職業によってリターンの度合いが異なる-Antifragileをブレンドする-

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職業によってリターンの度合いが異なる-Antifragileをブレンドする-

   世の中にはいろいろな職業がありますが、職業によってリターンの度合いが異なることを知っておくことは重要です。 ちょっとの変化で大きな利益を生むか否か、こういう視点で職業を見つめられるかで、将来のリターンは大きく変わる可能性があります。


   ナシーム・タレブは職業に対して、Fragileな職業、Robustな職業、そしてAntifragileな職業があると主張しています。 これらがどういった類の職業であるのかを説明します。


   まずタレブが言うところのFragileな職業、Robustな職業、Antifragileな職業の例をあげます。

  • Fragileな職業:多くのサラリーマン
  • Robustな職業:医者、ニッチワーカー
  • Antifragileな職業:タクシードライバー、職人

Fragileな職業

   残念ながら多くのサラリーマンがFragileとなります。 これを見てドキッとされる方もいるかもしれませんが、何故サラリーマンはFragileな職業なのでしょうか。 その理由は以下のようになります:

  • いざ景気が悪化したときに、会社の倒産やリストラなどで強制的に会社を辞めざるを得ない
  • 一度の仕事での大きな失敗によって、その後の昇進など人生に大きな影響を与える
  • 長時間労働によって体調を崩すリスク

   この理由、考えてみれば明らかですね。 これら理由に共通するのが、いざというときに収入が途絶えるリスクです。


   確かにサラリーマンは普通に働いていれば毎月決まった給料が得られるので、そういう意味では安定しています。 しかしいざというときに収入が途絶えるリスクがあります。


   これを考えると、サラリーマンとは安定した収入を得られるが、いざと言うときに収入が途絶えるというとても大きなリスクをもつ職業となります。 つまりFragileなわけです。


   現代は普通のサラリーマンの職がどんどんFragile化しています。 一番は実質賃金が減って、各種保険料が増えることでしょう。 つまり収入が減って支出が増えることです。


   少子高齢化などによって企業の生産力が弱くなり、賃金の低下やインフレによる実質賃金の低下が起こる可能性があります。 実際、1997年(消費税を5%に増税した年)から本記事執筆の2014年まで、実質賃金はずっと低下していますから。


   さらに少子高齢化は労働者の年金や社会保険料の増加を引き起こします。


   こうして毎月給料は支払われるが、貯蓄もままならない不自由な生活になっていきます。 そして突然首を切られる、会社を辞めざるを得ないリスクもあるわけですから、とてもFragile化しているというわけです。


   それに2025年にはロボットが現在の仕事の半分近くを奪う可能性があるとの予測もあります。


   こうしたさらなるサラリーマンのFragile化を考えれば、サラリーマンだけで飯を食っていくのは長期的にみれば非常にリスクの高い選択になると私は考えています。

Robustな職業

   Robustな職業とは常に安定した収入を得られて、かついざというときにも収入が途絶えるリスクが少ない職業となります。 タレブはRobustな職業の例として医者やニッチワーカーを挙げています。


   つまり安定的に稼げ、かつ常に需要が多い職業のことを指します。


   医者はどんな社会情勢でもなくてはならない存在ですからね。 特に高齢者の割合が増えている昨今では、ますますRobustな職業になっています。 (実際、薬の専門誌の広告を見ると開業医募集のような求人広告が多数掲載されていて、医師の需要の高さが伺えます)

Antifragileな職業

   最後にAntifragileな職業です。 これは不安定だが思わぬ大きな利益を得られる可能性のある職業となります。


   例えばタクシードライバーはどれだけお客さんを確保できるかで給料が変動します。 そのためもらえる給料は不安定です。


   しかしお客さんがどういった時間帯、場所に多いのかといったリサーチをすることで、結果に反映されます。 しかもタクシードライバーは自由時間が多いので、その時間にお客さんをどう獲得するか研究したり、副業に時間を割いたりと自分の収入を得るオプションが多いです。


   自分の努力した結果が収入に反映されやすく、また自由時間に好きなことができるオプションが、タクシードライバーをAntifragileにしています。


   他にも職人は失敗を重ねることで思いもよらない製品が出来上がったりする、そういった部分がAntifragileな部分です。


   現代だったら、ネットビジネスのような初期投資がほとんど掛からない副業は何でもAntifragileになり得ます。 大きな金額を必要としないので、失敗したときのリスクがとても小さいです。 それに自分の実力次第で収入をどんどん増やせる可能性があるため、まさにAntifragileな職業と言えるでしょう。

Antifragileをブレンドすることが大切

   職業に関してFragile、Antifragileを考えるときには上手くブレンドすることが大切なように思えます。


   将来を考えるとサラリーマン一本でいくのはFragileと言わざるを得ません。


   しかしだからといってサラリーマンを辞めてAntifragileな職業に進まないといけないわけではありません。 Antifragileな職業は、もしかしたら大きな利益を生むかもしれませんがいつ利益を生むかどうかはわかりませんから。 利益を生んでくれるまで、もしかしたら年単位の時間が必要になるかもしれません。


   そう考えると、職業についてはFragileなものとAntifragileなものを上手くブレンドすることが大事に思えてきます。 具体的には、普通に働きながら副業を行うといったことです。


   サラリーマンとして働いて短・中期的な安定を確保しつつ、副業を行うことで長期的な収入を確保できるように年単位の努力を行うことでどの期間も収入が途絶えることがないようにする。 こういったことが最も理想的でしょう。


   さらに副業である程度の収入が得られるようになれば、そのままサラリーマン+副業の形態もとれますし、副業を本業をすることも可能です。 つまり人生のオプションが増えるわけです。


   私も副業ではありませんが現在投資を行っており、将来に安定した配当収入を得られるように少しずつ種を撒いているところです。 投資は危険だと思われる人がいるかもしれませんが、変に高い値段で株を買わずにいわゆる「安全域」の原則を守れば、十分投資はAntifragileな行動になり得ると思っています。


   どういった行動が正解かは人それぞれですが、間違いなく言える事は今後来るであろう日本の厳しい現実に対処できる収入源を早くから築き上げることが大切だということです。 いざというときに大きな苦境に陥らないように、今のうちから行動することが何よりも重要だと思います。 早くから行動して試行回数を稼いでいけばいつかは良いことが起こる、そう信じて行動することが大切です。

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