脱炭素・AI発、石油危機へ

[序文]
改めて言わせてください。私共はあなたを脅したいのではありません。事実に基づき、事実を直視し、今後起こり得る現実的な未来を淡々と記しているだけです。

[概要]

・脱酸素化への傾倒が産油国の投資・開発意欲を削いできた

・米国でのAI普及に伴い、IEAのCPS(現行シナリオ)の実現可能性が高まり、石油危機へ

・石油危機への対処法

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今回は石油市場についてです。石油市場に関しては9月22日に配信したばかりですが、IEAが11月に公表した最新の世界エネルギー見通しに凄まじいことが書かれていたのでこれをお伝えしなければなりません。

まず11月18日にお試し版とブログに配信した記事を、少し長いですがほぼ全文引用します。

脱炭素化・気候変動対策が十分に進まないと、世界の石油供給量を2035年までにあと日量2,500万バレルも増やさないといけないIEAが述べたことについて触れました。

IEAが態度豹変、「石油危機」が現実味を帯び始めてきた!?(2025年11月18日配信)より(太字は付け足したもの)

IEAは毎年発表する世界エネルギー見通しの中で、石油、ガス、石炭、電力といったエネルギーの長期的な需給について3つほどのシナリオを用意して予測した結果を公表しています。

2019年まではシナリオの一つに現行政策シナリオ(CPS)というのがありましたが、20~24年にかけてこのシナリオが消えました。

これによりIEAが予測に用いるシナリオはすべて、遅かれ早かれ脱炭素化・気候変動対策が進み、石油の需要が2020年代にピークアウトしていくことは避けられないとの予測結果を出すようになりました。

2020年代に石油需要がピークアウトするのですから、新規の石油プロジェクトへの投資は不要だと提言していました。

ところが先週発表の最新見通しで、現行政策シナリオが5年ぶりに復活し、世界の石油需要が2050年頃まで拡大することもあり得ると、突然言い始めたのです。

CPSを復活させた理由の一つとしてIEAは、2020年のパンデミックと2022年のウクライナ戦争に起因するエネルギー危機を乗り越えたことを挙げていますが、冗談じゃない。

もしそうなら、遅くとも2023年にはCPSを復活させなければ筋が通りません。

IEAはエネルギー分野に関する最高峰の機関であり、IEAの予測は単なる意見に留まらず、世界のエネルギー政策や業界による活動の中長期的な方向性を左右するほどの力を持ちます。

一部の業界関係者や専門家の間からは、IEAが発表する石油需要見通し、特に脱炭素化を強く織り込んだシナリオについて、IEAの願望や政策誘導に偏り過ぎているのではないかとの批判が出ていました。

IEAの態度豹変理由は簡単な話。脱炭素政策を進めてきたバイデン政権が倒れ、第二次トランプ政権が誕生したからです。

トランプが大統領就任後にしてきたことを思い起こしてください。

大統領就任初日に大統領令に次々と署名し、パリ協定離脱宣言、温室効果ガス社会コスト作業部会解散、科学的誠実性メモランダム撤回、EV購入税控除凍結開始をし、バイデン時代の気候関連執行命令全体の無効化を図りましたよね。

その後もEV補助金、再生可能エネルギー支援、排出規制など主要な気候変動・脱炭素政策の撤回・凍結を急速に進めてきました。

これにより、米国で電気自動車が普及し、ガソリン需要が長期的に空っぽになるというIEAのシナリオの前提が覆ったのです。

態度豹変は、脱炭素・気候変動利権に与ってきたIEAが政治的に敗北したことを意味します。

IEAは先週発表のエネルギー見通しでとんでもないことを白状しました。

現行政策シナリオでは、石油需給を均衡させるために2035年までに日量2,500万バレルの増産が必要なのだそうです。

ところがIEAはこれまで新規の石油プロジェクトは不要だと言ってきたものですから、米国も湾岸諸国もロシアも生産能力拡大にあまり積極的ではありませんでした。

石油プロジェクトへの投資額は未だにパンデミック以前の水準に戻っていません。

現行の世界の石油プロジェクトでは日量約300万~700万バレル程度しか生産能力は増えないようです。

残りの日量1,800~2,200万バレル(昨年の世界の石油供給量の20%前後に相当)をあと10年で、どうやって賄えば良いと思いますか?

●現行シナリオ(CPS)を唐突に復活させたIEA
IEAは上の引用に書いた通り、毎年3つほどのシナリオに基づいて石油をはじめとした各種エネルギー(ガス、石炭、電力)の需給予測を行います。

シナリオは各国のエネルギー政策や脱炭素・気候変動対策がどの程度進むのかに基づいて分かれています。24年と25年に使用されたシナリオは次の4種類です。

数字が進むに連れ気候変動対策が進み、石油等の化石燃料の需要が減っていくとの前提が強まります。

1)CPS(現行シナリオ)
現在すでに施行・実施されている政策・法規制のみを反映(発表された目標や計画は含めない)。

2)STEPS(宣言政策シナリオ)
現行政策に加え、政府が公式に発表・計画している政策や目標を反映(ただし、達成を保証せず、現実的な実施度を考慮)。

3)APS(公約達成シナリオ)
各国政府・企業が発表した気候公約(NDC、ネットゼロ目標など)をすべて期限内に完全に達成すると仮定。

4)NZE(2050年ネットゼロ排出シナリオ)
2050年までにエネルギー関連CO2排出をネットゼロにし、パリ協定の1.5℃目標に整合させるための理想的な道筋(政策・技術・行動の大幅強化を必要とする)。

24年の報告書では2)、3)、4)が使われました。いずれのシナリオでも20年代が石油需要のピークで、それ以降衰退していくとIEAが予測していたことが下図(赤色)から分かります。

25年の報告書では1)、2)、4)が使われました。下図には1)と2)のシナリオでどれだけ石油需要が増えるとIEAが予測しているのかについて示されています。

1)のCPSでは2050年にかけて石油需要は現在から日量1,000万バレル程度増えると予測していることが目算で分かります。2)のSTEPSと比べて日量1,500万バレルほど上方修正しています。

この1)に基づいた予測を、IEAは20~24年の5年間に亘り公表しなかったのです。隠蔽と言われても仕方ありません。

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