イラン情勢の本質:単なる石油危機ではない、経済の仕組みそのものの危機

イラン戦争、ホルムズ海峡封鎖は「第三次石油危機」とも呼べる状況を世界に作り出しました。

50年前の石油危機の時は、石油の価格高騰と供給不足が影響の大半でした。それでも世界中でスタグフレーションに見舞われ、世界経済が落ち着くまでに10年以上掛かりました。

今回の危機は石油だけにとどまらず、LNG、ヘリウム、硫黄、肥料、アルミなど原材料の不足を招き、やがてありとあらゆる分野の品不足へと発展していきます。

それだけではありません。50年前と比べ、現在の世界経済では相互依存が極めて強くなっています。

1970~2024年にかけて世界の貿易額はおよそ70倍になりました。

「原材料→中間財→最終製品」までの生産プロセスは一国や二国だけで完結しません。今では「地球規模」で生産されるのが当たり前になっています。

半導体は典型的な1つのICチップを製造するために1,000以上の処理工程が必要です。完成し消費者に届くまでに国境を70回以上通過、総輸送距離は4万キロに及びます。

また中東産の様々な原料を調達出来なくなったことで、中間財が深刻に不足していきます。石油化学分野を中心に中東・アジアの複数の企業がフォース・マジュール宣言(不可抗力による契約不履行)を既に出しています。

中間財(部品)が不足すれば完成品は作れません。例えば自動車はガソリン車で3万点の部品が、電気自動車でも1万~2万点の部品が必要です。どれか一つでも欠ければ完成車を作れません。

今回は単なる石油危機ではないのです。現行の地球規模でのスムーズな原材料調達、生産を前提とした世界経済の構造・仕組みそのものが危機に瀕しているのです。

●中間層と石油
日本人の生活と石油との関わりも、現在は50年前と比べて非常に密接になっています。

50年前は、石油危機が起こる前までの高度経済成長期で人々の所得が増えたことで、マイカーブームが起こり、自家用車を持つ人が増えていた途中でした。

また高度成長期には日本で石油化学産業が発展しました。バケツ、タッパー、玩具、包装材など、安価で軽くて丈夫な製品が大量に製造され、「使い捨て」の文化が根付きました。

当時の所得増で三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)を始めとした家電が大量に買われました。これらはみなプラスチック製です。

つまり高度経済成長を通じた中間層の拡大が、人々の石油需要の増大を招いたとも言えるのです。これは日本だけでなく先進国でも新興国でも同じです。中間層の拡大とモータリゼーション・石油化学製品の大量消費は密接に関わっているのです。

石油に依存した大量消費社会は現代まで拡大の一途を辿りました。現代は石油化学製品で溢れています。自動車の製造にバンパー、ダッシュボード、タイヤなどの石油化学製品は必須です。

今回の危機はこうした流れを反転させる可能性があります。

すなわち、石油を中東産輸入に頼ってきた日本において、今回の危機による燃料やプラスチックなどの石油製品の途絶は、モノ不足による深刻なインフレと円安通じ、中間層が壊滅するだけの力を持つ恐れがあります。

中間層とは誰のことか?おそらくこの記事をご覧になっているあなたのことです。

今回の危機を他人事と考えないで下さい。ホルムズ海峡の封鎖から2か月近く経ってもまだ日常生活が平穏なのは、実体経済に影響が本格的に伝播するまでにある程度の時間を要するために過ぎません。

そう遠くないうちに、あなたの身の回りでモノ不足とコストプッシュ型のインフレが次々と現れてきます。

やれることは今のうちにやっておきましょう。

詳しくは本日配信のアボマガ・エッセンシャルの記事をご覧ください。

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