金利上昇、不動産価格下落リスクを考えなければいけないのに...

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金利上昇、不動産価格下落リスクを考えなければいけないのに...

2017/09/05

 

【2017/09/04 日本経済新聞】高利回りREITの新指数 野村証券、連動ETF上場へ

 

野村証券は、利回りの高い国内不動産投資信託(REIT)だけを組み入れた、スマートベータ(賢い指数)型の指数の算出を始めた。低金利が続くなかで、地方銀行などの金融機関が利回りの高い金融商品へのニーズを強めていることに対応する。10月にも同指数に連動する上場投資信託(ETF)が上場する見通しだ。

 

同指数の8月末時点の分配金利回りは4.5%程度と、東証に上場するREIT全銘柄の平均(4%前後)を上回る。

 

東証REIT指数に連動するETFには地銀などの資金流入が続いており、8割を金融機関が保有している。

 

 スマートベータ型REIT新指数連動のETFが10月に上場されるようですが、上場タイミングはまったくスマートでない...

 

 何故金融機関(特に地域金融機関)が不動産貸出やREITの購入を増やしているのかというと、日銀のマイナス金利政策により利ざやを稼げなくなった金融機関が、少しでも収益を稼ぐための苦肉の策に過ぎません。

 

 地域金融機関のなかには利ざや収入で経費を賄えないところまで経営が追い込まれているところが存在しているため、企業の存続のためにもやむを得ずハイリスクの不動産投資をしているのが現状なのです。

 

 現在、欧米の中央銀行が金融引き締め方向へそろって舵を切る可能性が高く、世界的な金利の上昇懸念があります。

 

 欧州中央銀行(ECB)の態度は曖昧に見えますが、現状の量的金融緩和政策のもとでは、いまのペースで債券を購入するための債券が来年途中にも不足しまうので、いくらドラギ総裁が市場を惑わす態度をとろうが、金融引き締め方向に向かわざるを得ません。

 

 また昨今の信用創出の主役であった中国も、昨年末から共産党や政府が資産バブルの抑制を優先課題とする方針を立てており、その大枠に沿うかのように中国の中央銀行も現在まで金融規制を徐々に強めていますから、金利上昇圧力の一つとなります。

 

 金利が上昇すれば、不動産から得られる家賃収入の利回りとの差が縮小し、流動性の低い不動産の魅力は相対的に減少しますから、不動産価格は下がることになります。

 

 さらに中国人投資家による日本のタワーマンション等の投資過熱は、都心3区の中古マンション誓約単価をみるかぎり2013年あたりから始まっているようですが、そうなると2018年に不動産の所有期間が5年を超える中国人投資家が現れはじめることになります。

 

都心3区の中古マンション成約単価

画像ソース:NIKKEI STYLE

 

 不動産の所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」に分類され、売却時の所得税率が39%から20%と大きく減少するので(復興特別所得税は含めず)、来年から中国人投資家による日本の不動産売却圧力が出てくることでしょう。当然不動産価格は下がります。

 

 そして中国国内の不動産バブルが、理財商品という詐欺まがいの商品のブームの凋落が見え始めたことで、終わりが近づいてきているように見えます。

 

 中国の不動産バブル崩壊の兆候が中国人投資家の目にも映りだせば、東京の不動産の狼狽売りが起こる事だって考えなければなりません。

 

 何せ中国という国はアヘン戦争以来、少なくとも毛沢東の死去までは西側諸国による占領、軍閥割拠、内戦や戦争、それに大躍進政策の失敗や文化大革命に伴い数千万人の餓死者や犠牲者を出すなど、厳しい時代が1世紀以上続いたわけです。

 

 そうした苦い歴史を経験し、ようやく経済成長という果実を手にしたわけですから、長い鎖から解放された中国人が、バブルの歴史を勉強したりリスク評価をきちっと行って不動産投資をするなどとは、あまり思えないのです。

 

 何らかのバブルの崩壊を認識してしまえば、中国人投資家が大きなパニックに陥るのはもはや必然と言えるでしょう。

 

 中央銀行の金融政策や中国人の不動産投資の動きを見れば、現在は日本の不動産価格がもういつ大きく下落し始めてもおかしくない時期にいるわけです。

 

 そんななかで「高利回りのスマートベータ型REIT指数に連動したETF」が10月にも上場されるんですか。何だか笑ってしまいますね。

 

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