米国ICT企業10社で日本企業全体の研究開発費を抜きさる

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米国ICT企業10社で日本企業全体の研究開発費を抜きさる

2018/07/26

 

【2018/07/25 日本経済新聞】研究開発費、主要企業の43%で過去最高

 

日本経済新聞社がまとめた2018年度の「研究開発活動に関する調査」で、主要企業の43.9%が過去最高の研究開発費を投じることが分かった。投資総額は17年度比4.5%伸びて9年連続の増加となる。好調な業績を背景に、自動車を中心とした日本の製造業は、今後の競争力の源泉となる人工知能(AI)や自動運転など最先端分野の開発に積極投資している。

 

17年度実績と比較できる247社で企業の研究開発投資をまとめると、18年度の総額は12兆4789億円の見込み。米欧中の各国が科学技術予算を増やす中、日本政府の科学技術分野への投資は厳しい財政状況から10年以上横ばいが続く。民間主導で研究開発に取り組む傾向が一層顕著になっている。

 

 日本企業がいくらがんばっても、研究開発費で米中に追いつく見込みは到底ない。

 

 井の中の蛙もはなはだしい!というのが正直な感想です。

 

 2018年度の日本企業の研究開発費総額は12兆4789億円となるようです。前年度比+4.5%とあるので、2017年度は11兆9415億円程度とのことです。

 

 一方で2017年の米国ICT企業の研究開発費上位10社(アマゾン、グーグル、インテル、マイクロソフト、アップル、フェイスブック、オラクル、シスコ、クアルコム、IBM)を足し算したら、およそ1070億ドルでした。
【2018/04/09 recode】Amazon spent nearly $23 billion on R&D last year - more than any other U.S. company

 

 2017年末時の為替レートである1ドル113円で円換算すると、およそ12.1兆円となります。

 

 えぇ、たった米ICT企業10社だけで、日本企業の研究開発費総額を上回る額をAI、自動運転、IoTなどに投資しているのです。

 

 しかも米企業研究開発費のNo.1、2であり、米国ICT企業10社の研究開発費の36%を占めるアマゾンとグーグルは、年々R&D費を弧を描くように急速に増やしています。

 

 アマゾンに至っては、2017年の研究開発費伸び率は前年比41%増でした。日本で最大の研究開発費を計上するトヨタ自動車の研究開発費伸び率が、今年度たった1.4%であることと比較すれば、天と地との開きがあることがわかります。

 

アマゾン、グーグルの研究開発費推移

ソース:Morningstar

 

 この伸びを見れば、今年は米ICT企業10社と日本企業の研究開発費総額との差がますます拡がりそうですね。いずれはアマゾンとグーグルの2社だけで日本企業の研究開発費総額を上回る日が来るかもしれません。

 

 

 政府の科学技術予算の推移を見ても、日本は先進国+中国、韓国、ロシア、インドのなかで最低です。ロシアやインドは先進国よりも政府が使えるお金が少ないなか、政府予算の半分以上を研究費に充てています。首相官邸が何年も前から掲げてきた「未来投資」がいかに口先だけかがわかります。

 

研究費の政府負担割合の推移

画像ソース:総務省

 

 肝心の額をみると、日本の科学技術予算額は2000年から現在までほぼ横ばいに推移しています。政府の科学技術予算総額では中国がダントツトップです。2015年は20.7兆円で、日本の3.5兆円(2017年)の6倍近くの科学技術予算を中国政府は出しています。

 

主要国政府の科学技術予算の推移

画像ソース:科学技術・学術政策研究所

 

 今後中国政府は「中国製造2025」や「一帯一路」、さらには中華人民共和国建国100周年にあたる2049年に向けた長期経済発展計画実行を本格化させ、AIや航空宇宙といった先端技術産業を発展させていきます。

 

 今後も中国政府は、科学技術分野の研究開発に積極的に資金を投入していくことでしょう。

 

 

 日本が科学技術予算で米中に追いつくことは、現状では到底考えられません。今後は米国が自動車追加関税を課すことで日本の自動車メーカーの業績が悪化したり、電気自動車の開発・生産に向けた投資も必要なので、研究開発費を大きく増やす余裕があるとは思えません。

 

 日本政府に至っては現在、社会保障費と国債費の支払いで税収の大半が消えています。万が一失われた20年より以前の長期金利の水準に戻ってしまえば、「社会保障費の大幅カット」「預金封鎖、財産税を通じた預金没収」「ハイパーインフレを引き起こす」といった過激な政策でもしない限り、財政は100%破綻します。研究開発費にカネ回す余裕など到底ないのです。

 

 このままでは米中はおろか、昨今政府の科学技術予算の上昇が著しい韓国にすら、科学技術予算で近々抜かされるでしょう。

 

2000年度を100とした場合の各国の科学技術関係予算の推移

 

 

 「研究開発費、主要企業の43%で過去最高 」なんて見出しをつける日経も、ひどいものですね。

 

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