
悲報...多くの日本株は長期投資に向いてこなかった
今回は日本株に関する残念な話です。
この記事をご覧になっているのはほとんど日本の方だと思いますが、同じ日本人の投資家としてはやっぱり日本企業に活躍して欲しいものですよね。 そして得られたキャッシュをしっかりと投資家に還元して欲しいものです。
しかし悲しいかな、実は多くの日本株は他国の株に比べて長期投資に向かないのです。 日本企業は諸外国と比較して、株主還元そのものを渋る傾向にあったのです。
多くの日本株は長期投資に向いてこなかった
多くの日本株は残念ながら長期投資には向きません。 その一番の理由は、日本企業の出す配当金があまりにも少なすぎるからです。
長期投資をできるだけ早く、そしてリスクを少なく行うためには配当再投資という発想がとても大切になります。 長期的に十分な配当を出してくれる企業に投資し、配当再投資によって資産を殖やすことこそが、長期投資を成功させるための最も重要な行動だといえます。
何故なら長期的に株式のリターンの多くを占めるのは、株価の上昇ではなく十分な配当金の支払いだからです。
下図はアメリカS&P500の長期リターンの割合です。 アメリカは1950年代から成長を目的とした投資を活発化させるという名目で配当金を少しずつ減らしてきました。 それにも関わらず、長期的には株価の上昇よりも配当金の支払いの方がトータルのリターンに占める割合は大きいのです。
よって配当再投資がもたらす複利効果こそが、長期的にトータルのリターンを大きく高めるための肝となるわけです。 そしてこの複利効果を高めるキーとなるのが、配当利回りと配当成長率です。
しかし残念なことに、多くの日本株は配当利回りや配当成長率が他国株と比べて低い傾向にあるのです。
下図は各世界における配当利回りと配当成長率の平均を比較したものです。 黄緑色は配当利回り、紫色は配当成長率、青色は企業の成長による株価上昇率を表しています。 黄緑色、紫色を見ると日本だけが他の国々に比べて配当還元してくれていないことがわかります。
日本は経済成長やバブルの影響からか青色は多いですが、配当利回りや配当成長率の低さが足を引っ張り、結局トータルのリターンは最低レベルとなっています。
では今度は日本の配当支払いの推移をもう少し詳しく見ていくことにしましょう。 下図は日経平均の配当金と配当利回りの推移です。
図を見ればわかるように、少なくともバブル崩壊からしばらくの間は配当金は減るわ配当利回りは1%を切るわでひどい状況でした。 2003年辺りから配当金、配当利回りともに伸びていますが、それでも多くの期間で配当利回りが2%を切っておりまだまだ低いです。
しかし配当を出したいけど出せないのかというと、決してそうではありません。 下は日経平均の過去の配当性向です。
図から明らかなように、配当性向は一部期間を除いて35%を下回っています。 配当性向が30%割れであれば、配当金を2倍に増やすくらいだったら余裕をもって行えたはずです。
別に配当が少なくても余剰資金を企業の投資に充てて成長を拡大することが出来れば、もちろん配当の少なさは正当化されます。 例えばグーグル(アルファベット)、アマゾン、アップルなんかはそうですね。
しかしバブル崩壊後から2015年現在で日本にこうした配当がなくても許されるほど急成長を遂げた有名企業はありますか?
配当が少なくても許されるほど大きく成長できていない、にも関わらず配当金はあまり出そうとしない。 このため多くの日本株は海外と比べると、現時点ではどうしても長期投資不適格といわざるを得ないのです。
ただし上の話はあくまでも過去の話です。 今後、日本の経営者たちの意識が変わってより配当金を出す方針になるかもしれませんし、そうあってほしいものです。 そうなれば長期投資を行いたい(つまり長期で株を保有してくれる)多くの日本人がより多くの日本株を買ってくれて、投資家だけでなく企業側も大きな恩恵にあずかるのではないでしょうか。
何故日本企業は株主還元をあまり積極的にしてこなかったのか
それでは何故日本企業はあまり株主還元を積極的に行って来なかったのでしょうか。 これは日本独特の歴史の中に隠されています。
実は日本は高度経済成長から現在に至るまで、戦時中につくられた統制経済機構が日本経済に根強く浸透してきました(戦後ではなく戦時中です!)。
戦時中は軍国主義のもと、官民が一体となって軍需産業の振興に力を尽くしてきました。 この中でカルテルの形成、利益を度外視した成長主義、そして株主の権限を弱めて配当金の支払いも制限する制度も整われていったのです。
戦後、GHQによる日本の間接統治が始まり、公職追放や財閥解体、内務省の解体、横浜正金銀行の閉鎖といった改革が行われていったのですが、経済に関する法律や省庁、組合、こういったものは名称こそ変われどほとんど無傷で生き残ったのです。
そのため成長主義や配当支払いへの軽視といった考え方も戦時中から引き継がれていき、現代まで受け継がれてきたのです。
統制経済に端を発する経済機構、経済思想が日本を世界第二位の経済大国に導いてきたことは事実です。 自由主義を標榜するアメリカやイギリスといった国々を大きく上回る実質GDPの成長を長年達成し、政府や官僚による介入や規制がある中での自由主義型とは言えないシステムが経済成長にプラスの効果をもたらしうることを証明したのです。
ですので日本株は株主還元が少ない...といっても、そこに潜む戦時中の思想やシステムが過去には日本の大きな発展につながったことは認めなければいけません。
ただ逆に現在ではこの経済機構が日本の経済成長を阻害し、長年日本を苦しめてきたこともまた否定しがたいでしょう。 モノからサービスへのシフトが進んでいることや日本の人口減を考えると、労働者を縛りから解放してクリエイティビティを発揮させ生産性を向上させないといけないですからね。
いずれにせよ日本企業があまり株主還元を積極的に行って来なかったというのも、日本独特の理由があったからなのです。
【参考文献】
日本株にこだわらずに長期投資をしたい方へ
話を投資に戻すと、より効果的に長期投資を行っていち早く資産を殖やすためには、日本よりも魅力的な配当を出してくれる傾向にある世界中の株も見ていく必要があります。 もし日本株にこだわらなくても良ければ、海外にも目を向けることをおすすめします。
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最終更新日:2016年7月21日
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