知識は社会的証明への防御になる
今回は社会的証明によるマイナスの影響を防ぐ一つの方法として、幅広い知識を蓄えておくことの大切さです。
知識の大切さ
社会的証明とは他人の意見、行動やメディア等の情報にそれとなく従ってしまう人間心理の原理の一つでした。
社会的証明は時として間違った行動を生み、自らの人生に大きな爪痕を残すこともあります。 典型的なのはバブル時に投資の素人が周囲に便乗して株や不動産に手を出して、バブルが弾けて大損を喰らうケースです。
よって私たちは社会的証明による悲劇から逃れるためにも、禍根が大きくなって引き返せなくなる前に対策をとることが大切です。
それではどういった対策をとればよいか? やはり一番の基本は幅広い知識を持っておくことでしょう。 空いている時間に本やネットなどで地道に知識を蓄積しておくこと、これが大切だと思っています。
知識が大切な理由は、知識を頭に入れておくと社会的証明が働く状況で冷静な判断が出来るようになり、愚かな行動にストップを掛けてくれるからです。
社会的証明は特に不確実な状況でより強く働きやすいとされています(→参考)。 現在の状況を把握できていなかったり、遭遇した状況に関する知識や経験が薄かったり皆無であるためにどのように対応すれば良いのかわからない...といった不確実な状況下では、私たちはより社会的証明に依存した判断や行動を選択する傾向にあるのです。
これは主に無知であることから引き起こされます。 何も知らないから、周りの意見に従うことしか出来なくなってしまうのです。
もし多少なりとも知識があれば、それが周りの意見に安易に従うことに対するストッパーとなり得ます。 必ずしも知識が最善の判断を下してくれるとは限りませんが(それは個人のいままでの努力や能力に依るでしょう)、少なくとも群集が引き起こす原始的発想やメディア等による意図的な世論操作への耐性はできるでしょう。
あくまでもストッパーとしての作用として働かせることが出来ればまずは十分なので、専門的な知識を詳細に得る必要はないでしょう。 様々な分野の基礎的知識を、浅く広く知っていれば十分でしょう。
もちろんその後に行動に移すときやより深く知りたいと思ったことは、もっと掘り下げて集中的に知識をたくさん増やしていくのも大切ですが。
知識を社会的証明への防御に利用する具体例
それでは実際に知識を社会的証明への防御にどのように利用するか、具体例を考えて見ましょう。
皆さんも日常生活の中で次のような事柄を目にすると思います:
- 株価や企業の業績に関するニュース
- 韓国や中国を嘲笑するワイドショー
- 日本の借金が極めて多いことを多少なりとも憂慮しているが、周りの人たちは普通に暮らしているように見える
上のような事柄を目にしたとき、関連した知識をまともに持っていない人はどのように感じるでしょうか。 おそらく社会的証明が働いて次のように考えると思います:
- 株価が上昇基調であったり企業業績がニュースで良いと報道されていると、良い投資対象だと感じる
- 韓国や中国を嘲笑するワイドショーを見て、韓国や中国をついつい小バカにしてしまう
- 日本の借金が多くて将来が心配だけれども、周りは特に何もしていないし自分もいまは普通に暮らしていけてるからまだ大丈夫だろう
では多少なりとも知識があればどのように考えたり行動したりすることが出来るでしょうか。
例えばバフェット本やグレアム本といった投資の本を読んだり経済や金融の歴史を勉強すると、株価や良いニュースにつられず独自に企業業績等を調べた上で考えて行動することが何よりも大切であることが教えられます。
よって株価やニュースを元に売買を行うのは愚作であると感じ、衝動的な売買を程度抑制することができます。
続いて韓国や中国を嘲笑するワイドショーばかりやっていることについては知識はどのような防御をしてくれるでしょうか。
そもそもメディアは客観的事実を伝えるだけではなく、しばしば為政者の意図に逆らわないような世論を形成する役割を果たしてきたわけです。
例えば欧米メディアはイラクのフセイン元大統領が大量破壊兵器を隠しているとアメリカ等が騒ぎ立てて、大量破壊兵器の存在を確かめずに始めたイラク戦争に大きな疑問符を投げかけるようなことはあまりせず、半ば戦争を正当化してきましたよね(→参考)。
日本だって戦前や戦中はさんざん戦争を美化し続け、国民に戦争を正当化させてきました。 そしていまでも戦前、戦中の歴史認識に関する議論がメディアで展開されていて、それが嫌韓嫌中にもつながってきています。
メディアの今までの実績を知っていれば、(しばしば重要な事実を歪曲したり隠蔽した上で行われる)メディアによる諸外国の敵視や嘲笑は、国民に諸外国への反感意識を植え付けさせて、政府による対外謀略行為(戦争を含む)を正当化させる目的もあることが理解できますよね。
そう考えれば、世界情勢や世界の歴史についてほとんど知識もない中でワイドショーに呼応して諸外国を特に理由もなくバカにすることは危険なのです。
最後に国の借金についてちょっとでも理解がある人はどうでしょうか。 そんな人は例えばこんな風に考えられますよね。
日本の借金は1,000兆円を超えており、しかも今後は労働力人口の減少等によって正当な方法で借金を返すのは難しいから、増税、インフレ誘導策、デフォルト(デフォルトは結局通貨の大暴落となり輸入インフレ等につながる)をしてでも借金を減らすか失くすかしないといけないだろう。
だからいまのうちにゴールドや外貨などを少しずつ積み立てておいたり、一部資産を海外に退避させるなどして資産を分散化させることが重要だろう。
しかも被害を受けるのはいつでも準備をしてこなかった人たちなので、いまのうちから実際に行動に移して準備をしておこう。 周りに流されずに自分の身は自分で守ることが大切だ... そう思えますよね。
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このように知識さえあれば、知識に働きかけることによって愚かな感情や行動が出てくるのを未然に防ぐことができるわけです。
特に現代は情報化社会のために、ネットやテレビといったメディアからの社会的証明が極めて働きやすい状況下にあります。 こうした中で何の知識もなく、ただニュースを鵜呑みにしたりヤフコメ欄の意見を信じることは非常に危険なのです。
常に世の中に対して疑問を持ちながら、日々本やネットなどで気になることを地道に学ぶ知識を蓄える習慣を身につけることが、大きく誤った思考や行動から身を守るために極めて大切になると言えるでしょう。
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