ゴールドラッシュ-社会的証明に従わないことがビジネスで成功する秘訣-

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ゴールドラッシュ-社会的証明に従わないことがビジネスで成功する秘訣-

   今回は周りに従わないことが自分自身の利益につながる一つの例を紹介します。


   私たちは社会的証明と呼ばれる、他人や情報に判断や行動が翻弄される心理的原理が備わっています。 そのためどうしても私たちは特に意識することなく他人の真似をしてしまいがちです。


   しかし需要と供給の面を考えると、ビジネス的なことで成功するためには社会的証明に従わない、逆に社会的証明を利用した「少数側」に立つことが何よりも大切になります。 これを顕著に示す一つの例がゴールドラッシュです。

社会的証明に従った多くの者はゴールドラッシュの敗者になった

   1848年からアメリカのカリフォルニア州で起こったゴールドラッシュは、社会的証明に従うことが勝てない競争に飛び込んでしまうという愚策を引き起こすことを示す一つの例です。


   ゴールドラッシュは土地開拓の現場監督だったジェームズ・マーシャルが金(ゴールド)を見つけたことに始まり、その後新聞社主だったサミュエル・ブラナンが金が発見しそれを公に発表したことで始まりました。


   ゴールドラッシュ初期に金を掘った人たち(マイナー、miners)は、簡単に採取できる金をどんどん掘ることができました。


   そのおかげで初期のマイナーは6ヶ月金を掘って6年分の収入を得ることが出来ました(つまり1ヶ月で1年分の収入)。 たった数ヶ月で現代価値にしておよそ3億円もの金を掘ったグループもいます。


   1848年6月の段階でまだマイナーの数は4000~5000人程度であり、少ない人たちがこうした利益を享受することができました。


   ゴールドラッシュがアメリカ全土、さらには海外に広まったのは1848年の終わりです。 この頃から多数の人が金で儲けるためにカリフォルニアに殺到することになります。 1949年12月にはマイナーの数は4万人に達し、1850年のピーク時には10万人ものマイナーが集結していました。 1948年6月に比べ、実に20~25倍にも増えたのです。


   しかし1850年にはもう多くのマイナーは全然稼ぐことが出来ませんでした。 下表の赤で囲ったのが各地域における、金を掘ることで得られる日給の平均額です。 一方青で囲ったのが、マイナーではない別の職業の日給平均額です(単位:ドル)。


ゴールドラッシュ


   表からわかるように、なんと普通に働いていたほうが金を掘るよりも多くのお金を得られたのです。


   これは平均額ですので、もちろん表にあるよりも稼いだ人はいます。 しかしそれでもマイナーの75%は一日5ドル以下しか稼げていないという研究結果も出ています。 つまり多くのマイナーは金を掘っても全然儲けることなんてできなかったのです。


   このように、ゴールドラッシュで多くの富を得たマイナーは主に多くの人に広まる前に金を掘った者たちであり、人々が殺到したときに掘ってももう遅かったのです。


   これから多くの人の真似をして稼ごうとしても、大した成果を収めることができないことをゴールドラッシュは教えてくれます。 社会的証明に従うことはビジネスでの成功を保障しないどころか、大失敗に繋がり得るのです。

ゴールドラッシュの勝者は社会的証明に従わなかった「少者」

   ゴールドラッシュが起こっているときに本当に大きな利益をあげたのは、マイナーではなくマイナーにサービスを与えた人たちなのです。 その典型例がリーバイスです。


   リーバイスは皆さんもご存知のジーンズメイカーです。 創業者のリーバイは、マイナーたちが吐いているズボンが金を掘っているときにすぐに破れてしまうという問題に着目しました。


   そこで彼は金を掘っても破れない丈夫な作業着などを輸入し、それらを小売業者に売る問屋としてリーバイスを設立しました。 その結果作業着はマイナーたちにバカ売れ、大きな利益をあげることができたのです。


   またゴールドラッシュのときには女性特有の仕事も大きな利益をあげました。 これは売春婦といったセクシャルなものや、マイナーたちに料理や掃除をサービスする家政婦のような仕事を指します。


   ゴールドラッシュが起こっているときのカリフォルニア州にいた人は大半が男性で、女性は少数でした。 当時のカリフォルニアはまだ開拓地で、町も法律も整備されていませんでした。 しかもマイナーはほとんどが男性だったので(肉体労働ですから)、女性が住むには適さなかったのです。


   金を掘るのは大変な肉体労働なので、どんどんフラストレーションが溜まります。 その中でフラストレーションを発散させてくれる売春婦、それに料理や掃除を提供してくれる家政婦は男性にとって非常に貴重な存在だったのです。


   男性側の女性に対する高い需要と、供給側である女性の人口が少ないことが折り重なり、ゴールドラッシュにおける女性の活躍はゴールド以上の価値があったのです。


   女性が住むには適さない環境の中で女性が仕事をするのは、とても勇気のいることだったでしょう。 町として発展していない男だらけのところに行くのは危険だと周りから止められた女性もいることでしょう。 しかし社会的証明に抗ってカリフォルニアで仕事を行った女性は、大きな利益を得ることができたのです。


   このように社会的証明に従って人々がせっせと金を掘っているときに利益を上げた勝者は、その傍らで金を掘っている人たちにサービスを与えた、社会的証明を利用した側なのです。


   ゴールドラッシュのマイナーは、数が限られているな金を多くの人で競争してしまったために大多数の人は利益をあげられませんでした。 一方でサービスを提供した側は、マイナーという大多数の人が貴重だと感じるものに、無限のサービスを提供することが出来るのです。


   これらは少ない供給に対して多くの需要があるという点では共通しています。 しかし二つには大きな違いがあります。 それはマイナーは「多くの」需要側であり、一方でサービスを提供する側は「少ない」供給側なのです。


   社会的証明に従うことは必ず「多く」の側にいることになります。 しかしゴールドラッシュが教えてくれるように、「多く」の側にいても競争が働くので成功するのは難しいのです。 「少ない」側にいることが競争を減らし、成功するためのハードルを減らすのです。


   社会的証明に抗うことは精神的なハードルがあります。 しかしこれを乗り越えた先には、ハードルの低い成功が待っている可能性があるのです。


   社会的証明に従って競争世界に身を突っ込むのではなく、社会的証明に抗って競争世界から一歩身を置き、社会的証明を逆に利用する。 こういったことが実は成功への近道になることを、ゴールドラッシュは教えてくれます。

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