米ドルは裏技によって信用が維持されてきた。米ドルの減価は金価格上昇につながる

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米ドルは裏技によって信用が維持されてきた。米ドルの減価は金価格上昇につながる

初回公開日:2017/02/09
最終更新日:2017/02/09

 

 実はここ最近、世界の情勢が目に見える形で変化しています。端的言えば、戦後から現在まで続いた米国単独の覇権が終焉を迎えようとしているのです。

 

 世界的に米国の影響力が弱体化しているだけではなく、米国内でも今まで隠されてきた政治的な不正行為や、権力闘争や内部分裂が明るみに出ており、もはやいままでのような米国単独の覇権を維持し続けることは不可能な情勢となっています。

 

 米国単独覇権が終焉を迎えるというのは、過去のローマ帝国の崩壊、イタリアの都市国家の崩壊、スペインの無敵艦隊の崩壊、フランス絶対王政の崩壊、大英帝国の崩壊のような、歴史的な大転換を意味します。

 

 現在は米ドルという不換紙幣(ゴールドなどに裏付けられていない紙幣)が信用と言う形も含めて世界中にばら撒かれている関係上、もし米国単独覇権が終焉した場合の世界に与える影響は計り知れないものになることが予想されます。

 

 今回はそんな米ドルがここ40年前後でどのように信用が維持されてきたのかについて、私目線で簡単に振り返って思います。

 

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米ドルは金融・原油・戦争によって維持されてきた。もうこんな裏技は通用しない

 アメリカは1982年以降、1991年の例外を除いて2016年まで一貫して経常赤字を垂れ流し続けてきました。この間、かつてアメリカ経済を支えてきたアメリカ製造業はジワジワと弱体化していき、財政の不足分は巨額の国債を発行して賄ってきました。

 

 米国の直近の債務残高は19.5兆ドル、対GDP比で約105%もあります。対GDP比で見るとこのままでは第二次世界大戦中の最高の120%も超えてしまいます。

 

 下図は1980年から現在までの、四半期ごとの公的債務およびGDPの前年同期比成長率を表しています。青線が債務成長率、赤線がGDP成長率です。

 

 ブッシュ政権以降はほとんどすべての期間において、公的債務がGDPを上回って増えています。この傾向がこれ以上続くと、指数関数的に債務が膨れ上がってしまい、デフォルトによって一瞬のうちに米国家が木っ端微塵に吹き飛ぶ道しかありません。

 

アメリカの公的債務・GDP成長率

画像ソース:Fred

 

 一方下図は1999年以降のアメリカの経常収支の推移です。見事に経常収支(青線)がマイナス、つまり海外にドルを"輸出"しているわけです。その主要因は橙棒で示されている巨額の貿易赤字です。2015年の対GDPでみると-4.2%に達しています。

 

アメリカの経常収支

ソース:BEA

 

 それでもアメリカの信用を維持できた理由は、一つにはグローバリゼーションによって米ドルがあらゆる取引で用いられる国際通貨となり、米ドルなしではグローバル経済も金融も成り立たないような環境が作り出されてしまったからです。

 

 グローバリゼーションにより製造コストの安い中国等の新興国がモノを製造し、それを米国に輸出して米国民が消費をする。その過程で新興国に支払われた米ドルは、米国債の購入に利用され米ドルが新たに生まれる。このサイクルによっていくら米国が借金を増やしても米ドルの信用が問われることはなかったのです。

 

 さらに米ドル信用の余剰分は株式、債券、不動産といった金融市場へ流れさせることができたので、いくら米ドルの信用を生み出してもお構いなしに信用を簡単に維持し続けることができたのです。

 

 しかしリーマン・ショックにより世界金融は大きな打撃を受け、現在になっても世界の金融システムは脆弱性を克服出来ないでいます。さらに世界各国の経済成長率も鈍化し始め、グローバル経済で消費役を担ってきた米国人も貧乏化し始め、いままでの仕組みを利用した、グローバル経済・金融による米ドルの信用維持が難しくなってきたのです。

 

 さらに米ドルの信用維持に極めて大きな力を持ってきたとされる、いわゆるペトロダラーシステムが成り立たなくなってきています。ペトロダラーとはOPEC産の国際石油取引に使用可能な通貨を米ドルが独占するシステムのことです。原油製品は世界中の人々の生活から戦争までありとあらゆる需要があるので、石油取引の米ドルによる独占は米ドルの信用維持の源泉の一つとなったわけです。

 

 21世紀に入ってから米国はアフガニスタン、イラク等中東で戦争を行ってきましたが、その背景には原油決済のシェアを当時の新興通貨であるユーロに奪われないようにするという側面もあると言われています。米ドル、原油、戦争は密接につながっているのです(→参考書籍)。

