・メモリ(DDR4)のドル建てスポット価格が1年足らずで20倍に暴騰。AIブームが理由なのは確かだが、より詳細に分析。
・メモリバブルはAIバブルの崩壊と共に終わる。
・メモリ価格暴騰が紹介銘柄に与える影響
**********
今回は歴史的なメモリ価格高騰と紹介銘柄への影響についてです。
未曽有のメモリ価格暴騰
●メモリ価格高騰
25年10月頃からメモリ価格が暴騰しています。
昨年1~3月には汎用DRAMの一種であるDDR4のスポット価格は16ギガビットあたり3.2~3.8ドルでした。その後9月に掛けて上昇しましたがこのときのピークは5.2ドル程度でした。
暴騰し始めたのは10月からです。現在の価格は65ドル程度です。9月から4か月足らずで12倍以上の値上がり、ここ1年間では18~20倍程度に暴騰しました。

メモリ市場は3~4年程度のサイクルを繰り返すのが特徴です。2年程度の好況・メモリ価格高騰が続いた後、2年程度の不況・メモリ価格暴落が起こり、その後2年程度の好況が再び起こる傾向にあります。
前回のサイクルは20年終わり~25年始めにかけてでした。COVID-19パンデミックが世界的に拡がり、リモートワークが盛んになり、パソコン需要が世界的に急激に増したことがメモリ市場の好況を生み、その反動でその後の不況が起こりました。
現在のメモリ価格上昇・高騰は、前回のサイクルが4年余りで終了した後の昨春頃から始まっています。よって価格上昇が始まったタイミングは過去の傾向に沿った自然な時点でした。
いまのサイクルがこれまでと異なるのは値上がりの大きさです。2000年以降のメモリサイクルでは、最高値付近の価格は概ね大底付近の2~4倍程度でした。
今回はDDR4の価格が昨年2月の大底からすでに20倍以上になっており、未曽有の値上がりとなっています。

●AI投資激増でメモリ需要も大きく増えている
メモリ価格が高騰している理由は良く知られている通り、AI向けのメモリ需要が急増し、メモリ需給が非常に逼迫しているためです。
ハイパースケーラー5社(アマゾン、メタ、グーグル、マイクロソフト、オラクル)は24年からデータセンター投資を急激に増やしています。25年までの2年間で設備投資は2.6倍に増えたと見込まれます。
今年以降も成長ペースはやや鈍化するとは言え、ハイパースケーラー5社の設備投資は2年で倍近くに増える見通しです。
ハイパースケーラーはAI競争に敗れて将来の企業としての地位が埋没することや株価暴落への強迫観念、米国をAI覇権国にしたいトランプ政権の圧力のもと、巨額のAI関連投資をせざるを得ない状況に嵌っています。

●メモリ供給不足の理由
こうした中でメモリの供給不足が起こっています。供給不足の理由として一般にあげられてきたのは次の3つです。
第1に、メモリ製造会社がメモリ生産ラインを「汎用DRAM(一般サーバー、パソコン、スマホ向け)」から「広帯域メモリ(HBM。AIサーバー向け)に移行する動きが起こりました。HBMの不足に対応するためです。
第2に、メモリの在庫がほとんど尽きたことです。
第3に、台湾のパッケージング・テスト受託会社がフル稼働となっていることです。
1)HBMへの生産ラインの切り替え
HBMは特に推論においてAIの処理を高速にするために欠かすことが出来ません。エヌビディアだけでなく、グーグルやディープシークなどが開発するAIチップでもHBMは必要不可欠です。
AIが高速に計算するためには、GPUやTPUによる計算速度だけでなく、計算に必要な膨大なモデルデータをメモリから計算ユニットに移動する速度も速めなければなりません。
このデータの送り出しをしているのがHBMです。通常のDRAMはこの送り出し速度がHBMの10分の1以下しかなく(帯域がHBMの10分の1以下のため)、使い物にならず、HBMを使うしかありません。

