リード・タイム・バイアスとレングス・バイアスとは

スポンサーリンク

海外投資をはじめたいけれど、海外証券口座の利用はちょっと...という人は、SBI証券がコスト安でおすすめです。住信SBIネット銀行との外貨入出金サービスを利用して、住信SBIネット銀行で外貨両替してSBI証券に外貨を入金することで為替手数料を大幅に節約できるところが一番のミソです(出金でも同様)。住信SBIネット銀行の米ドル為替コストが「1米ドルあたり4銭」というのは激安としか言いようがありません(一般の銀行で両替する場合の25分の1で済みます)。
いま日本の証券口座で海外投資(特に米国株・ADR)を始めたいなら、「SBI証券×住信SBIネット銀行」が良さそうですね。(取り扱い銘柄等の確認はこちらから)


お知らせ
【重要】とあるお知らせの中には、既存の記事への反映が追いついていない最新情報をお伝えしている場合があります。必ずご覧ください。

【2017/11/29】【重要】ブリオンボールトの資金引き出し時の送金手数料について
【2017/10/05】【重要】Firstradeが売買手数料が爆安になりました
【2017/09/24】お問い合わせに関するおしらせ
【2017/07/26】世界の大揺れが近づいてきました。

→過去のお知らせはこちらから

リード・タイム・バイアスとレングス・バイアスとは

   以前の記事で生存率と死亡率について説明しました。 そして生存という言葉は医療界にとってメリットがあることを最後に少しだけ話しました。


   何故生存という言葉は医療界にとってメリットがあるのでしょうか。 その一端を示すものとして、"リード・タイム・バイアス"と"レングス・バイアス"について説明します。


   リード・タイム・バイアスやレングス・バイアスによって、見えないところで生存率を現実より高く見せ、私たちに医療の進歩を印象付けることができるのです。

リード・タイム・バイアスとは

   リード・タイム・バイアス(Lead time bias)とは、生存期間が長くなることによって"医療が進歩した"と思わせるトリックを指します。


   ここで生存期間とは医者に病気だと診断されてから亡くなるまでの期間を表します。


   例えば55歳のときに胃がんと診断されて、その後5年後に胃がんで亡くなったら生存期間は5年ということになります。 しかし現代は医療の進歩によって、CTスキャンなどを駆使してがんを早期発見することができます。 その結果50歳の若さで胃がんを見つけられたとしましょう。


   手術とか抗がん剤治療とかを駆使して、なんと最初に胃がんが見つかってから10年も生きられることができた! つまり生存期間が10年となって、昔に比べて2倍も延びています。


   だけどちょっと待ってください。 上の二つ、よくよく見るとどちらも同じ60歳で亡くなっていますよね。 つまりがんの早期発見によって生存期間が長くなっただけで、亡くなる年齢は何一つ変わっていません。


   これがリード・タイム・バイアスです。


リード・タイム・バイアス


   ポイントは「生存期間のスタート=病気だと診断されたとき」だということです。 これによってがんを早期発見するだけで、死亡年齢は変わらない(つまり医療は進歩していない)のに生存期間だけが延びてしまい、医療が進歩しているように見えてしまうのです。

リード・タイム・バイアスを利用した悪質な例

   医療の進歩により、ガン患者の生存期間は年々増加しています。 例えば2009年に国立がんセンター中央病院によるシンポジウムで、大腸がんの生存期間が1980年の6ヶ月から2005年には4倍の24ヶ月にまで延びていることを紹介しています。 そして国立がんセンターはこれを抗がん剤の成果だと述べています。


大腸がんの生存期間の増加


   オレンジ色の「生存期間中央値」というところだけに注目してもらえれば結構です(英語は無視してください)。 生存期間中央値とは、とりあえずここでは大体の生存期間思ってもらえればOKです。 (ただし生存期間中央値が5年だからといって、人によっては1年で亡くなったり10年生存することもあるのでそこは注意してください)


   一見すると抗がん剤によって生存期間が延びた、やったー!ということになります。 しかしここにも実はリード・タイム・バイアスのマジックが関わっているのです。


   「がんもどき理論」で有名な放射線治療医の近藤誠氏は、著書「余命3ヶ月のウソ」の中で以下のように述べています。


   1980年代あたりまでは大腸がんと判断するための肝転移は、がんの直径が8cm以上にならないと中々区別できなかったとのことです。 そして肝転移が発見されてからの生存期間中央値は大体6ヶ月程度でした。


   しかしがん早期発見技術の進歩によって、2005年には直径1cmの転移したがんを発見できるようになりました。 直径1cm→8cmになるためには大体18ヶ月かかるので、医療技術の進歩によって従来より肝転移を18ヶ月早く見つけられるようになったのです。


   上の表にあるように、2005年の大腸がん生存期間中央値は大体24ヶ月。 よって肝転移したがんが直径8cmになってからの生存期間は、24-18=6ヶ月。


   つまり1990年も2005年も、肝転移した直径8cmのがんが見つかってから亡くなるまでの期間は一緒なのです。 これは大腸がんの薬が死亡率の低下にほとんど役に立っていないことを意味します。


