金価格の伸び悩みはレパトリ減税の影響?


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金価格の伸び悩みはレパトリ減税の影響?

2018/06/06

 

 ここ最近、金価格が軟調気味だ。背景には、米国のレパトリ減税により海外資金が米国に還流し、海外の米ドル不足→米金利増→リスク資産の価格下落を嫌った投資家による、世界からの資金退避があるのかもしれない。

 

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レパトリ減税の影響が金融市場に浸透している?

 ゴールド市場の動向についてです。

 

 金価格は昨年12月初めから今年1月の中旬ごろまで8%程度上昇しましたが、その後は伸び悩んでいます。4月の後半頃から現在までは下落トレンドが続いており、年初からのリターンはマイナスとなっています。

 

金価格推移

画像ソース: ブリオンボールト

 

 金価格は米ドル指数と逆方向に動く傾向があり、その動きが今年も続いています。今年に入りドル指数が上昇傾向にあり、その鏡像のように金価格が下落しています。

 

金価格とドル指数の推移

画像ソース:macrotrends

 

 

 今年に入りドル指数が回復している大きな理由の一つは、トルコを初めとした新興国から資金流出が起こり、米国に資金が還流する流れが出ていることです。

 

 またここ1年近く増えていた投機筋による米ドル売りポジションの解消が急速に進んだことも、最近のドル高トレンドを後押ししています。

 

投機筋による米ドル売りポジションの推移

画像ソース:Zero Hedge

 

 新興国からの資金流出や投機筋のドル売りポジション解消をもたらし米ドル指数高に寄与した最大のの要因の一つとして考えられるのが、今年施行となった米国税制改革法案に含まれる、レパトリ減税(みなしレパトリ税、deemed repatriation tax)です。

 

 2017年終わりまでに米国に本社を置く企業は租税回避のために3.5兆ドルの海外留保利益を蓄えていましたが、レパトリ減税を使うことで、海外留保利益に掛かる税率が法人税よりも低税率となり企業にとってお得になります。

 

 レパトリ減税は海外留保利益を米国に呼び戻す際に一度限り行使可能で、税率は海外留保利益に現在の資産の形(姿)によって変わります。現金及び現金同等物の形にとどまっていれば15.5%ですが、その他資産に形を変えていれば税率はたったの8%で済みます。

 

レパトリ減税の税率

画像ソース:SQUIRE PATTON BOGGS ※PDFファイル

 

 アップルは今年、海外に留保する約2500億ドルの資金の一部を米国に還流させ、それに伴う納税額が380億ドルにのぼることを発表しました。レパトリ減税の税率15.5%で割ると、単純計算で2450億ドル程度を米国に還流させることになります。つまりアップルが海外に留保する資金のほぼすべてを米国に還流させることを決定したのです。
【2018/01/18 BBC】米アップル、海外利益の本国還流で約4兆円納税へ

 

 ※2500億ドルの多くは社債のはずなので、アップルによる資金還流はアップルによる社債売却を意味します。社債市場を揺らす可能性があることに注意。
[2018/05/03]アップルが手持ちの債券を減らし始めた

 

 アップル以外のレパトリ実施状況についてはまだ詳しいことはわかりませんが、以下の情報からどうもレパトリはすでに結構な規模で進展中だと考えられます。

 

  • 今年2月時点で米企業によってアナウンスされた今年の自社株買い予定額が、過去最高である(→レパトリ減税で潤った手元資金を株主還元に使う企業の意向を示唆)
  • リーマンショック以降、社債発行額を増やし続けてきた大手企業が、今年まだ社債発行に関するアナウンスをしていない(→レパトリ減税で手元資金が増えるので、社債を発行する必要がない?)

 

米国企業の自社株買い

画像ソース:Zero Hedge

 

米国大企業の社債発行額推移

画像ソース:Zero Hedge

 

 今年第1四半期の投資適格格付け米企業(エネルギー、素材、公共セクターは除く)の自社株買い総額は1230億ドルで、前年同期比36%増加しました。レパトリによるものだそうです。レパトリはどうも進んでいそうですね。
→自社株買い総額の推移

 

 レパトリが進むと、ただでさえ流通量が不足気味だった海外の米ドル流通量がますます減少するので、米ドル調達金利が上昇します。これは米ドル建て債務に依存してきた財務基盤の弱い政府や企業の資金繰りをますます苦しくします。

 

 すでにFedの量的引き締め(QT)政策により、世界中の米ドル流通量が減少する基盤が出来上がっています。レパトリ減税は量的引き締め政策という「米ドル回収掃除機」の吸引力を強めるのです。

 

 その結果、対外債務の大きな新興国等からの資金流出を促し、米ドル高につながりやすくなると考えられます。

 

 レパトリが進むことで生じると考えられるこれら弊害が、現に米ドルLIBORの急増、対外債務への依存度が大きいトルコ、アルゼンチンといった新興国の金融市場の暴落という形で顕在化しています。

 

 「米国債の供給増」+「Fedの金融引き締め」(→「金利上昇」)が今後の金融市況の基盤をなすでしょうが、レパトリ減税はこれら基盤の上でまず先陣を切って、世界金融市場をかき回しているのかもしれません。

 

 よってドル高傾向はもう少し続くかもしれません。それに伴い金価格ももう少し上げにくい状況が続くかもしれません。

 

 しかしレパトリ減税は一回限りなので、レパトリ減税による米ドル高・金価格安が続いたとしても、その状況は短期的にしか続かないことは忘れないでください。

 

最近のゴールドは、寒さに強く暑さに弱い

 もう一つ、最近の金価格については、金価格の季節性も関わっています。金価格は8-1月までは上がりやすく、3-6月頃は下がりやすい季節性を持っています。

 

 年末には米国の感謝祭やクリスマス、年始には中国の旧正月といったイベントがあり、宝飾品需要が高まりやすい季節です。

 

 こうした需要高を先に見越す形で、金価格の季節性が生まれているものと考えられます。

 

金価格の各月ごとのリターン

画像ソース:GOLD-EAGLE

 

 2013年7月-2018年5月までの約5年における、金価格の毎月ごとの平均伸び率を個人的に計算したのが下図です(使用できたデータの都合上、そこまで精密な数字ではないので注意)。

 

 ここ5年は年末年始~5月頃までが金価格が伸びやすい時期で、6-10月までは伸びにくいことがわかります。最近の(北半球の)ゴールドは寒さに強く、暑さに弱いようです。従来の金価格の毎月ごとの伸び率とは少しずれるところもありますが、大まかには現在もこれまでのような金価格の季節性が顕れていると言えそうです。

 

金価格の季節性 2013年7月-2018年5月

 

 2018年の金価格の推移だけみると一見残念に見えますが、中期で分析してみると金価格は従来の季節性をある程度内包しながら、着実に増加しているようです。

 

 金価格の下値は2016年以降、確実に上昇してきています。米ドルではなく世界のすべての通貨を基準にみれば、金価格は2014年以降増加トレンドを続けています。現在の金価格の丁重な動きはあまり気にする必要はなさそうです。

 

米ドル建て、世界の通貨建ての金価格推移

画像ソース:incrementum

 

 金価格の推移を心配するくらいなら、米国財政の深刻さを心配しなければなりません。(→次回へ続く)

 

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