そのため巨額投資を進めるAI企業のHBM需要が急激に増し、これに応える形で各メモリ会社(SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン)は生産ラインを汎用DRAMからHBMに置き換えてきました。
下図のように、大手メモリ3社は23年にはDRAMの全てがDDR4(汎用DRAM)でしたが、25年までの2年間にHBMの生産をDRAM全体の3割ほどにまで増やしてきたことが分かります。
汎用DRAMについても、新型であるDDR5の生産がスタートしたことから旧型であるDDR4の生産が減りました。これもDDR4の価格が特に暴騰している大きな要因です。

マイクロンのHBM市場でのシェアが24年の10%前後から25年に20%以上へと倍になったことから、特にマイクロンでHBMへの生産ライン切り替えが積極的に行われてきたようです。
この企業は台湾のA3工場などの生産ラインを、汎用DRAMからHBM向けの先端パッケージング・TSV(シリコン貫通電極)ラインへと順次転換してきました。

●HBMは利益率が高い
HBMは汎用DRAMに比べて利益率が大きいです。HBMはDRAMを垂直に8段、12段、あるいは16段と積み上げた積層(3次元)構造をしています。データ転送の高速化と省スペース化のためです。
積層構造にすることで、データの通る道(バス、bus)が1,024本以上と、通常のDRAMの数十~100倍ほど多いです。バスの配線は非常に複雑で1段でも接続に失敗すれば不良品になってしまいますから、とても難易度の高い工程です。
技術的難易度が高く、より多くのリソグラフィ工程やテストが必要で、高性能であることから、HBMはコモディティである汎用DRAMと比べ利益率が大きいのです。
その中でAI需要の急激な増加によりHBMが需給逼迫となり、売り手市場となっていることから、メモリ製造各社は汎用DRAMを犠牲にしてでもHBMの生産ラインを増やしてきました。
ただ極度の汎用DRAM不足でこちらの価格がとりわけ暴騰していることから、今では汎用DRAMの方がHBMよりも利益率が大きくなり始めているようです。

2)在庫切れ
各メモリサイクルにおける価格底這いの期間は1年前後が多いですが、前回のサイクルでは底這いが長期化しました。
リモートワーク需要の反動でメモリ価格が急落したのは22年からでした。その後23年~25年初旬にかけて、およそ2年の間、メモリ価格の低迷が続きました。
メモリ市場の好転が全く見えない中で、メモリ会社が生産を抑制して在庫調整を進めるのは当然です。これが24年~25年中旬にかけて行われました。
下図のように昨年下半期に汎用DRAMの在庫はほとんど底を尽きました。その中で各社は汎用DRAMの生産ラインをHBM向けに置き換えていったのです。
汎用DRAMからHBM向けに生産ラインを置き換えるには一般に1年以上掛かります。そのため汎用DRAMの在庫調整と生産ラインの置き換えは同時並行で進んできました。

3)台湾のパッケージング・テスト受託会社の容量逼迫
台湾のメモリパッケージング・テストを行う企業(力成、華東、南茂など)は深刻なメモリ不足により、大手メモリ会社からの注文が殺到し、フル稼働状態となっています。
各社は最大30%の値上げをしましたが、その後も注文はひっきりなしのようで、今後さらなる値上げに踏み切る可能性があります。これは汎用DRAM価格に転嫁されます。
汎用DRAM価格暴騰の裏の理由
【この記事の続きを読むには】
続きはアボマガ・エッセンシャルにご登録し、Webサービス経由でお読みください(本記事の配信日からおよそ1年以内にアボマガ・エッセンシャルにご登録された場合に限ります)。
下の黒いボタンからこの記事のみを購読することも可能ですが、アボマガ・エッセンシャル会員様のために書いたものですから高額に設定しています。この記事全体のボリュームや雰囲気を知っていただくために有料記事にしているに過ぎません。
アボマガの投資哲学・投資手法に共鳴された方はアボマガ経由でこの記事をご覧ください。なおアボマガにご登録されると、この記事を500円未満で読めます。
【この記事のみ購入する場合】
・デジタルコンテンツのため、購入後の返金はできません。
・決済はcodoc経由で行われます。
・[特定商取引法に基づく表記]→こちらから

