金価格4000ドル突破。AIバブルを凌ぐ値上がりの背景には何が?

[2025/10/08 ロイター]金先物が初の4000ドル台、現物も最高値 不確実性背景に買い優勢

金先物が7日の取引で初めて1トロイオンス当たり4000ドル台に乗せた。米政府機関の一部閉鎖に起因する安全資産に対する需要増のほか、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測を背景に金価格の上昇が続いている。

金先物価格が遂に1オンス4000ドルに達した。年初はまだ2600ドルほどだった。

さらにこの記事を配信した後、金現物価格も4000ドルを突破したとの報道が私の目に飛び込んできた。

金スポット価格が初の4000ドル突破、米政府閉鎖や景気懸念で上昇加速
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-07/T3SCA6GOT0JM00?srnd=cojp-v2

世界ではAIバブルが起きているが、ナスダック総合指数の年初来値上がり率は約18%。対して金先物は約52%。金価格の方が圧倒的にハイテク株より値上がりしている。

さらに銀価格は約62%、プラチナ価格は約82%、それぞれ年初来から値上がりしている。AIバブルの陰でこれを凌ぐ貴金属投資ブームが起きているのである。

ゴールドはバブル状態にあるのか?日本では個人の現物金需要が急増し、田中貴金属は製造が追いつかず小型金地金の販売を一時停止した。

やはりバブルなのか?ただメディアの報道で金バブルという言葉は見られないし、これを煽るような記事も見当たらない。

著名投資家による金投資推奨記事が最近目立つ。昨日、レイ・ダリオがポートフォリオの15%を金で持つことを推奨する記事が出た。先月には債券王のガンドラックが25%の保有を推奨している。

これはポジショントーク、罠なのか?金バブルという報道が出ないなかでこうした金投資を促す記事が出ていることは警戒サインなのか?

考えがまとまったらいずれ有料メルマガにて配信するつもりだ。

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上で引用したニュース記事に関して、少しコメントしたいことがある。

金価格の値上がりの理由の一つにFedの利下げ観測が挙げられている。ロイターだけでなく他のメディアでもそう言われることが多い。

実際には、金融政策は金価格の動向にほとんど影響を与えていない。

実質金利に金価格が連動する傾向は、2022年に崩れ始めた。

近年、金価格は米国をはじめとした世界の政治から大きく影響を受けている。

世界中の人々は政治への不安、財政への不安、そして将来の生活への不安に皆取りつかれている。

トランプ政権は誕生後早々に関税と不法移民の排除に取り組んだ。結果、新規労働者数は急速に落ち込み、米国のインフレ率はジリジリと上がり、スタグフレーションリスクはいまでも付きまとっている。

政府効率化省(DOGE)の活動で十分に連邦政府の支出を削減することは出来ず、一方で大型減税法案を成立させ、財政が好転するようには思えない。金利上昇で利払い費は増えるばかりだ。

さらにFedへの圧力・介入を強め、今月から政府機関を閉鎖し、国の形や仕組みそのものが変わる可能性すら秘めている。

米国だけではない。日本では世界の誰もが予想しなかった高市早苗氏が自民党新総裁に選出された。積極財政で財政が悪化し、インフレ、円安、金利上昇に歯止めが掛からなくなるリスクが出てきた。

スパイ防止法を制定し反体制的言論を封じ、憲法改正し、基本的人権を奪い、徴兵制を再導入し、中国と戦争する道に一歩近づいた。

他方で財務省が支持した小泉進次郎との票差はあまり大きくなかった。高市新政権の布陣を見ると、麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長は財務相経験者である。小林鷹之政調会長は財務省出身である。

財務省の影響力は健在であるように見え、高市総裁はそう簡単に積極財政策を打ち出せると思えない。

自民党は衆参両院で過半数割れのなか、戦争反対・好中の公明党が連立から抜け野党と組めば自民党は選挙でますます勝てなくなる。そもそも首班指名選挙で高市総裁に投票しない可能性もあると言われる。

高市総裁が首相になる保証はない。首相になっても自由に身動きを取りづらい。日本の政治は様々な政治家・官僚たちの思惑であっちにもこっちにも引っ張られていきそうであり、政治の先行き不透明さが強まり混乱に拍車が掛かりそうである。

フランスではルコルニュ首相が就任から1か月もたずに辞任した。首相辞任はここ1年で3回目だ。予算を巡る与野党対立が要因にあり、ここでも財政を背景とした政治的混乱が増すばかりである。

金価格4000ドル突破は日本とフランスの政治的波乱が直接の要因となった。