 

 しかし近年はOPECの力も弱まり、特にペトロダラーシステムの鍵を握るサウジアラビアの財政が悪化し、保有米国債を売り始めています

 

 中東や中国ではすでに米ドルの原油取引が拒否されているという話があり、イランは米ドル決済を2017年3月21日からやめると言い出していますよね。

 

 イランの話は米国がイランの弾道ミサイル発射実験を非難するところから話が始まって、トランプ政権は安全保障上の脅威として北朝鮮と並べてイランを名指しで批判していますから、これ、本当に海外での原油等の米ドル決済縮小の動きに本格的につながる可能性があるんです。

 

 こういった現状から、ペトロダラーシステムをこれ以上続けていくのは困難な様相を呈しています。

 

 つまり1980年代以降、自国経済や財政を弱体化させてきた米国が、従来のように金融・原油・戦争を利用して米ドルの信用を維持することがもはや不可能になってきたのです。

 

 米ドルは貿易から投資、中央銀行による為替調整に至るまで世界中のあらゆる取引に使われてきており、世界の金融システムの根幹をなしてきました。世界の金融システムのコアである米ドルがもし信用をなくしてしまえば、世界の経済・金融は停滞し、世界大デフレ、大金融恐慌が起こってしまいます。各国の債務不履行、通貨大暴落、高インフレ等々も可能性として考えなければならないでしょう。

 

 倫理などお構いなしの裏技を使って米ドルの信用は保たれてきましたが、もうこんな裏技は通用しなくなります。するとどうなるか?米ドルの信用毀損にまでつながる話になってきます。デフォルトするかどうかは別として、モノに対する減価は避けられないでしょう。

 

 通貨の価値が損なわれた国は一からやり直さなければなりません。仮に日本円が紙くずになったら皆さんはどう思われますか?日本の終わり、この世の終わりだと思ってしまいませんか?一生掛けて蓄えてきた財産がすべて消えてなくなるのですから。紙くずにならなくとも、日本円の価値が短期間のうちに半分になるだけでも放心してしまいませんか?

 

 米ドルが大幅減価されてしまうと、世界中の人々がこの世の終わりだと感じてしまうのです。米ドルは世界中で利用されてきたのですから。

 

 米ドルの信用がなくなるとはつまりそういうことなのです。カネがなくなり世界中が放心状態に陥ることを意味するのです。いままでの世界は終わりとなり、また新たな世界を創り出さなければならないということなのです。

 

 そして現在の米国の体力を踏まえると、この未来は現実的だと考えざるを得ないでしょう。

 

米ドルの減価は金価格上昇につながる

 しかし心配する必要はありません。今後米ドルがモノに対して減価するという未来が見えているのであれば、それに応じた対処をすれば良いのです。

 

 ご存知の方も多いとは思いますが、米ドルの価値と(ドル建ての)金価格は互いに反対の動きをする傾向にあります。特に米ドルの価値が下がれば、その分金価格が上昇する傾向にあるのです。

 

 下図は1995年から2017年1月までの、毎日の金価格(青線)と10年平均の米ドルインデックス(米ドルの価値を表すもの、橙線)の推移ですが、見事に互いに反対の動きをしてきたことがわかるでしょう。

 

金価格と米ドルインデックスの推移

画像ソース:Macrotrends(画像クリックで最新チャートへ)

 

 20年ちょっとの歴史では物足りない方のために、下図は100年間における、金価格を100としたときの各国の通貨価値の推移です。世界恐慌のときの1930年前後、経済低迷+インフレの1970年代を見て欲しいのですが、米ドル含めどの通貨もゴールドと比較して減価していますよね。言い換えれば大きな経済不況のときに金価格は相対的に上昇してきたのです。

 

金価格と比較した先進国通貨の推移

画像ソース:World Gold Council

 

 注意して欲しいのは、米ドルが減価しても円高になると、円建てで見た金価格はさほど増えないことです。しかし円高は国債金利を上昇させて国債利払い負担を増やし、日本の財政にさらなる悪影響を与えて円の減価に結びつく可能性があるので、米ドルの減価は最終的に円建てで見たときの金価格も大きく増やす可能性があります。

 

 以上のことから、将来の米ドルの減価と、その後に待ち受けるかもしれない円の減価に備えて、ゴールドをいまのうちに購入するのは賢い選択なのではないでしょうか(私は既に購入済みです)。

 

 【注意】必ずしも金価格が将来上昇するとはもちろん言い切れませんし、下落したまま戻ってこない可能性もありますので、当たり前ですが資産すべてをゴールドに振り向けるなどということはおすすめしません。投資はあくまで自己責任で。

 

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金価格とマネタリーベースの推移

画像ソース:Incrementum

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