人間は何事も信じることから始まる

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人間は何事も信じることから始まる

 人間の認知能力は決して投資に適応しているとは言えません。ときに人間の認知が引き起こす判断は誤った投資行動を導くものです。

 

 では一体どのような認知能力が投資判断や行動にマイナスに働いてしまうのでしょうか。そこには様々な要因があるのですが、おそらく一番ポイントとなる要因をあげるとすれば、それは「人間は信じる生き物である」ことでしょう。

 

 

人間は何事も信じることから始まる

 人間は基本的に何事も信じることから始まることとはどういうことでしょうか。

 

 子供はたしかに最初は何でも信じるように見えます。サンタクロースの存在や、夏の日にお腹を出していると雷様におへそを取られてしまうというおどしを信じたりするものですよね。大人になれば真っ先に嘘だと判断できるものでも、子供にとってはそうではありません。

 

 大人になるにつれて段々と疑い深くなっていき、人の発言や世の中に溢れる情報をそう易々と信じないようになっていく人も多いでしょう。中には自分は何でも最初から疑う癖が出来ており、信じることから始まるなんてことはないと自負している人もいるでしょう。

 

 しかし大人になったとしても、人間の「信じることから始まる」という性向は変わるものではありません。私たちの気づかない間に信じるという工程を経ているのです。

 

 例えば大人になって、仕事や趣味づくりのために今まで門外漢だった経済や金融、歴史などの本を読むこともあるでしょう。このとき、最初から疑いながら読んだりしますか?普通しませんよね。とりあえず本の記述をそのまま受け入れるものですよね。つまり暗に本の内容を信じているというわけです。

 

 私たちは文章や音声などから様々な情報をインプットしては「正しい」「おかしい」「わからない」といった感情を伴う何らかの自覚をしているものですが、こうした自覚が生じる前に無意識に情報を受け入れ、ありのままを信じてしまっているのです。

 

 疑ったり信じない振る舞いをするにしても、まず一度無意識レベルで情報を信じて、そこから喚起される頭の中にある何らかの関連づいた別の情報とのあいだで比較し、矛盾が生じることで「正しいのかどうか怪しい」「信じられない」といった自覚が生じるにすぎないのです。

 

 もしいま頭に入ってきた情報に関連する知識を持たない場合、例えば経済や歴史といった門外漢の分野を勉強するときは、頭の中で関連する矛盾した情報が喚起されることはあまりないですから、入ってきた情報を受け入れることになるでしょう。

 

 大人になって疑い深くなった人でも、それは最初から信じないのではなく、一度瞬間的に信じた情報をすぐさま振り払うだけの力が強いということなのです。すべての人間は何事も信じることから始まるのです。

 

信じていることが行動の道しるべとなる

 人間が信じることによって生じるパワーというのは大きなもので、人間は自分が信じていることを根源とした様々な行動をとっていくのです。こうした傾向を表現する言葉として、心理学では確証バイアスというものがあります。

 

 確証バイアスとは各々が信じている考えを裏付ける証拠や意見等を探し求めたり、逆に考えに反する証拠や意見等を真剣に受け止めようとしない傾向のことです。

 

 例えば特定の政党を応援する団体には往々にして確証バイアスがかかっていると言えるでしょう。応援している政党の良い部分や成果ばかりを強調する一方、その政党に都合の悪い事実は無視したり、大声をあげて反論するなどして、反論意見に聞く耳を持たないですよね。

 

 またノーベル化学賞受賞者のライナス・ポーリング氏は、ビタミンCの大量摂取によって風邪からガンまであらゆる病気が治ると主張し、反証を突きつけられても自説を曲げなかったことで知られています。これも確証バイアスと一種と言えるでしょう。

 

 心理学の実験でも、人間は仮説検証を伴う推論をするときに、最初に自分が妥当だと考えた仮説が「正しい」ことを裏付ける証拠を集めようとすることがわかっています。

 

 仮説検証を伴う推量では、正しくない仮説をどんどん切り捨てて試行錯誤していくことで正しい仮説に近づいていくのが本来近道なのですが、人間は往々にして自分が最初に強く正しいと信じてしまった仮説に固執してしまう傾向にあり、それが本来間違いである仮説に執着してしまう原因となるのです。

 

 このように自分が正しいと信じてしまったものをベースに、私たちの行動は自ずと決まってしまいやすいのです。特に間違った事柄を正しいと強く信じてしまうと、私たちのその後の行動が迷宮入りしてしまう可能性もあり得るのです。

 

投資と信じること

 上で話した信じることについてまとめると、特に大事なポイントは次の3つです:

 

  • 私たちはあらゆる情報を自覚する前に、無意識に信じてしまう
  • 得た情報に関する知識、記憶が不足していると、その情報を信じてしまいやすくなる
  • 信じた情報をベースに行動してしまう

 

 ここから導かれる重要なことは「知識の浅薄な分野に関する情報に浸り続けると、信頼できない情報をもとに間違った行動を引き起こしかねない」ということです。

 

 投資をする状況にあてはめてみましょう。投資をするのであれば、市況、企業業績、経済、金融、国際政治など、広範にわたる分野に関する情報をどうしても取得する必要があります。

 

 しかしこうした分野は基本的な専門知識が要求される場合が多く、特に投資初心者の人には内容があまり理解できないことが多々あります。

 

 しかも情報は何でもかんでも信頼できる、事実を伝えているわけではありません。ニュース等で流れる情報には正否のわからない憶測や意見が混じるものですし、場合によっては国民を騙す意図が含まれているものです。また本当に重要な事実をあまりメディア側が伝えてくれないこともよくあります。

 

 つまり特に投資初心者にとっては、知識の欠けている分野に関するノイズだらけの情報を日々受け取りやすくなるのです。

 

 するとどうでしょうか。自分では自覚していなくても、間違っていたり本当は信頼してはいけない情報によって妄想が形成されて、投資判断や銘柄の売買といった行動に反映されやすくなることを意味します。

 

 これが投資では非常に怖いことです。真偽の不明な情報や目先の情報を信じて妄想を膨らませてしまうと、どうしても高く買って安く売るという最悪の行動をしてしまいやすくなるからです。

 

 投資ではちょっとしたミスの積み重ねは仕方ないにしても、たった一度の判断がその後の投資成績を5年、10年と大きく変えてしまうことだってあります。そしてこうした一世一代のミスは自分でつくりだした「誤った確証」から起こるのです。

 

 誤った確証による最悪な判断を防ぐためには、次の3点が重要となるでしょう:

 

  • 事実をもとに判断するように心がける
  • ニュースや株価などを変に見過ぎない
  • 投資に関する分野の勉強をしたり、歴史を幅広く知っておく

 

 要は「ブレない軸をもつ」ことが大切なわけです。

 

 対策を施しても誤った確証から生まれる間違った投資判断を完全に防ぐことはできないでしょうが、意義は十分あるはずです。

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