、ボラティリティの低い金融商品」という意味に変質してしまったように思います。

少なくとも投機家・トレーダーたちはこのことを前提として国債を取引してきました。

でもこれは安全神話にすぎません。

同じ国債(財務省短期証券含む)でも、3ヵ月物、6カ月物のように償還年限が短いものは、たしかにボラティリティは小さいです。

すぐに満期を迎えるので、短期的に価格変動が生じても、満期まで保有して元利金をきちんと受け取ることは容易です。

でも10年、30年と満期の長い国債は、金利、経済状況、インフレ期待から大きな影響を受けます。

流動性は大きくなく、投機家・トレーダーは満期を迎える10年、30年まで保有する忍耐を持ちません。

マクロ経済・金融政策の変化により、売りが売りを呼ぶ展開が起こりやすく、状況次第でボラティリティが大きくなる、リスクの大きな金融商品なのです。

特にリーマン危機以降、金融規制により、大手金融機関はディーリングのための米国債在庫を大幅に減らしました。

これにより米国債市場の流動性は構造的に大きく損なわれてしまいました。

いまの米国債市場で起きていることは、満期の長い米国債が忍耐のない人たちにとって安全資産でも何でもないことを如実に示しています。

最近の米国債価格の下落は、市場がFedの金融引き締め長期化を織り込んで起こっています。

その一方で、金融引き締めの長期化でいずれ米国が景気後退入りして、Fedは再び利下げをするだろうと市場はいまだに信じています。

でも今回のFedの金融引き締めは、むしろコモディティの需給逼迫を招き、米国政府の財政悪化ペースを加速させ、インフレを酷くします。

このことを市場が認識すれば、長期金利はもっともっと上昇します。満期の長い米国債市場の崩壊はまだ途上にすぎません。

そもそも、資産価格の上昇を目当てに米国債に投資するのが根本の間違いです。

国債は、本来の安全性に立ち返れば、安定したインカムゲインを得るための金融商品として投資すべきです。

最も安全とされる米国債の運用でも、資産価値の上昇を目当てにした投資は上手くいかなくなっています。

ということは、元本償還のない高リスク資産である株式の運用では、なおさらそうです。

低金利時代が終焉した現在において、売買益目当ての投資は、はっきり言って時代遅れです。インカムゲイン、配当にもっと着目しましょうよ。

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