不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100 スチュアート・サザーランド[著]

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不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100 スチュアート・サザーランド[著]

 

医師や軍人、技術者や裁判官、実業家といった人々が下す決断も、あなたや私が日常的に行う決断とその愚かさにおいては大差ない。違いと言えば、専門職がおかす誤りのほうが往々にして深刻な被害をもたらすということだけだ。

 

 人間の思考や推論に多くの欠陥や問題点があることを、コンパクトにわかりやすく教えてくれる良書。内容は実験や調査、人物の発言といった証拠をベースとしているので信頼できるものが多い。この手の本の中では、特に医療分野への言及が多いのが特徴。

 

 私たちが何となく権威があり、常に的確な判断をしていると思う、医師や軍人・投資アドバイザーといった専門的な人々でさえ、時にはまったく合理的ではない判断を下し、私たち個人や国民に深刻な影響を与えることがあり得ることを、非常にストレートな口調で述べている。

 

 扱われている内容は、人間の都合の悪い事実や証拠を無視する傾向や、証拠や過去の歴史を都合の良いように解釈したり歪曲する危険性、本来関連性のない事柄を先入観によって関連付けようとしたり、ネガティブケースを無視することで生じる錯誤相関など多岐にわたる。

 

 この本で得られた知見というレンズを通して、マスコミの報道の仕方や、政治家や中央銀行総裁、金融・経済の専門家といった権威ある人物の発言、医療や健康食品などのマーケティングを見てみると、世の中について随分違った印象をもったり、冷静な分析を行うきっかけになるのではないか。

 

 小学校から大学までの教育を従順に受けて社会人となり、何となく社会に対する矛盾や不満を感じつつも、経営者や専門家に何となく権威を抱いてきた人がこの本を手に取ると、もしかしたらギョッとする箇所が結構あるかもしれない。

 

 それは学校では(分野にもよるだろうが)人間の影響を暗黙のうちに排除して考えられている専門分野ばかり教えられ、それらが埋め込まれている社会のいろんなシステムを人間が運用したときのリアルな現実をあまり教えてくれないから。実は人間とは完璧なものではなく、完璧でない人間が動かしている人間社会は学校で教わったような合理的手順では進まない、もっと泥臭くて各々の利害が絡み合った、複雑で不確実な世界なのである。

 

 「世の中は人間が動かしているのに、そういえばあまり人間がどういう生き物かについて教えてもらったことがない気がする...」そう疑問に思った人はこの本を読んでみるとよい。世の中だけでなく、日常生活で触れている人たちや自分自身の発言や感情、思考についても客観的に考えられるようになり、人間に対する何かしらの興味が湧いてくるのではないだろうか。

 

 人間や人間社会に対する知見や洞察を高め、人間社会をもっと自律的に豊かに楽しく過ごしたい方はぜひ一読をおすすめする。

 

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