トランプ関税を契機に世界各国は対中関税包囲網を本腰入れて作り上げていくかも

トランプ関税は中国を利するという意見をよく耳にします。

中国は国内消費が低迷する中、近年鉄鋼や電子機器をはじめコモディティ製品を過剰に生産し、世界に大量にダンピング輸出してきました。

これにより中国のASEANへの財の純輸出額は2017年から24年にかけて4倍超に激増しました。

ラテンアメリカに対する財の純輸出額は2020年に185億ドル程度の輸入超過だったのが、昨年は353億ドル程度の輸出超過でした。

言い換えればASEANもラテンアメリカも地域全体では対中貿易赤字であり、それが年々酷くなっているのです。

しかもASEANから中国への輸出額は2023、24年と2年連続で減少しました。ラテンアメリカも2024年に対中輸出額が減りました。

※訂正:正しくは、ASEANから中国への輸出額は2023年には減少しましたが24年には増加しました。しかし24年の輸出額は22年を依然下回っています。

米国に次ぐ経済大国である中国は、本来であれば新興国からの輸入をもっと増やし輸入超過になっていてもおかしくないのですがが、事態は真逆なのです。

こうした中国の姿勢に新興国はすでに警戒感を露わにしています。インドネシア、インド、ブラジル、トルコを始め新興国は数年前から中国からの輸出を減らし国内産業を保護するため、鉄鋼や自動車などに関税を課してきました。

中国は新興国の製造業発展を阻害しているだけでなく、電気自動車、再エネ、AIなどの新興産業を一人占めしようとしています。レアアースの輸出の一時停止までし始めました。

中国はグローバル経済体制下で最大の勝利国/製造大国となりましたが、世界中のすべての産業を手中にし世界経済を支配しかねない段階に入り始めているのです。

トランプ関税はグローバル経済下で実体経済の王者になった中国の貿易黒字を減らし、世界の貿易収支の不均衡、カネの歪みを矯正する政策に他なりません。

新興国はトランプを後ろ盾に中国に本格的に関税を課し、国内産業の保護・育成に努めやすくなりました。

早速ベトナムは4月に中国の鉄鋼に最大37%のアンチダンピング関税を課すことを決めました。ベトナムは中国との結びつきが強く米国への迂回貿易の東南アジアにおける最大拠点です。

新興国各国にとって、米国に輸出されるはずだった大量の中国製品が、145%の関税を受けて米国の代わりに自国に流れ込むことはたまったものではありません。

世界各国は自国の産業や経済を守るために、中国による迂回貿易の排除に努めると同時に、対中関税を導入・強化するなど何かしら中国からの輸入を減らす策を取ることが必須です。

これから世界的な対中関税包囲網(関税ではなくとも何かしらの経済包囲網)の構築が本格化し、1978年の改革・開放以来続いてきた、輸出大国としての中国の経済の形は大転換を余儀なくされそうです。

※世界各国が中国との経済関係を断ち切るわけではありません。対中関税包囲網の形成は、中国がコモディティ製品を雪崩のように輸出することを止め、逆に他国からコモディティ製品をもっと買うよう、世界各国が中国に促すための手段です。