昨日の記事の続きです。
エヌビディアの現金回収能力が急速に悪化している
https://www.avocado-fes-thought.com/blog/20260831-nvda/
この記事では、ハイパースケーラーがエヌビディアから購入したチップの代金支払いを先延ばしするようになり、資金繰りに窮し始めていると書きました。
すでにオラクルとアマゾンはフリーキャッシュフロー(FCF)がマイナスになり、アルファベット(グーグル)も4~6月期にFCF赤字に転落しました。メタのFCFも風前の灯であり年内にはFCF赤字に転落しそうです。
2010年代にキャッシュフローを荒稼ぎし米国株の象徴だった「高クオリティ企業」たちが、巨額のキャッシュフローを流出する「低クオリティ企業」へとドミノ倒しのように崩れています。
競争に負けないために巨額のAIデータセンターへの投資を迫られる彼らは、キャッシュフローで賄えない投資資金を借入に頼らざるを得ません。
彼らは最近、投資資金を確保するために社債を大量に発行していますが、これは氷山の一角に過ぎません。
彼らは社債といったバランスシートに計上される負債以上に、簿外債務を急拡大させています。
WSJが8月に出した記事によれば、ハイパースケーラーの貸借対照表に記載されている負債(長期借入金+リース負債)は6,040億ドル。
対して貸借対照表から隠された簿外債務(購入コミットメント+未開始のリース契約)はおよそ2.4兆ドル。
簿外債務がバランスシートに記載された負債の4倍にも達しているのです。
しかもここ3カ月の間にハイパースケーラーの負債は1兆ドル以上も増えています。常軌を逸する財務悪化には唖然とするしかありません。
今後ハイパースケーラーは、バランスシートから隠された数兆ドルものエヌビディアへのチップ代金支払いとデータセンター運営会社への賃料支払いが、営業キャッシュフローの減少や設備投資拡大の形で顕在していきます。
簿外債務を急速に増やしているのはハイパースケーラーだけではありません。
エヌビディアの購入コミットメント(ほぼすべてTSMCに将来支払うチップ製造委託代金)は7月26日時点で2,790億ドルに達し、3か月前の1,190億ドルから2.3倍に膨れ上がりました。
これはエヌビディアが抱える簿外債務に他なりません。これがエヌビディアの年間の営業キャッシュフローを大きく上回るまでになってしまったのです。
さらにエヌビディアはこれとは別に、様々なAI関連企業に出資しています。出資を受けた企業はこの資金でエヌビディアのチップを購入するという循環取引を形成しています。
要するに言いたいことは次の通り。
AI業界では少なくとも3兆ドルを超える規模の購入コミットメントという契約がAI企業同士を帳簿内・簿外の資産・負債を通じて紐づいており、一度この紐帯に火が付けば、AI業界全体に燃え広がります。
これは住宅ローンやCDO、CDS市場が拡大した結果起こったリーマンショックと全く同じ。それがテクノロジー分野で巻き起こっているわけです。
つまり今のAI業界の構造は「インターネットバブルとサブプライム住宅ローンブームのハイブリッド型」のようなものです。
こうしたことを知っている私共は、今もなおAI・半導体バブルに虎の子の資産を預けている人たち(S&P500やオルカンに多額を投資している人たちを含む)の気持ちを理解することができません。
「そんなに自ら人生を破滅させたいのか?いま資産を失ったら、インフレも円安も止まらない中で経済的復活はほぼ無理、死ぬまで最底辺の人生だぞ…」
これが正直な気持ちです。
虎の子の資産を失う前に、インフレ、円安に負けない本物の長期投資に目を向けて欲しいものです。失ってからではどうしようもありませんから。