   生存期間が延びただけで、亡くなる年齢、死亡率はほとんど改善されていないのです。 つまり抗がん剤の効果は全くと言っていいほどないのです。


   リード・タイム・バイアスを利用して抗がん剤の効果を不当に吊り上げた、悪質な例です。

レングス・バイアスとは

   レングス・バイアス(Length bias)またはレングス・タイム・バイアス(Length time bias)とは、生存率が"真実"よりも高い数値で計算されやすいことを示すトリックのことを言います。


   生存率は最初に述べたように、がんと診断された人のうちで生存する人を指します。 しかし現実には、がんと診断される前にがんで亡くなる人ももちろんいます。 特に進行の早いがんに掛かっている人は診断前にがんで亡くなりやすくなります。 このような人は生存率の計算から省かれてしまいます。


   これにより生存率が不当に吊り上げられてしまいやすくなるのです。


   より具体的に理解してもらうために、下図をご覧下さい。


レングス・バイアス


   青線はがんと診断された人を指します(点線のScreening timeを通過していることが診断されたことを表します)。 一方で黒線はがんに掛かっているのだけれども、まだがんと診断されていない人、もしくは診断前に亡くなった人を指します。 また矢印の先に×が付いている人は、そこでがんによって亡くなったことを意味します。


   生存率の定義を思い出して下さい。 病気だと"診断された"人のうち、5年後に生きている人の割合でした。


   そうすると、生存率は青線の人の中で生きている人(矢印の先が×でない人)によって計算されます。 黒線はがんを患っていようがなかろうが、診断されていないので生存率の計算からは省かれます。 よって生存率は4/5=80%となります。


   一方で診断されなかった"真の"がん患者も含めると、がんに掛かっている人のうち生存している人("真の"生存率)は青線+黒線のうち生きている人になります。 つまり5/12=41.7%となります。


   医学界で使われている、私たちが目にする生存率と"真の"生存率との乖離がすごいですよね。 進行の早いがんが診察を受けずに亡くなることで、こうした可能性が出てきて生存率が高く計算されがちになるのです。 これがレングス・バイアスです。


   * * * * * * 


   しかし生存という言葉による医療界のメリットは、上のようなバイアスによる医療界のイメージアップだけに留まりません。 もっと本質的に重要なメリットがあるのです。(→次の記事)


スポンサーリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加   

 

資産を守るための最初の一歩を踏み出したい方向けコンテンツ

 

投資の始め方

 

資本主義社会で生き残るためのブログ最新記事

 


 

ツイッターはじめました!

 


 

関連ページ

Antifragileとは何か?
何故Antifragileが重要か-ランダムと非線形-
不確実を味方につけて大きな利益を得るための3要素
非線形とは何か-Fragile、Robust、Antifragileを理解するために-
Fragile、Robust、Antifragileとは(理解を深めたい人向け)
職業によってリターンの度合いが異なる-Antifragileをブレンドする-
失敗とテクノロジー-テクノロジーはTrial and errorから生まれる-
ベーコンの線形モデルとは-何故理論あってのテクノロジーなのか-
偶然とテクノロジー-理論とテクノロジーの非対称性-
ランダムだから人生が楽しくなる
「努力は報われる」を考える-漠然を愛する考えの提案-
企業の目標はオプションが多い-企業と個人の目標の置き方の差異-
土壌を広げて成功を待つ-Antifragile的成功への考え-
犠牲と利益-大きな利益を得るためには必ず犠牲が伴う-
犠牲と利益-列車の安全性の裏に乗客の犠牲あり-
失敗は大きな利益を得るための情報
平均は求める場所ではない-尖ったものが合わさってバランスをとっている-
Ludic fallacyとは-現実世界をゲーム的に捉える考えの過ち-
Ludic fallacyと教育-学校で学ぶ確率はすべてゲームの世界-
経済学教-Economics rationalizes us-
Known unknownsとUnknown unknownsとは
1920年代のアメリカバブルから見るバブルの正当化
専門家とFragile-1920年代のアメリカバブルから見える教訓-
つながりの力-独立性の有無が大人数の選択の意味を変える-
自分で自分の文脈をつくる-成功本には必ず文脈がある-
帰納の問題と食品の安全性-被害が出るまで安全かどうかはわからない-
レーシック手術と帰納の問題
Iatrogenesis(医原病)とは何か-医者は別の病気を生む-
血液を医師に抜き取られて死んだ男、ジョージ・ワシントン
女性特有の病気とIatrogenesis-ヒステリー&マンモグラフィー-
スウェーデンの結核死亡率の歴史-寿命を延ばす要因は医療だけではない-
生存率と死亡率の違い-医療と正しく付き合うために-
リード・タイム・バイアスとレングス・バイアスとは
生存率は医療界の生存にプラスに働く
健康基準に根拠があるとは限らない、科学的に決められたとしても
医師の診断を確率的に考えてみる-Base rate neglect-
正しさを追い求めることの罠-正しさとFragile-
正しさを追い求めることの罠-正しさと心理との関係-
一次効果と二次効果とは-何故計画は現実を過小評価するのか-
不安定が安定をもたらす-人工呼吸器とJensenの不等式-
投資の教え、安全域の原則とAntifragile
リスクとボラティリティとの違い-ボラティリティはリスクにも利益にも変化する-

▲記事本文の終わりへ戻る▲


▲このページの先頭へ戻る▲