今回は本日アボマガ・エッセンシャルで配信した記事の前半部分をご覧いただきます。
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今回は日本の現状について書きたいと思います。残念ながら国が国民を守るというのは過去の話です。
日本政府は国や財政、利権を守るために日本国民の生きる権利を奪い取っているというのが実態のようです。そのからくりについて、経済・金融面から紐解いていきます。
日本国債購入者、みな大損!
超長期債を中心に日本の長期金利が大きく上昇してきました。
2021年末には40年債利回りは0.6%台でしたが、今年5月には一時3.6%以上を付けました。
その後やや低下しましたが、積極財政を主張する高市早苗氏が世間の予想に反して自民党の新総裁に選ばれ次期首相となる見通しになったことから、40年債利回りは急騰し現在は3.5%以上あります。
22年は日本でインフレが始まり定着し始めた年です。インフレ率が上がると長期金利も上がります。そのためマクロ経済的に言えば長期金利上昇は日本のインフレ定着そのものを反映したものと言えます。

需給の面では、日本における国債の主要な買い手が悉くいなくなってしまったことが長期金利上昇の直接の要因です。
昨年8月から日銀が国債買い入れ額を縮小し始め、事実上の量的引き締め(QT)が始まりました。
下図の通り、13年以降国債の最大の買い手でいまでも過半数を保有している日銀が、QT開始により売り手に転じてしまいました。今年1~3月は最大の売り手です。
さらに銀行が売り、生保が買わなくなったことで、日本国債を購入する日本勢はGPIFなどの年金勢に限られています。
海外投資家が穴埋めしている形ですが、今年に入り日本国債は売り越し超となっています。

日銀が国債を売り越しているということは、バランスシートが縮小していることを意味します。植田総裁はこの点有言実行です。
私は一年前に今後の日銀の国債保有残価を粗く見積もり、国債価格が変わらないと仮定して、昨年末時点で保有残高は591兆円ほどで、今年から減り始めると考えていました。
ところが実際には、昨年末の国債保有残高(時価)は559兆円と予想を32兆円も下回っただけでなく、23年末の残高581兆円を22兆円下回りました。
長期金利の上昇で国債の市場価格が安くなり、早いペースで日銀の国債保有残高は縮小しているのです。

さらに生保が超長期債を買わなくなったことが日本国債の需要悪化に大きく貢献しています。
今年4月から本格的に導入となったソルベンシー規制への対応のため、生保は20年・30年・40年物の超長期国債を20年~24年頃まで積極的に購入してきました。
生命保険を契約し被保険者が亡くなるまで何十年もある(=負債である責任準備金の満期が何十年もある)ので、資産の満期もこれに合わせることで金利変動リスクを軽減することが目的でした。
生保が超長期国債を買い入れたタイミングは最悪でした。長期金利が歴史的低水準から上昇し始めたタイミングでしたから。
国債価格は長期金利の上昇で大暴落しています。生保の買いがピークだった22~23年頃の30年債の利回りは大体1.5%程度でした。粗雑に計算すると、このときに買った30年債の市場価値は30%以上下落していることになります。
20年に買った国債はもっと悲惨です。当時の30年債の利回りは0.3~0.6%程度でした。この頃に買った国債の市場価値は55%ほど下落していることになります。
時価で見れば国債の価値は暴落しているのです。金利変動リスクを減らすための対応のはずが、これにより金利変動が直撃したわけですから本末転倒です。機関投資家の愚かさ馬鹿さを象徴します。

大手4社だけで保有国債の含み損は10兆円近くあります。他の生保を加えれば軽く10兆円を超えます。
大手生保は国債以外にも株式、外国債券など多様な資産を保有しているので、会社全体としては含み益が発生していると言われます。
ただ中堅の生保は資産に占める債権の割合が多く、会社全体でも含み損を出しているところがあります。
市場環境や経営環境が悪化すれば、巨額の減損処理を出すハメになりかねません。こんな状況で大手を含め国債を買い増す余裕などありません。

昨年7月配信の記事で、財務省は国債発行年限の短期化を図っていることをお伝えしました。
それから一年足らずで超長期債を中心に国債入札で十分な買い手が現れなくなり、すでに年限短期化が始まっています。満期20年以上の年限の発行を減らし、満期2年以下のもので穴埋めしています。
年限短期化は財政破綻を速めます。90年代の不動産バブル崩壊とその後の金融機関の連鎖倒産の後、日銀はゼロ金利政策と量的緩和を始め、財務省は超長期債を低金利で日銀に買わせ、財政問題を先延ばしし続けてきました。
日銀がQTを始めてから一年足らずで、25年以上続けてきたこの財政問題先延ばしスキームが破綻したことになります。

長期金利の上昇で日本政府の利払い費が急騰しています。2024年度は9.7兆円と前年度の7.6兆円から28%上昇し、日銀が世界で初めて量的緩和を開始した2001年度の水準に戻ってしまいました。
財務省は2028年度に利払い費が16兆円に達する見通しだと言っています。利払い費の上昇は米国ばかり注目されますが、日本も他人ごとではないのです。

日本破綻を防ぐために、国民の最低限度の生活を営む権利すら奪い始めた政府・大企業
財務省が財政を破綻させないための最後の拠り所となっていると見られるのがインフレです。
インフレは政府の債務を目減りさせる最も強力な手段です。「インフレ税」を国民から収奪することの裏返しです。実はもうこれが日本で起きています。
下図は日本政府の債務残高(対GDP比)の推移です。21年度以降減り続けていますが、21・22年度と23・24年度には大きな違いがあります。
21・22年度は「実質GDP成長率(黄線)>債務残高の伸び率(黒線)」でしたので、実体経済の成長が対GDP比政府財務残高を減らすことにつながりました。
ところが23年度以降は「名目GDP成長率(赤線)>債務残高の伸び率>実質GDP成長率」となっていますから、政府財務残高がGDP比で減ったのは完全にインフレのおかげなのです。

(以下、割愛)
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