ネット上では真実よりもマーケティング力に優れた情報の方が伝播しやすい
今回はインターネットと社会的証明に関連して、ネット上では真実よりもマーケティング力に優れた情報の方が伝播しやすいことについてです。
ネット上の情報伝播の根底に社会的証明が働いている
インターネット上ではある情報や動画が瞬く間に広がる場合があることは皆さんご存知の通りです。
では瞬く間に広がるのは一体どんな原理が働いているのでしょうか? それはまさしく人間心理の原理です。
ちょっとした噂、閲覧数といった数、利用者の評価、こういった「必ずしも質や正確さを表すものではない」ものをトリガーとして、特定の情報や動画等が伝播していくのです。 まさに社会的証明という人間心理の原理が反映されているわけです。
例えばブログやニュースサイトによっては記事ごとに「いいね!」といった、記事に共感した人の数が表示されていることがあります。 するとこうした「いいね!」が多くついた記事をついつい優先して見てしまうものですよね。 「沢山の人が共感しているんだから、きっと重要だったりおもしろい記事なんだろうなぁ」と無意識に思いつつ見てしまうものです。
また音楽でも曲自体のクオリティというよりは、それよりもむしろ最初に音楽を聴いた人の評価がその後のダウンロード数に大きな影響を与えることを示す実験結果もあります(→実際の論文(PDF))。
さらに私のようにサイトを運営している人ならわかりますが、ある程度の記事を書くとだんだんと検索エンジンに認められて、検索の順位が上がってきます。 その結果サイトに多くに人が集まりやすくなっていきます。
もちろん記事の質も大切なのですが、記事の量や更新頻度といった数の部分が大きいのです。 よって検索エンジンによる評価も、ある意味で人間的な評価であると言えるのです。
このようにインターネット上の情報等の広がりの根底には、社会的証明の原理が大きく働いているのです。
ネット上では真実よりもマーケティング力に優れた情報の方が伝播しやすい
上の内容はまぁ当たり前といえば当たり前かもしれません。 それではインターネットに社会的証明の原理が大きく働いていることからわかる、当たり前だけど見過ごしがちな教訓とは何でしょうか。
それはネット上では「真実よりもマーケティング力に優れた情報の方が伝播しやすい」ことです。 これよりネット上の情報を私たちは常に疑い続けなければならず、ネット上のあらゆる情報を安心して信用しきれる日はおそらく永遠に訪れることはないと言えます。
情報提供者側の立場になると、ネット上ではとにかく共感してもらえたり好意を抱いてもらうことが極めて大切となります。 そうしないと十分な集客を行うことが出来ないのです。
では共感や好意を抱いてもらうにはどうすればよいか? そのためのテクニックがずばりマーケティングなわけです。
上に書いたように、情報等の広がりの根底はあくまで人間心理です。 よってマーケティングを利用して閲覧者の心理をうまく掻き立てることが、ネット上で集客するカギとなるのです。
真実や有益な情報だけではダメです。 何故なら真実や有益な情報はしばしば理解が難しく直感とかけ離れているため、閲覧者の食いつきが良いとは言えずネット上で広がりやすいとは言えない場合もあるのです。
※ここでいう有益な情報とは事実等をもとにした、閲覧者の将来に何らかの形でプラスになる知見を与えてくれる情報のことを指し、楽しく感じさせてくれるだけの情報や内容の薄い情報、あまりにも根拠の少ない意見が多く占める情報等は含みません。
よってネットで情報を提供する側にとって、真実や有益な情報の提供よりもまずはマーケティングがどうしても大切になってくるわけです。
※マーケティングと真実や有益な情報はもちろん共存可能ですので、そこは注意してください
実際、スマホ等の普及で世界中の人々がインターネットを利用する中で、オンラインマーケティングの進化や新たなオンラインを利用したサービスの普及といったニュースは良く見かけますよね。
ですがスマホの普及によって真実が伝わりやすくなるなんて言っている個人やニュースってよく見かけますか?
またアフィリエイターたちも文章(コピーライティング)の大切さは説明するものですが、必ずしも「事実を書きなさい」とはアドバイスしないものです。
なので結局インターネットというのは、情報提供者が利用者から共感を得るマーケティングツールとしては非常に強力ですが、真実を伝えるツールとしての役割はマーケティング的な役割と比べると決して強いとは言えないのです。
さてここで日本の情報提供者の多くを占める、ブロガーたちの心理をちょっとのぞいてみましょう。 彼らはブログを何のために始めて、どういったメリットを感じているのでしょうか。
下は古いデータですが、これを見る限り日本のブロガーたちがブログを始める目的は必ずしも「世間一般に価値のある情報を与える」ことではないことがわかります。
目的はあくまで自己満足、自分と似たような人と知り合うため、アフィリエイトといった自分の利益を満たすため...といった人も普通にいるものです(別にこれらの目的は決して悪いことではありませんが)。
ブログを始めたことによるメリットも自分の利益に関しては多く挙げている一方、他人の役に立ったと感じている人は少ないです。
上のデータだけでブロガーの心理を正確に判断することは出来ませんが、少なくとも真実や有益な情報を流すことを必ずしも第一優先にしているわけではないことは読み取れます。
いままでの話をまとめると次の通りです:
- ネット上での情報の広がりの根底には人間心理の原理が働いている
- 真実よりも共感や好感を得られやすい、マーケティング力の優れた情報の方が伝播しやすい
- 情報提供者が必ずしも真実や有益な情報を流すことを第一優先にしているわけではない
以上のことから、閲覧者側の立場としてはネット上の情報をむやみに信用するのはよろしくなく、常に疑い続けることが大切だということです。 そしてこうした意識を生涯持ち続けることが大事なのです。
もちろん事実や有益な知見を与えてくれる人もネット上にはいっぱいいますから、貴重な情報をいつでもどこでも瞬時に入手できるツールとしてネットが有用であることは論を待ちません。
上のようなネットの性質や情報提供者の立場も考えながら、うまくネットと付き合っていきたいものです。
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