フラッシュクラッシュ時代、逆指値売り注文は自殺行為

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フラッシュクラッシュ時代、逆指値売り注文は自殺行為

2018/05/23

 

 

 

 アルゴリズム取引(高頻度取引、HFT、とも呼ばれる)の実態について備忘録を残しておきます。

 

 現在、世界の金融市場ではアルゴリズム取引(高頻度取引)と呼ばれる、コンピュータを利用したミリ秒単位で頻繁に売買を繰り返して利ざやを稼ぐ取引が主流になっています。

 

 取引所のマッチング・システムが高速化したことで、2004-5年ごろから株式市場、米国市場を中心に高頻度取引が主流となってきました。

 

 株式市場、米国市場では取引の2/3が高頻度取引です。他の市場でもリーマン危機前後から高頻度取引のシェアが増えており、どの市場でも高頻度取引の影響を少なからず受けるようになっています。

 

世界金融市場のアルゴリズム取引シェアの推移

画像ソース:Zero Hedge

 

 アルゴリズム取引と聞くとなんとなく「スマートさ」のようなイメージを抱くかもしれませんが、実態は真逆のようです。

 

 現在の主流アルゴリズム取引はファンダメンタル情報を十分考慮することができません。アルゴリズム取引は価格ばかりを見て売買判断しています。

 

 何か大きく複雑なニュースが飛び込んできても、多くのアルゴリズム取引はそのニュースが今後市場価格にどのような影響を及ぼすのか、ファンダメンタルズをもとに冷静に分析することができません。

 

 分析ができないどころか、市場に影響を与える複雑なニュースが飛び込んでくると、機械は一瞬「フリーズ」してしまいます。

 

 下図のように、何か大きなニュースが飛び込む数分前後で、アルゴリズム取引の市場の深さも、取引参加率も、それまでが嘘のように急減するのです。

 

 ※市場の深さとは、ある銘柄に比較的大規模な注文が出ても、その注文自体が価格に大きな影響を与えることなく注文を裁ける市場の能力のこと

 

アルゴリズム取引は大きなニュースで取引を減らしてしまう

 

 もしアルゴリズム取引が瞬時にファンダメンタルズ分析できるのであれば、大きなニュース報道で一瞬急落した複数の銘柄を瞬時に分析し、ファンダメンタルズの良い銘柄を押し目買いする取引が活発となっても良いものです。

 

 しかし実際には、現在の機械は「ピンチをチャンスに活かす」冷静な頭脳を持たず、ちょっとした価格急落にもビビッて取引から一瞬手を引いてしまう「盲目で臆病」な存在にすぎないのです。

 

 何か大きなニュースが飛び込み市場価格が急落すれば、機械は単に市場価格が急落した事実のみに反応して、機械は市場が下げトレンドであると認識し、手持ちポートフォリオを売却する可能性があります。

 

 機械による追加売却がロスカットや市場流動性の低下を招くことでさらに市場価格が下がれば、それに機械が反応して機械が許容できる価格を下方修正し、さらにポートフォリオを売却する可能性があります。

 

 アルゴリズム取引が市場を席巻している以上、この繰り返しで瞬時に価格が急落し、一日でダウ平均が22%下がった1987年10月19日のブラックマンデーのような出来事が起こるリスクが「現在も将来も」常時付きまとうことになります。

 

 今年2月5日に起こった、ダウ平均が一時過去最高の1597ドル下がり、VIXショートETNの価格が9割下落、3年分のリターンを吹き飛ばし早期償還という名の死に追いやった「ヴォロコースト(VIX+ホロコーストの造語)」もそうです。

 

 ヴォロコーストの発生原因はアルゴリズム取引を通じた売りであると考えられています。一方でその日ファンダメンタルズに問題があるとの事実はないようです。

 

 いまも近い未来も「盲目で臆病でヒステリックな機械の主観」によって短期市場動向が決まるのです。短期価格変動の理由の大半は「機械がそう考えて行動したから」。それ以上もそれ以下もありません。「何故」 と聞いても無駄です。

 

 今後は、米国による世界各国への金融制裁や「BEAT課税」が国際的米ドル取引を縮小させていきます。世界全体で見たときに中央銀行の債券ポートフォリオが縮小に転じます。政策金利引き上げと併せて、市場流動性はじわりと着実に失われ続けていきます。

 

 さらに政治リスクや地政学リスクが高まり、アルゴリズム取引を「フリーズ」させる大きなニュースがますます世間を賑わせていくかもしれません。

 

 突然機械がヒステリーを起こすことで生じる、誰も発生時期や規模を予測できない瞬間的な市場の急落(フラッシュクラッシュ)にはご注意下さい。

 

 アルゴリズム取引のヒステリーが今後、どの程度市場に影響を与えるかどうかは不明です。何故ならアルゴリズム取引の本格的隆盛はリーマン危機後であり、その後現在まで本格的な世界金融危機が生じてこなかったからです。

 

 世界金融危機時に機械がどのように反応、認識、行動するのか、全くの不明なわけです。

 

 しかし機械のヒステリーが、リーマン危機直前よりも何倍も酷い状況下で生じることは、確定した未来です。
[2018/03/24]リーマン・ショックから始まった金融市場の「真の終わり」の規模

 

 損失を最小限に抑えながら利益確定売りできると言われる「逆指値売り注文」は、フラッシュクラッシュという名の機械のヒステリーの前には、損失回避どころか「大損失を招くリスクの塊」でしかありません。参照価格を大幅に突き破る瞬時の大暴落がいつ起こっても不思議ではないのですから。

 

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