ベネズエラの裏で揺れるイラン情勢と両国の関係

[2026/01/06 BBC]イラン、ここ数年で最も弱体化 抗議デモと米国の警告が体制揺るがす

イランの街頭で抗議デモが続いている。イランで街頭デモは珍しくもないが、今回はいくつかの要因から、非常に深刻なものとなっている。

現在のデモは5日で9日目に入った。4、5日目にはすでに、アメリカのドナルド・トランプ大統領がイランの指導者らに対し、デモ参加者らへの対応についてアメリカは「臨戦態勢」にあると、直接的な警告を発していた。その後、アメリカの特殊部隊が、ヴェネズエラでニコラス・マドゥロ大統領を標的にした作戦を実施。4日に2度目の警告が出された。

米国によるベネズエラ空爆、マドゥロ大統領夫妻拘束のニュースで日本の国際報道は持ちきりです。

その裏で、イラン情勢も大きく揺れています。昨年12月28日から現在まで、イランでは連日デモが起こっています。

インフレによる物価高騰と通貨リヤルの暴落による生活苦を理由に、テヘランの商人たちが始めたストライキがきっかけでした。

しかし現在は国民が苦しい中で政府高官やその家族が汚職で不当に利益を得ていることに対する怒り、政府および最高指導者ハメネイ師に反対するデモへと発展しています。

デモは100以上の都市に拡がり、20名以上の死者が出ています。

イランは米国の制裁やイスラエルとの争いのなかでハイパーインフレにより国力は長期衰弱しています。ソーシャルメディアの発達で国民の不満は瞬時にイラン全土に拡散しやすくなっています。

そのため今回のデモはイラン革命の最中にあった1979年以来の大規模なものに発展していくとの見方があります。ハメネイ師が非常事態に備えてロシアへの亡命を計画しているとの報道もあります。

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今回のイランでのデモ勃発と米国のベネズエラへの行動は決して偶然に起こったとは思いません。

米国はイランの敵対国であるイスラエルと仲が良いです。イスラエルがガザやイランに空爆したように、米国も国際法を無視してベネズエラを奇襲で空爆しました。

イランとベネズエラは緊密な関係にあります。2005年に当時のチャベス大統領がイランを訪問し、両国を「兄弟国」と宣言したことをきっかけに、現在まで強い結びつきにあります。

イランはベネズエラに石油精製品や無人機などを供給する一方で、ベネズエラから燃料油や重質原油、ゴールドを受け取ってきました。ゴールドはイランが支援するヒズボラにも流れ、テロ資金源となったと見られています。

またイランは革命防衛隊(IRGC)関連企業の技術者数百名を派遣して、ベネズエラの製油所修理を支援しています。

イランとベネズエラは石油輸出のほとんどすべてを中国に供給する点でも共通しています。

いずれも第一次トランプ政権による経済制裁で欧米への石油輸出を大幅に減らさざるを得なくなった結果、中国に極端に依存するようになりました。

ベネズエラは2000年代から中国の銀行から巨額の融資を受けており、その返済のために市場より大幅に安い価格で原油を輸出しています。

イランは2021年に中国と25年間の戦略的協力協定を結び、これを契機に中国に割引価格で原油を供給するようになりました。

イラン革命防衛隊は影の船団を構築・運用すると同時に、ベネズエラに石油生産のための希釈剤を提供することで、イラン・ベネズエラから中国への原油闇輸送に深く関与しています。

その見返りに巨額のお金やゴールドをイラン革命防衛隊やヒズボラ(いずれも米国から見ればテロ組織)など、イランの現体制下にある組織や政治家・官僚・軍人が受け取ってきたことが濃厚なわけです。

中国が輸入する原油のうち、イランとベネズエラからの割合は合わせて20%前後あります。またロシアからの輸入割合は20%程度です。

よって中国は原油全輸入量の40%前後を割引価格で購入していることになります。

イランやベネズエラ、ロシアからの安価な石油輸入で、中国の輸入額が減っただけでなく、これを用いて安価な工業製品を製造し、世界にダンピング輸出して貿易黒字を拡大してきました。

昨年12月に公表した国家安全保障戦略(NSS)のなかで、米国は中国の巨額の貿易黒字(貿易不均衡)を経済安全保障上の最大の問題に位置付けるとともに、トランプ流モンロー主義(「ドンロー主義」)に基づく西半球戦略を最優先に取り組むとしています。

イランの動揺とベネズエラへの空爆は、いずれも国家安全保障戦略に沿った動きです。それ故これら二つは連動して起こっていると考える方が自然です。

今後、イランやベネズエラ産の原油が市場に近い価格で、中国だけでなく世界中の国々に供給されていく貿易体制に変わっていくことが求められます。

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