日銀の政策が世界のマネーの潮流を大きく変えるのか?

欧米の中央銀行が金融引き締めを続ける中、日銀の今後の動きが気になる。

4月から日銀の新総裁に植田和男氏が就任する見通しとなっている。

市場では、植田新総裁のもとで緩やかに金融引き締め方向に向かっていくとの見方が多いようだ。

いま日本円の金利は、主要31通貨の中で最も低い水準にあるという。欧米だけでなく新興国の中央銀行も揃って利上げしており、日本だけが取り残された形だ。

もし市場の予想通り、緩やかな金融引き締めとなれば、日本と他国の金利差はそこまで縮まらないとみられている。

そこで円を借りて他国の通貨建て資産で運用する円キャリートレードが今後活発になるとの見方が強まっている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-20/RQ7GCUT0AFB401?srnd=cojp-v2

2004~05年ごろから2007年にかけて円キャリートレードがブームになったが、このときは欧米資産にマネーが向かった。一部はサブプライムローン担保証券に流れ、その後の金融危機の影響を大きく受けた。

ただ現在はかつてと違い、米国株や不動産はバブル状態で、Fedは量的引き締めで不動産担保証券の保有を減らしている。過剰貯蓄が枯渇していけば景気後退も時間の問題だ。

一方で新興国経済は以前より力をつけている。先進国以上の積極的な利上げにより、ハンガリーフォリント、ブラジルレアル、メキシコペソなどといった一部の新興国通貨の金利水準は最大17%近くにも上る。

もし円キャリートレードが起こるとすれば、かつてのように運用先は欧米に偏るのでなく、もっと多様化していきそうだ。そうなれば世界の通貨に対し日本円だけが安くなることになる。

またバークシャーのように、借りた円で割安な日本株に投資する外国人投資家も出てくるかもしれない。

しかしもし日銀が市場の予想に反し、積極的な金融引き締めに動いたらどうなるか。

外国人投資家は一斉に日本国債を売却するだろう。先月の外国人投資家による国債の売り越し額は、4兆1190億円と過去最大になったが、これを上回る売りが殺到しそうだ。

日本国債 外国人投資家の売り越し額 先月4兆円超え過去最大に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230220/k10013986251000.html

当然日本国債利回りは急上昇する。コロナ特例融資が終了したなか、中小企業の倒産が本格化し、住宅ローンの借入も難しくなり、日本は物価上昇が続く中で景気後退を迎えるかもしれない。

影響は海外にも及び得る。日本の投資家は海外の株式や債券に3兆ドル余りを投資している。半分以上は米国だが、オランダ、豪州、フランス、英国などにも投資している。

生保などの日本の機関投資家は、米国債などの投資を続けてきたものの、高い為替ヘッジコストに長年悩まされてきた。

日銀が積極的に利上げすれば、相対的に日本の証券の投資妙味が増し、海外から大量のマネーが日本に還流するかもしれないのだ。

それはすでに脆弱な欧米のマーケットを動揺させ、欧米の景気後退入りを速めるかもしれない。日銀の動き次第で、欧米日が揃って景気後退入りしてもおかしくない。

植田新総裁のもとで日銀がどのような金融政策を実施しても、世界のマネーの動きに大きな変化をもたらすことが考えられるのだ。