生存率と死亡率の違い-医療と正しく付き合うために-

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生存率と死亡率の違い-医療と正しく付き合うために-

   昨今は医療の進歩が目覚ましいですが、一方で医療にはリスクがあることもまた事実。 医療と上手く付き合うためにはそれなりに医療に関する知識を蓄えておく必要があります。


   私たちを医療に関する見えないリスクに晒してしまう一つの要素は医療データです。 医療データはしっかり頭を使って見ないと、間違った解釈をして自らをリスクに晒してしまう要因になります。


   データや数値といったものは私たちにとって難解で頭が疲れるものです(心理学的に言えばSystem2を要するからです)。 さらには権威性という説得力を与えるものでもあります。


   そのため私たちはついついデータを鵜呑みにしてしまいがちです。 しかしこれによって間違った医療を受けることに繋がる可能性があります。


   そこで今回から何回かに分けて、医療データで使われる"生存"という言葉のもつ罠についてご紹介します。 これを通じて、世の中に出回っているデータや数字の"意味"をしっかり考える動機づけとなれば幸いです。


   まず今回は"死亡率"と"生存率"という言葉に関する説明をします。 両者は何となくコインの裏表の関係に見えますが、実際は両者は全く異なります。 この違いを理解することが医療リスクを減らし、医療と正しく付き合っていく上で重要です。

死亡率と生存率の違い

   私たちが医療に関する見えないリスクを減らすために、死亡率生存率の違いを明確にすることが大切です。


   まずは死亡率についてです。 病気Dの死亡率とは、全人口のうち病気Dによって亡くなった人の割合を表します。 式で表すと次のようになります:


   病気Dの死亡率=(病気Dによって亡くなったすべての人)/(全人口)


   例えば2000年の胃がんの死亡率が0.5%といったら、日本の全人口のうち胃がんで亡くなった人の割合が0.5%ということです。 言い換えれば日本の人口10万人ごとに、50人に人が2000年に亡くなったということです。


   一つだけ勘違いしないでほしいのは、この10万人は胃がん患者でないということです。 10万人は胃がん問わず、すべての日本人10万人ごとに、という意味です。 ここは注意してください。 (ただし文脈によっては分母の全人口以外のときもあるので、データごとに注意が必要です。)


   続いて生存率についてです。 病気Dの生存率とは、病気Dの患者のうち亡くなっていない人の割合を表します。 その中でもよく使われるのは5年生存率、10年生存率といった、期間を伴った表現です。


   病気Dの5年生存率とは、病気Dと診断された人が診断から5年後に生存している割合のことを指します。 式では次のように表されます:


   病気Dの5年生存率=(病気Dと診断されてから5年後に生きている患者数)/(病気Dの患者数)


   例えば胃がんの5年生存率が80%というのは、胃がんと診断された人のうち、診断から5年後に生きている確率が80%ということです。


   10年だったら、上の5年をすべて10年と置き換えてください。


   言葉だけ聞くと死亡率は生存率をひっくり返したような、お互い似ているもののように思えます。 しかし死亡率と生存率はまったくもって似て非なる概念です。


   死亡率と生存率をしっかり区別することが大切です。

相対生存率とは何か

   生存率に似た概念に、相対生存率というものがあります。 相対生存率は医療関係の記事によく出てくるので、混乱を防ぐために簡単に理解した方が良いでしょう。


   5年相対生存率とはざっくり言えば、自分と年齢、性別などが同じ人がガンなどの病気だと診断されたときに、5年後に生きている確率のことを指します。 正確に式で表すと逆にわかりずらくなるのでここでは省略します("条件付き確率"という考えを使って定義しています)。


   相対生存率を使う理由は、他の病気によって亡くなる人をできるだけカウントしないようにするためです。 例えば高齢だと、胃がんと診断されてもその後に高齢による他の病気(肺炎など)で亡くなる可能性が高まります。


   普通の生存率を使って計算すると、こうした胃がん診断後に肺炎で亡くなる人もカウントされてその分生存率は下がってしまいます。 こうした年齢や性別などによって起こる「診断後に診断症状以外による死亡する」事例を除去して、出来るだけ診断症状によって死亡した人だけをカウントして計算されるのが相対生存率です。


   相対生存率については次の1点をぜひ押さえておいてください。


   必ず生存率≦相対生存率である!


   これは相対生存率の定義から直ちにわかることです。


   もう一つ、これは特に重要ではありませんが混乱を防ぐために付け足しておくことがあります。 それは相対生存率は100%を超えることがあり得ることです。 (単なる生存率は必ず0~100%の範囲に収まります)


   これは相対生存率の定義によるものです。 気になる人は英語版Wikipediaに書いてあるのでそちらをご覧ください。 →Five-year survival rate(Wikipedia)

医療界は生存という言葉を好む

   詳しくは次回からの記事になりますが、一つここで述べておきたいことがあります。


   それは医療界は"生存"という言葉を好むことです。 生存率、生存期間といった言葉です。


   医療関連の資料を見るとよく生存というワードが現れますが、これには訳があります。 それは生存という言葉を使うことは、医療界にとってプラスの要素満載だからです。


   医療界にとってのメリット、生存という言葉の定義、こうしたことを考えて何故生存という言葉が医療界にとって都合の良い言葉なのか、以降の記事で見ていくことにしましょう。


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