[2026/06/06 Forbes JAPAN]金と銀が数カ月ぶり急落、予想上回る米雇用統計を受け
金と銀は、米国時間6月5日に発表された好調な雇用統計を受けて急落した。両貴金属は年初来最安値付近で推移している。アナリストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利を維持するとの見通しとドル高を要因として挙げている。
最近の金価格の重苦しい展開に皆さまはやきもきしておられるのではないでしょうか。
金価格は今年1月29日におよそ1オンス5,600ドルの史上最高値をつけましたが、その後一旦急落し、さらに2月28日に始まったホルムズ海峡の閉鎖により一段と下げた後、軟調に推移しています。
3月には金ETFの価格は12.5%、銀ETFの価格は19.8%、金鉱株ETFは21.2%それぞれ急落しました。
4月に入り金価格は1オンス5,000ドルに向かって上昇したものの到達に失敗し、その後再び下がり現在の金価格は4,329ドルほどと昨年末の価格付近に戻りました。上値が重い展開となっています。
これまでの金価格値上がりの根幹にあったのが、各国の中央銀行が金準備を買い増してきたことでした。
米国による金融政策や各国への経済制裁による直接の影響から逃れ、通貨価値を維持し、安定した経済発展を追求する目的で、新興国を中心に金準備を積み増してきました。昨年には金が米国債を抜き、世界最大の準備資産に返り咲きました。
ところが今年に入り中央銀行の金売買に異変が生じています。
トルコがリラ防衛のために3月に60トン程度の金準備を売り越したことではありません。この大半は金スワップ(金の貸し出し)の形であり、いずれこの分はトルコ中銀に返されます。
私共が気にしているのはロシアの中央銀行が金準備を売っていることです。
ロシアは脱ドル化推進のために金準備の買い増しを主導した国でした。クリミアを併合した2014年3月以降、ロシアは2019年ごろまで勢いを加速させながら金準備を大きく増やしていきました。
その一方で、2018年までに保有米国債のほぼすべてを売却し、2022年のウクライナ戦争が始まってから米国債を完全に売り切りました。
そのロシアが1~4月期に累計で27.9トンを売り越しました。これは2002年以降で最も顕著な金準備の減少幅です。
これまでの金価格上昇の根本要因である、新興国による脱ドル化を目的とした旺盛な金購入はロシアが生み出したものです。そのロシアが今年に入り、かつてない規模で金準備を売却しているのです。
ロシアは今年1~3月期に軍事費の増大やエネルギー収入の低迷により財政赤字が拡大し、四半期としてウクライナ戦争開始後から最大となりました。この赤字を埋め合わせるために金を売ったと言われています。
その一方で、脱ドル化を推進してきたBRICSは5月の首脳会議で米国・イスラエルを巡りイランとUAEが対立し共同声明を出せない事態となり、結束が揺らいでいます。UAEやインドは親イスラエルです。
2024~25年にエジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシアが正式に加盟し10か国体制となった中での仲間割れ発生であり、先行きが思いやられます。
プーチンは表向き米国と対立していますが、裏ではトランプとがっちり握手を交わしています。昨年にアラスカで首脳会談を開きましたし、ホルムズ海峡の閉鎖を受けて米国はロシアへの石油制裁を徐々に緩和しています。いずれ完全解除となるでしょう。
金価格があまりに高騰しすぎると世界の準備資産における米国債が金に比べ霞むようになり、米ドルの地位低下が白日の下に晒されます。
脱ドル化の行き過ぎで米国・米ドルが完全に崩壊することをトランプは望んでいないと思います。金価格があまりに高騰しすぎることはトランプにとって好ましくない事態でしょう。
ロシアの金準備売却にこうした政治的思惑(米ドルを弱くし過ぎないこと)が絡んでいる可能性も頭に入れておかなければなりません。
★ロシア中銀の金準備売却により、金市場の先行きはより一層不透明になりました。
止まらないインフレ、財政崩壊、ホルムズ閉鎖による製造業・物流の崩壊、そして円崩壊が現実味を帯びている日本において、これからもゴールドを安全資産として抱え続けて良いのか不安になってしまいます。
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