絶望のインテルから見えてきた明るい兆し

今回は半導体メーカーのインテルについてです。

インテルは昨年から業績が大きく悪化してきましたが、10~12月期の業績の酷さは凄まじいものがあり、投資家たちを驚かせました。

売上は140.42億ドルと、一年前から31.6%も低下しました。ここまでの減収率は、2010年以来最悪です。

前年比の売上成長率をグラフで見ると、崖から転げ落ちるかのようであり、その酷さが鮮明に伝わってきます。

インテルの大黒柱であるパソコン向けとデータセンター向けの双方で、売上が30%以上減少してしまいました。

それぞれの部門の主な減収要因は異なります。パソコン向けチップの売上急落は、市場の悪化によるものです。

昨年の世界のパソコン出荷台数は一年前から16%減少しました。出荷台数の減少は日を追うごとに大きくなり、10~12月期には一年前から28%も減少しました。底打ちしたかどうかわかりません。

昨年にリモートワーク特需が終了し、前倒しの需要拡大の反動が生じたことに加え、世界的な景気後退懸念の高まりと物価高により買い控えが起きたためです。

インテル製CPUを搭載するウィンドウズOSのパソコン出荷量が軒並み大きく低下しました。

ちなみにアップルのパソコンだけは出荷台数の減少率が年間で3%で済み、市場シェアを拡大できました。しかし10~12月期にMacの売上が28%減っており、ここにきてアップルにも悪影響が波及しています。

私は昨年終わりごろにパソコン出荷台数は底打ちするだろうと考えていましたが、想像以上にパソコン市場は悪いものでした。

個人、企業向けともに、買い替え需要は今年も少ないと見込まれています。企業の購買担当者は景気後退への懸念とインフレによる収益性の悪化から、パソコンのライフサイクルを延長し、購入を遅らせています。

パソコンの在庫調整は今年上半期にかけて続き、CPUは酷い供給過剰が続くとみられています。下半期に入ると状況は改善するとみられているものの、供給過剰状態は続くとみられています。

この予測には世界の景気悪化リスクが十分織り込まれているとは言えませんから、パソコン向けCPUは2024年に入っても供給過剰が続く恐れがあります。

データセンター向けもパソコン向けほどではないものの、今年3月いっぱいまで供給過剰状態が続くとみられています。

データセンター向けチップの売上急減は、以前の記事でも話した通り、市場ではなくインテル自身の問題です。

最新型のサファイア・ラピッズの販売開始が遅れていたなか、旧型のチップの競争力低下と在庫調整のため、出荷数量、販売単価ともに大きく低下したものと考えています。

AMDやエヌビディアは昨年にデータセンター向けチップの売上が伸び続けてきました。インテルの一人負け状態でした。

AMDのQ122の数値はデータがないため「0」となっている

そんな状況で、インテルは66%の減配を発表しました。

インテルは昨年秋に費用削減計画を発表していました。今年30億ドル削減し、2025年までに計80億~100億ドルのコストダウンを図るという内容です。

人件費の削減が中心になるとみられ、販売・マーケティングなどの一部の部門で数千人規模の人員を削減することが決まりました。ゲルシンガーCEOをはじめ、経営幹部、シニアマネジャー、中間管理職の給与を5~25%削減する計画も明らかにしています。

またモービルアイのIPOによって8.61億ドルの現金を確保できることになりました。

しかしインテルは設備投資が遅れています。ファンドリー向けのファブ建設本格化で総額1000億ドル程度を投資し、ピーク年に売上の35%程度を投資する計画でしたが、今年は売上の大幅減少で設備投資を40億ドル減らしました。今年も売上の3割程度に設備投資を抑制します。

インテルは微細化でTSMCやサムスン電子に大きく出遅れましたし、2020年以降に設備投資により多くの差を付けられ始めています。

設備投資の一部を将来に先送りしており、ライバルに負けている状況ですから、2025年以降も巨額の投資が続きそうです。

インテル経営陣は費用削減を進めることで減配阻止に動いていたと思いますが、あまりにも直近の業績が悪化しすぎてしまい、巨額の設備投資が何年も必要になるため、減配に踏み切らざるを得なくなりました。

サムスン電子はファンドリーだけでなくメモリ工場への投資も含むため、設備投資が特に大きい

ここまで見てインテルの現状に絶望された方もいらっしゃるかもしれません。

しかしインテルの事業について、かなり前向きな兆候が出始めました。

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