石油代替調達の限界:中東パイプラインのボトルネックと日本の命運

[2026/04/07 時事通信]石油確保、年明けまでめど 高市首相「代替調達を拡大」

高市早苗首相は7日、中東情勢の悪化で供給不安が高まる石油について、年明け以降までの分については調達めどが立ったと明らかにした。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を踏まえ、米国産や同海峡を通らない中東諸国からの代替調達を拡大したと説明した。首相官邸で記者団に語った。

事実に基づいて、日本の石油調達の今後について考えていきましょう。

高市首相の話によると、ホルムズ封鎖で失った輸入量のうち20%(4月)、50%(5月)を代替ルートで調達するとのことです。

日本はホルムズ海峡から原油の70%程度を輸入してきました。もし代替ルートから半分を調達出来ても、35%分の原油輸入が不足することになります。

しかも代替調達分には契約手続きが完了していない分も含んでおり、本当に高市総理が発言した通りの量の石油を代替ルートから調達できるのかどうか定かではありません。

次に、代替ルートがどのようなものかです。

一つは米国からの輸入拡大です。米国産原油の輸入量は5月に前年比約4倍まで拡大する見込みとのことです。ただ日本は2025年に米国から3.8%の原油を輸入してきたに過ぎず、これだけでは圧倒的に足りません。

日本が原油の94%を中東から輸入してきた事実から、米国産以外のほとんどはホルムズ海峡を経由しないルートでの中東産原油の調達となりそうです。

湾岸主要国から紅海沿岸の港につながるパイプラインの最大輸送能力は日量900万バレルほどです。これはホルムズ海峡の以前の輸送量であった日量2,000万バレルの約45%です。

この45%の数字と日本がほぼ100%の原油を中東から輸入してきたことから、代替ルートでの石油調達は引き続き中東産メインであるとして辻褄が合います。

バブエルマンデブ海峡はフーシ派による商船攻撃や封鎖リスクがあるので、代替ルートからの石油調達の大半はスエズ運河~地中海~喜望峰廻りの航路となるかもしれません。

日本への輸送日数はホルムズ海峡経由の2.5~3倍に伸び、運賃・保険料・燃料代・スエズ運河通航料が上乗せされて輸入コストはべらぼうに増えます。

中東のパイプラインの輸送制約から、6月以降に日本が代替ルートからの石油輸入をさらに大きく増やすことは厳しいでしょう(ロシアから輸入をすれば別ですが)。

さらに言えば、日本の製油施設は中東産原油の処理に最適化してあります。性質の異なる原油の精製に使うには製油所の設備改修や運用変更が必要で、年単位の時間がかかります。

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もう一つ、石油備蓄について知っておくべきことがあります。

結論から言えば、日本の石油備蓄は政府がこれまで言ってきた254日分より遥かに少ないです。

そもそもこれは昨年末時点の数字です。イラン戦争の開始で備蓄の取り崩しはすでに始まっています。資源エネルギー庁の速報によると4月3日時点で232日です。

石油備蓄に含まれる産油国共同備蓄(6日分)は、パートナーであるサウジアラビアとUAEが保管しているものでホルムズ海峡の内側にあります。ホルムズ海峡が元に戻らない限り、この備蓄が日本に届くことはありません。

最も重要なのは石油備蓄の計算に使われる石油消費量の数字です。非常事態を想定しているため、石油消費量は日量180万バレル程度として石油備蓄日数を計算しています。

しかし実際には日本の石油消費量は日量で300万バレル以上あります。高市総理は経済活動を停滞させてはならないと、石油を今まで通り使うよう奨励しています。

これらを勘案すると、日本の本当の石油備蓄日数は以下のようになります。

(232日 – 6日)×180÷300≒136日

日本の石油備蓄はあと4か月余りしかありません。

代替ルートからの調達が上手くいけば石油備蓄の減る速さを緩めることが出来ますが、それでも現在の量の消費を続けていれば、遅くともあと1年程度で石油は枯渇します。

「遅くとも」である点にご注意ください。代替ルートからの調達が高市首相の発言通りに進まなければ石油枯渇は何か月も早く訪れます。

あなたの生活に石油不足の深刻な影響が出てくるのも時間の問題です。

★今週のアボマガ・エッセンシャル

[アボマガ No.380]ホルムズ海峡封鎖とベースメタル

イラン戦争が始まりホルムズ海峡が封鎖し、原油、ガソリン、ナフサ、尿素などの価格が50%以上急騰しました。

こうしたエネルギー系に比べるとベースメタル(アルミニウム、銅、鉄鉱石)の値動きは現在のところあまり大きくありません。

ホルムズ海峡が元に戻らなかった場合にこれら需給や価格は今後どうなるのか調査・分析しました。

将来の悲惨なインフレの可能性に備えるために、ベースメタル関連銘柄に投資できる最後のチャンスなのかどうかを知るためです。紹介しているベースメタル関連銘柄のフォローアップも行いました。

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