先週、不動産苦境が長引く中国で政府と中銀が立て続けに景気刺激策を発表しました。
中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げると発表し、1兆元の流動性が市場経済に新たに流れることになります。
年内に預金準備率をさらに0.25~0.5%引き下げて追加の流動性供給を計画しています。
また自社株買い向けに3000億元の資金枠を、株式など担保に5000億元の資金枠を設定し中国株の買い支えに充てさせます。
住宅ローン金利を引き下げるとともに、セカンドハウスの頭金比率を25%から15%に引き下げて人々が購入しやすくします。
中国政府は最大手の国有銀行に最大1兆元の資本注入を行うことを検討しています。消費刺激と地方債務対策に2兆元の特別国債の発行を計画しています。
これら発表を受けて中国株は株価が上昇し、資源関連銘柄を中心に中国以外の株式の値上がりも目立ちました。
3週間前にアボマガ・エッセンシャルで配信した「インフレ対策銘柄がバーゲン価格で売り出し中」にて、積極的な買い推奨した資源銘柄の株価は先週金曜日までに16%値上がりしました。
発表された政策は明らかに金利より量に重点を置いています。金融市場に直接影響を与えるのは量であって金利でないことがここでも示されています。
●中身は中途半端
これら政策を見ると、株式市場と不動産市場を支えることを重視している一方、実体経済に十分なお金が流れるのかどうか正直疑問です。
すでに先進国の量的緩和政策で、供給された流動性の大半は金融市場に流れ、実体経済を刺激する効果が小さいのは証明済みです。
世界第2位の経済大国で、不動産市場でこれまで18兆元が吹き飛んだ中国において、流動性供給規模も決して十分とは思いません。
2008年のリーマン危機で中国政府は4兆元の財政出動を発表し、中国経済の浮揚につながったのはもちろん、このおかげで世界は金融危機から脱しました。
昨年の中国GDPは人民元建てで当時の4倍でした。中国経済の状況は当時より悪いですし、本当に求められているのは4×4=16兆元規模の「バズーカ砲」です。最低でも10兆元は必要でしょう。
近年、中国政府は景気支援策を散発的に逐次投入しては全く効果をあげられませんでした。
今回はこれまでより規模の大きい政策を立て続けに発表した点で前進していますが、金融政策が中心ですし、政策が多岐にわたり個々の政策のインパクトは決して大きくなく「バズーカ砲」とまでは言えません。
●習近平の権力低下を物語る
3週間前の配信で中国は習近平側と軍部の政治的対立が熾烈になっているのではないかと書きました。
今回の経済支援パッケージの発表において、中国政府は「不動産価格のさらなる下落を阻止する」と具体的に言及しました。
これは習近平が2021年に発表したスローガン「共同富裕」に明らかに矛盾します。彼は「家は住むためのものであり、投機のためのものではない」と言っていました。
頭金比率の下がったセカンドハウスを購入できるのはお金に余裕のある人たちだけです。
今回の政策の中身は株式市場と不動産市場の下支えを主眼においたものとしか思えません。富裕層が直接恩恵を受け、低所得層との経済格差はますます広がりそうです。
習近平の思想と正反対の結果につながる政策が実行されるのですから、習近平でない誰か別の人物、集団がすでにかなりの実権を握っているのかもしれません。