当たり前を疑え-心理が生むリスクを理解し不確実を楽しむ-

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自分で自分の文脈をつくる-成功本には必ず文脈がある-

   世の中には成功本や成功方法を教えるサイトが溢れかえっています。 お金持ちになるための10ステップとか、3ヶ月ネットビジネスを行うだけで月収100万稼ぐ方法といったものです。 皆さんもこうした本やサイトを目にした経験があることでしょう。


   しかしこういった成功のノウハウが世の中に溢れかえっているにも関わらず、ノウハウを真似して成功したという話はほとんど聞きません。 何故でしょうか。


   一つにはその人の努力が足りないことが挙げられますが、それ以前に一つ考えなければならない重要なことがあります。


   それは文脈です。


   成功に潜んでいる、著者が表向きには述べていないが成功を収めるために必要な文脈、絶対条件というものが必ずあります。 そこを押さえないといくら努力しても成功を収めることはできないでしょう。

3ヶ月で月収40万達成

   最近ふとアフィリエイト成功者のサイトを見ていたら、「3ヶ月で月収40万円達成」とうたったサイトを見つけました。 すげぇなー、でも絶対何か裏があるに違いないと思って、ちょっとそのサイトをいろいろ見てみました。


   すると次のような事実が発覚しました。

  • その人は高校の頃にすでにアフィリエイトをかじっている
  • 社会人になってからもアフィリエイトの失敗経験がある
  • 別のビジネスで多少なりとも成功していた
  • その成功したビジネスに関するアフィリエイトサイトを作成したところ、3ヶ月で月収40万円を達成できた

   つまり3ヶ月で月収40万円を達成できたことの裏には、今までのアフィリエイト経験や別のビジネスでの成功経験という文脈があることがわかります。

7年で億万長者になる方法

   行動経済学者のロバート・シラーの著書「Irrational Exuberance」の中で、成功本がいかに文脈依存かを示すおもしろい例が載ってあったので紹介します。


   1999年に「The Road to Financial Freedom: A Millionaire in Seven Years」という本が海外で発売されて、ベストセラーになりました。 日本語訳が出ているのかはわかりませんが、もし出るとしたら「経済的自由への道:7年で億万長者になる方法」のようなタイトルになっていたことでしょう。


   この本、2003年に改訂版が出たのですが、改訂版のタイトルが次のように変わっていたのです。


   「The Road to Financial Freedom」


   つまりサブタイトルである「A Millionaire in Seven Years(7年で億万長者になる方法)」という部分がごっそり削られていたのです。


   実は1990年代後半は市場がITバブルで盛り上がっていた時期であり、「根拠なき熱狂(Irrational exuberance)」と呼ばれていました。 「The Road to Financial Freedom」の初版が発売されたころは、まさに市場が根拠なき熱狂の渦に巻き込まれていた最中だったのです。


   しかし21世紀に入って早くもITバブルが崩壊して根拠なき熱狂は終焉を迎え、市場価格が暴落してしまいました。 その後2003年には市場は大分回復してきていたものの、1999年に比べればまだまだ物足りないレベルだったのです。


   こうした事実を踏まえると、「The Road to Financial Freedom」が改訂版でサブタイトルを外した理由が想像できますよね。 この本を読んで実際に7年間で億万長者になるためには、「根拠なき熱狂」がその後もずっと続く必要があったのです。

成功本の文脈を未来には当てはめられない

   最初のアフィリエイトの例はまだ救いようがあります。 何故なら3ヶ月では無理かもしれないですが、努力しまくればアフィリエイトで月収40万円が達成できるかもしれない、そんな風な期待感があるからです。


   しかし7年で億万長者になる方法、これは救いようがありません。 何故なら本が書かれたときの市場の状況が今後も続くという、こちらの努力ではどうしようもならない仮定が暗に置かれていたからです。


   成功本に載っている10のステップで成功するためには、成功するための隠れた文脈が未来にも当てはまらなければなりません。


   だけどそんなことは本当にあり得るのでしょうか? 世の中が日々変化していることを考えれば、成功本の成功するための文脈を未来にそのまま当てはめることは賢明な考えだとは思えません。

現在の文脈から未来の文脈を築く方が簡単

   ファンドマネージャーのハワード・マークスは、ウォーレン・バフェットも絶賛した著書「投資で一番大切な20の教え」の序文で、何故マークスがこれまで数十年に渡って投資で成功してきたかについて次のようなことを書いています。


   40年以上かけて築きあげ、磨きをかけてきた、そして同じ文化と価値観を共有するきわめて有能な人材によって誠実に実践されてきた、実効性のある投資哲学である。


   どうでしょうか。 「3ヶ月で月収50万」「7年で億万長者」などと言っている人とはまるで違う、説得力がありまた非常に重みのある言葉ではないでしょうか。


   彼は時間をかけて、様々な成功や失敗を経験する中で自分の文脈にあった投資方法を築き上げていったのです。


   結局成功するためには自分独自の文脈を築き上げる必要があるのです。


   そう考えると、自分とはまったく違う文脈をもつ他人の行動を真似ることがいかに本質から逸れた行動であるかがわかると思います。


   成功本を真似て成功するためには、言葉には表現されていない様々な文脈を自分に取り入れる必要があります。 著者の思考、経験、成功本が暗に仮定している現代の環境、それに運。


   でもそんなものを完璧に真似ることって、めちゃくちゃ難しくないですか。 そんなことをするくらいなら、自分自身で努力して自分独自の思考法、経験といった文脈を一から作るほうが圧倒的に簡単な気がします。


   自分独自の文脈を築くためには、自分の好きなこと、得意なことといった、既に自分の中にある文脈を活かすのが一番簡単でしょう。


   私が投資をしている理由は人と違う行動をすることに喜びを感じるタイプなので、そういう性格が投資に適していると思ったから行っているのです。 私がこうしてサイトを作成している理由は、私が本や論文を読んだり文章を書いたり、また自分であれこれ考えるのが好きだからです。


   自分自身の性格、趣味、能力を考えた上で、自分自身の文脈に合った行動だと思ったから、投資やサイト作成を行っているわけです。


   他人の文脈を自分に当てはめるのではありません。 現在の自分の文脈から未来の文脈をつくるのです。


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