国際エネルギー機関(IEA)は12日、世界の石油・ガス需要は2050年まで伸びる可能性があると表明した。よりクリーンな燃料へ迅速に移行するという従来見通しから離れ、世界は気候目標を達成できない可能性が高いとの見解を示した。
あなたはこの報道がどれだけ重大な意味を持つのか理解していますか。
IEAは毎年発表する世界エネルギー見通しの中で、石油、ガス、石炭、電力といったエネルギーの長期的な需給について3つほどのシナリオを用意して予測した結果を公表しています。
2019年まではシナリオの一つに現行政策シナリオ(CPS)というのがありましたが、20~24年にかけてこのシナリオが消えました。
これによりIEAが予測に用いるシナリオはすべて、遅かれ早かれ脱炭素化・気候変動対策が進み、石油の需要が2020年代にピークアウトしていくことは避けられないとの予測結果を出すようになりました。
2020年代に石油需要がピークアウトするのですから、新規の石油プロジェクトへの投資は不要だと提言していました。
ところが先週発表の最新見通しで、現行政策シナリオが5年ぶりに復活し、世界の石油需要が2050年頃まで拡大することもあり得ると、突然言い始めたのです。
CPSを復活させた理由の一つとしてIEAは、2020年のパンデミックと2022年のウクライナ戦争に起因するエネルギー危機を乗り越えたことを挙げていますが、冗談じゃない。
もしそうなら、遅くとも2023年にはCPSを復活させなければ筋が通りません。
IEAはエネルギー分野に関する最高峰の機関であり、IEAの予測は単なる意見に留まらず、世界のエネルギー政策や業界による活動の中長期的な方向性を左右するほどの力を持ちます。
一部の業界関係者や専門家の間からは、IEAが発表する石油需要見通し、特に脱炭素化を強く織り込んだシナリオについて、IEAの願望や政策誘導に偏り過ぎているのではないかとの批判が出ていました。
IEAの態度豹変理由は簡単な話。脱炭素政策を進めてきたバイデン政権が倒れ、第二次トランプ政権が誕生したからです。
トランプが大統領就任後にしてきたことを思い起こしてください。
大統領就任初日に大統領令に次々と署名し、パリ協定離脱宣言、温室効果ガス社会コスト作業部会解散、科学的誠実性メモランダム撤回、EV購入税控除凍結開始をし、バイデン時代の気候関連執行命令全体の無効化を図りましたよね。
その後もEV補助金、再生可能エネルギー支援、排出規制など主要な気候変動・脱炭素政策の撤回・凍結を急速に進めてきました。
これにより、米国で電気自動車が普及し、ガソリン需要が長期的に空っぽになるというIEAのシナリオの前提が覆ったのです。
態度豹変は、脱炭素・気候変動利権に与ってきたIEAが政治的に敗北したことを意味します。
IEAは先週発表のエネルギー見通しでとんでもないことを白状しました。
現行政策シナリオでは、石油需給を均衡させるために2035年までに日量2,500万バレルの増産が必要なのだそうです。
ところがIEAはこれまで新規の石油プロジェクトは不要だと言ってきたものですから、米国も湾岸諸国もロシアも生産能力拡大にあまり積極的ではありませんでした。
石油プロジェクトへの投資額は未だにパンデミック以前の水準に戻っていません。
現行の世界の石油プロジェクトでは日量約300万~700万バレル程度しか生産能力は増えないようです。
残りの日量1,800~2,200万バレル(昨年の世界の石油供給量の20%前後に相当)をあと10年で、どうやって賄えば良いと思いますか?
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昨年10月に配信した[アボマガ No.317]をもう一度ご覧ください。この記事に書いた懸念が現実化する可能性が急速に高まりました。記事の最後に対策の仕方も書いています。
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