今月14日の政策決定会合で、日銀は国債買い入れ額を現行の毎月6兆円から減額する方針であることを表明しました。
これに関し大手メディアが一斉に「量的引き締めへ」と報道したことに対し、私は強烈な違和感を持ちました。
[日本経済新聞]日銀、量的引き締めへ転換 国債購入減額「相応の規模」https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGXZQOUB1465X0U4A610C2000000&scode=8301 [毎日新聞]日銀、国債買い入れの減額決定 量的引き締めへ 政策決定会合
https://mainichi.jp/articles/20240613/k00/00m/020/408000c [朝日新聞]日銀、国債買い入れ減額 量的引き締めへ 来月に具体的計画
https://www.asahi.com/articles/DA3S15959144.html [時事通信]日銀「量的引き締め」へ=国債減額、遠い正常化―追加利上げ焦点に
https://sp.m.jiji.com/article/show/3261727
何故なら一般に、国債の買い入れ減額とはテーパリングと呼ばれ、中央銀行のバランスシートはペースを落としながらも拡大していくこと(=量的緩和政策の継続)に変わりないためです。
Zero Hedgeの表題を見ても、日銀は量的緩和のテーパリングを始める予定だと海外投資家たちは認識していることになります。
Japan To Issue Bonds With Shorter Maturities As BOJ Begins Tapering QE
https://www.zerohedge.com/markets/japan-issue-bonds-shorter-maturities-boj-begins-tapering-qe
テーパリングを想起するのが世界の市場参加者、関係者にとって当たり前なのです。量的引き締めと言うのはガラパゴス的な思考であり、世界的な目線では意味不明です。
実際、FedやECBが行ってきた国債買い入れ減額は、テーパリングを意味しました。
例えばFedが2021年12月~22年3月にかけて国債買い入れ額を毎月1200億ドルからゼロに減額したとき、確かに概ねこの買い入れ額の分だけFedの総資産は増えていきました。

ECBも2021年4~9月に国債買い入れ額を月額約800億ユーロに、同年10~翌年3月に月額約600~700億ユーロに、4月からさらに減額しました。
22年3月以降は目標以上に買い入れ減額を進めて5月には事実上の量的引き締めに移行しましたが、それ以前は公表していた買い入れ額と概ね同額だけバランスシートは拡大していきました。

FedやECBが公表する国債買い入れ/縮小額は、ネットの数字です。つまり計算式「国債購入額ー償還額」のことを指すので、買い入れ/縮小額の分だけバランスシートが増減するのです。
ところが日銀ではそうなっていません。実際、現在毎月6兆円ほど国債を購入していますが、日銀の保有国債残高は590~600兆円程度でキープしたまま増えていません。
これは毎月6兆円ほど、日銀保有国債が償還されているためと説明されています。
つまり日銀の国債買い入れ額はグロスの数字であり、他の先進国と異なり償還額を引き算していないのです。
今更ながら私はこの事実にはっきり気が付きました。無意識のうちに欧米の基準を日銀にも当てはめていたのですが、それが間違った認識だったのです。
よって今後日銀が国債買い入れ額を減額しても、テーパリングとも、量的引き締めとも言えません。
日銀のバランスシート規模は、グロスの国債買い入れ額だけでなく、国債償還額によって左右されるためです。
この点で、日銀の金融政策は世界と乖離しており、ガラパゴスさがはっきりと現れています。
では日銀の国債償還額はどれほどあるのでしょうか。
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高から個人的に計算した結果、2023年末を基準年として、2026年までに満期を迎えるのが164兆円、2028年までに満期を迎えるのが296兆円でした。
3~5年間で、毎年平均55~60兆円程度が償還されることになります。
元日銀審議委員の桜井真氏は、日銀は現行の買い入れ額のレンジ「5~7兆円」に対し、「4~6兆円」として月1~2兆円の減額が柔軟にできる仕組みにする可能性があると述べました。
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/IP6JSKDEKJOCJGX3A5RLE27ZJU-2024-06-17/
もしそうだとすると、日銀は毎年48~72兆円程度の国債買い入れをすることになります。
これでは償還分を引き算すると、バランスシートはほとんど変わらずです。
植田日銀の「これから事実上の量的引き締めに移るぞ!覚悟しとけよ!」というのは過度なパフォーマンスに過ぎないかもしれません。
そりゃそうです。バランスシートを本気で縮小すれば、長期金利は急騰し、日本政府の利払い費は上昇の一途を辿り、歯止めが利かなくなり、財政破綻まっしぐらとなりますから。
植田日銀の本音は、7月末の会合で明らかになります。