配当再投資とコスト(税金・取引手数料)について
今回は配当再投資を行う場合のコストについてです。
少しのコストが配当再投資に影響を与える
配当再投資を行うとき、私たちは次のような手数料や金銭的負担を負うことを考慮する必要があります:
- 税金
- 再投資時の取引手数料
税金、再投資時の取引手数料はついつい見逃してしまいがちですが、実はこれらのコストは配当再投資を行う投資家には地味に大きな影響を与えてしまいます。
理由は税金、再投資時の取引手数料が複利効果による資産のスピードに影響を与え、こうしたコストがないときと比較して皆さんの投資目標達成までに数年程度、またはそれ以上が必要になる可能性があるからです。
配当再投資では配当利回りが株数を複利的に増やすエンジンとなり、配当利回りが長期継続で高いほど大きなリターンを生み出します。配当利回りはネットなどで各企業の現在の配当利回りや予想配当利回りといった数字が簡単に見られますが、公表されている配当利回りが4%でも、配当再投資によって株数がそのまま4%分殖えるわけではないのです。
受取配当金は配当税を源泉徴収された後に残る金額ですから、配当税の分だけ株数は購入できなくなります。さらに普通皆さんは再投資時の取引手数料を含めて受け取った配当金を再投資に充てるでしょうから、株数購入に充てる配当金からは取引手数料も除かなくてはなりません。
公表されている配当利回りが4%でも、実際に再投資に充てられるのは3%分の利回りに減ることが十分考えられるわけです。すると配当再投資によって株数は3%分の上昇にとどまります。
実際には配当利回りが4%でも、株数成長率は3%といった数値に減ってしまうのです。4%と3%、たった1%しか違いませんが、長期ではそれなりに影響を与えてしまうのです。これは複利効果の顕著な性質です。
幸い配当再投資ではいくつかのパラメータが協調することで結果的にはかなり大きなリターンが得られることもあり、配当税が今後極端に引きあげられるといったことがない限りはそこまで長期投資に致命的な影響を与えるわけではありません。
とはいえ現状の配当税率で考えても、配当税や取引コストがないときと比較すると皆さんの目標達成には1年~数年程度は余分に要することはご記憶ください。
トータルリターンとコスト
本やネット上などで「株式の100年間の配当再投資込みのトータルリターン」「割安株の50年間の配当再投資込みのトータルリターン」といった長期リターンのグラフを目にされた方も多いとは思いますが、こうしたリターンは特に断りがない限りは税金、再投資時の取引手数料は含まれていません。
税金、再投資時の手数料を考慮すると、実際にはこうしたリターンは数%分割り引いて考える必要があるのです。
もう少し具体的に言うと、2001年1月~2010年12月までの10年間のトータルリターンとは次の3つのリターンの合計を表すわけですね。
- 2001年1月時の配当利回り
- 10年間の1株あたり利益(EPS)の年間平均成長率
- 10年間のPERの年間平均成長率
配当再投資を行う長期投資家は基本的に銘柄を売却することはないので、10年間のPERの年間平均成長率に対しては税金(キャピタルゲイン税)や取引コストは考慮せず、データの数値をそのまま使えば良いでしょう。
しかし「2001年1月時の配当利回り」には購入時の取引手数料を、「10年間の1株あたり利益(EPS)の年間平均成長率」については配当税・再投資時の取引手数料を考慮してデータの数値を少し低めに設定する必要がある、ということです。
配当再投資と税金
配当再投資に掛かるコストとして絶対に避けることが出来ないのが税金(配当税)です。残念ながら配当税によって、配当再投資によって殖える株数の割合は公表されている配当利回りよりも確実に小さくなります。
例えば公表されている配当利回りが4%でも、配当税が20%であれば再投資によって殖える株数は3.2%分にとどまってしまいます。
税金の問題は基本的に回避不能の問題ですので、その分投資を行う際には長期的に配当利回りが高くなりそうな銘柄を最初からピックアップする意識が大切になります。出来るだけ株価が割安で配当利回りの高い良質な銘柄に投資をしていきたいものです。
アメリカの証券口座で投資を行う際には、私の経験上はアメリカで源泉徴収される配当税は10%です。日本の配当税は現在20.395%のためその差額である10.395%分は後で日本の確定申告時に払う必要はありますが、再投資に使える金額は日本で投資する場合より多いです。
よって配当税の観点で言うと、日本よりもアメリカで投資するほうが配当再投資には有利になっています。
注意点はリミテッド・パートナーシップ(LP)と呼ばれる形態の企業に対して投資を行う時です。企業には法律上いくつかの形態があります。私たちが投資する企業の大部分はコーポレーション(企業名にCo.、Ltd.、Inc.とついているもの)という企業形態をとっており、この場合はアメリカで源泉徴収される配当税は上に書いたように私の経験上10%です。
コーポレーションではなくLPという形態を取っているときには、配当税(正式には分配税。LPから受け取るインカムゲインは分配金という名称のため)は私の経験上、受取配当金の40%前後になると思います。LPは税引前利益を私たち投資家にほぼすべて分配した後、私たち投資家が企業が払うはずだった法人税を払うという形式をとっているからです。
LPは税引前利益を投資家にほぼすべて分配する都合上、配当利回り(正式には分配金利回り)が高い傾向にありますが、税金が多くかかるので投資される際は気を付けてください。
配当税は基本的には回避不能ですが、実は配当税を繰り延べて名目の配当利回りのまま再投資出来る場合があります。その典型例は確定拠出年金です。
確定拠出年金の口座で投資をする際には、配当税やキャピタルゲインを年金を受け取れる年齢になるまで繰り延べられる取り決めがあります。よって確定拠出年金の積み立ては最高の環境で行えるのです。
日本ではまだ確定拠出年金を自由に利用できない人が多く、また投資商品も少ないのが悲しいところです。しかしちょっとずつ門戸が広がっていますし、知っておいて損はないでしょう。もし確定拠出年金を利用できるのであれば、配当再投資による長期投資がしやすい環境であることはぜひとも覚えておかれるとよいでしょう。
配当再投資と取引手数料
再投資時の取引手数料も配当再投資を行う場合に考えなければならないコストです。
例えば得られた税引き後配当金が100ドル、税引き後配当利回りは3%。もし売買手数料が20ドルであれば、実際に再投資に利用できるのは80ドルとなってしまいます。そして配当利回りは2.4%にまで減ってしまいます。
取引手数料の問題は税金の問題と違って「逆進性」です。つまり投資資金が少なく、少額の配当金しか受け取れない人ほどマイナスの影響が大きくなってしまうのです。
よって配当再投資をより効率よく行うためにも、あまり投資資金のない人は特に取引手数料の安い証券口座を利用することが重要となります。
幸いなことに、これはアメリカの証券口座を利用すれば解決できます。というのはアメリカではDRIPと呼ばれる配当を自動的に再投資してくれる制度があるからです。DRIPを利用すると得られた配当金を自動的に再投資してくれるだけではなく、取引手数料無料で行ってくれるからです!
私が本サイトで紹介して実際に私も利用しているFirstradeとSogoTradeではDRIP出来るのでご安心ください。というよりもDRIPが出来るからこそ本サイトでご紹介させていただいています。
上の配当税と合わせて、配当再投資によって資産を少しでも早く殖やしたい場合にはアメリカの証券口座を利用するのが良いでしょう。
最終更新日:2016年7月20日
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