株式相場と一蓮托生の日本:祭りの後に待ち受けるものとは?

[2026/05/12 日本経済新聞]日経平均に先高観 7万5000円の「買う権利」需要急増

日本株の急速な上昇を受け、投資家の間で更なる先高観が広がっている。オプション市場では株価上昇で利益を生む「コール」(買う権利)が買われ、日経平均株価で7万5000円という超高水準を権利行使価格とするコールの残高も急増している。

日本株の強気相場は、高市政権下での「インフレ税」政策と密接につながっています。

高市政権は、ホルムズ海峡閉鎖が続く中でガソリン補助金という石油需要喚起策を続けたり、石油備蓄や外貨準備を放出し、インフレ常態化に向けた環境を着々と整備しています。

「インフレ税」により、日本の政府債務残高(対GDP比)は2023年度から3年連続で低下しています。

これらから、高市政権が「インフレ税」による財政健全化を推し進めようとしているのはほぼ間違いありません。

インフレが続けば、国民の生活はますます苦しくなり、高市首相の支持率は下がってしまいます。

この問題に対処するために日本株は重要な役割を担います。日本株が今のようにインフレ率以上の値上がりを続けていけば、日本株を持つ国民はインフレのなかでも購買力を高められます。新NISAやiDeCoという株式投資を促す仕組みも導入されています。

企業による値上げ(価格転嫁)は仕方ないよねという風潮が日本を覆っています。インフレに伴う値上げを繰り返していけば、企業は収益を増やせられます。増えた収益は自社株買いや配当の形で株主に還元されていきます。

自社株買いは海外投資家の買いと並ぶ日本株の値上がりの主要因です。2025年度の上場企業による自社株買いの取得枠設定額は前年度比18%増の22兆3250億円で、5年連続で過去最高を更新しました。

東京証券取引所や物言う株主による資本効率改善の要請(圧力)の賜物です。

「インフレ→企業業績の拡大→株主還元拡大→株価上昇・配当増加」という好循環を回し続けて、国民の購買力を増やし、経済を良くし、財政を改善し、政治を安定させる…

今の高市政権、日本政府が描く起死回生のシナリオはこんなものではないかと私の眼には映ります。

**********

この目論見通りに事は上手く進むのでしょうか。

日本株が買われてきた理由の一つは米国株に比べ割安であることですが、シラーPERは30倍に達しています。米国株より割安だとしても、客観的に見て日本株は割高です。

【シラーPER(CAPEレシオ)・日経平均】チャート

ホルムズ海峡閉鎖の長期化は、日本株の将来に影を落とします。ナフサを始めとした製油品や石油化学品、その他幅広い原材料の安定調達が危機に瀕しています。

高騰した原材料品を価格転嫁すれば消費者は買いを控えます。製品を作れないことと値上げに伴う消費者離れにより販売数量は大きく落ち込み、収益も収益性も悪くなります。巨額の設備投資が必要な企業は金利上昇と原材料の高騰で資金繰りに窮していきます。

こうなると、日本株高騰の原動力の一つである自社株買いを続けている場合ではなくなります。

また日本株の強気相場は日経平均の30%程度を占める半導体関連株の値上がりに依るものです。

ホルムズ海峡の閉鎖により半導体製造に必要なヘリウムや硫黄などの安定供給が脅かされており、半導体サプライチェーンは危機に瀕しています。このリスクを日本株は(米国株もですが)全く織り込んでいません。

日本株の強気相場を支えてきた要因に問題が生じ始めているわけです。

**********

日本国の命運は株式相場が握っています。

日本株の暴落は、日銀の抱える巨額の株式ETFの時価価値を暴落させ、日銀や日本円の信認問題を惹き起こします。

円安・インフレ・金利上昇が止まらなくなり、日本円は「紙屑」となり、政府は大増税と社会保障の大幅削減をするしかなくなります。

人々の手元の資産は価値を消失し、周囲には十分な物すらありません。

地獄に落とされた国民は政府を見放し、一切信用しなくなります。国民の支持のもとで成立してきた民主国家としての日本は機能不全に陥ります。

いつまでこの宴が続くのかは分かりませんが、日本の株式相場、現体制は一瞬で崩れ去る瀬戸際にあります。