ホルムズ閉鎖と巨額政府債務で中央銀行は長期金利を十分制御できなくなっている

ホルムズ海峡の閉鎖が始まってから、世界的に国債利回りの上昇が止まりません。

●10年債利回り
・米国:3.95%(2月27日)→4.60%(現在)
・日本:2.11%(2月27日)→2.76%(現在)
・英国:4.23%(2月27日)→5.15%(現在)
・ドイツ:2.65%(2月27日)→3.16%(現在)

ホルムズ海峡の閉鎖でエネルギー価格が上昇し、期待インフレ率が高まっていることで各国の金利が上がっています。

金利上昇を根本的に止めるには期待インフレを抑えなければなりません。しかし中央銀行はエネルギーや資源の供給不足によるコストプッシュ型のインフレから発生した期待インフレを抑えることが不得意です。

いくら言葉巧みに市場心理を制御できても、金融政策によりペーパー市場を操作できても、モノの深刻な供給不足を解消する力は皆無です。

50年近く前に当時のボルカーFed議長は金融政策ターゲットを金利から量に変え、市場の過剰流動性を徹底的に搾り上げました。この過程で政策金利は一時20%を超え、住宅ローン金利は18%に達しました。

こうした厳しい金融引き締めを行っても、市場のインフレ期待をへし折るのに2年以上の歳月が掛かりました。

超高金利により米国は1981年終わり~82年にかけて、世界大恐慌以降では当時最悪の不況に見舞われました。自動車産業や住宅産業は壊滅的な打撃を受け、失業率は10%を超えました。経済の犠牲なしに高インフレを止められませんでした。

ボルカー議長が46年ほど前に非常に厳しい金融引き締めを行えたのは、政府債務をはじめ米国や世界の債務残高がそこまで大きくなかったからでした。

当時、米国の政府債務残高はGDPのおよそ30%に過ぎませんでした。そのため政策金利が20%を超えて利払い負担が増えても、米国の財政は十分に耐えることができました。

ところが2025年末時点の米国の政府債務はGDPの約126%に達しています。すでに長期金利の上昇で国債の利払いが急上昇し、年間1兆ドルを突破し、軍事費を抜いて米国財政の支出額第2位に躍り出ています(1位は社会保障費)。

この状況で政策金利を20%に引き上げてしまえば、米国は新発国債・借換債の金利負担が劇的に跳ね上がり、財政が持たなくなります。

これは他の国々も同じです。日本の政府債務(対GDP比)は1980年に50%程度でしたが2025年は約204%でした。ユーロ圏も88%ほどあります。

Fed、日銀、ECBはインフレを抑えるために年内に利上げに踏み切るのではないかとの観測が出ています。

何回かの利上げはあるかもしれませんが、各国の財政状況からこれには限度があります。

現在の長期金利上昇の一つの根本要因であるインフレ期待を中央銀行が制御することは困難になっています。長期金利は市場原理に任せるしかありません。