米国政府閉鎖でFOMCは利下げ出来ずに機能不全に陥るのか

[2025/10/01 ワシントンポスト]連邦政府の資金が期限切れとなり、政府機関の閉鎖が始まった

連邦政府は、連邦政府機関への資金提供を延長するための民主党と共和党、そしてドナルド・トランプ大統領との合意が議会で成立しなかったため、水曜日の午前 0 時 1 分に閉鎖された。

財政の停滞は、中小企業向け融資サービスから国立公園、退役軍人の職業訓練に至るまで、重要な政府機能が、議員が追加予算を承認するまで停止することを意味する。国家安全保障に不可欠な連邦政府の業務は継続されるが、多くの軍人や法執行官を含む職員は給与の支払いを受けられない。

今回の政府機関閉鎖は、10月1日から2026会計年度が始まった中で、つなぎ予算を米民主党の上院議員が反対したために起きた。

民主党は医療保険制度の補助金延長や、今年成立した大型減税・歳出法に盛り込まれた医療保険の予算削減撤回を主張していた。

欧州ではすでに予算を巡る政治の混乱が起きている。

ドイツでは昨年11月に予算協議を巡る対立が原因で連立政権が崩壊し、その後ショルツ前首相は解散総選挙に惨敗した挙句に辞任に追い込まれた。

フランスでも予算を巡り昨年12月にバルニエ内閣が、今年9月にバイル内閣が総辞職した。

予算、財政を巡るトラブルが先進国の政治を不安定にさせる大きな要因になっているのだ。

今回の米国連邦政府の閉鎖は、債務上限引き上げではなくつなぎ予算を巡るものなので、財政的な悪影響はさほど大きくないと見られる。

ただ閉鎖は予想外に長期化する可能性がある。何故ならトランプ大統領はこれを機に大量の連邦政府職員の解雇を目論んでいるためだ。

トランプ政権はDOGE(政府効率化省)を立ち上げ連邦政府内の腐敗組織・役人を解体・追放し、連邦政府のスリム化と財政支出削減を図ったが、大した成果を挙げないままイーロン・マスクは早々と連邦政府から去ってしまった。

DOGEで十分にできなかったことを、トランプは政府閉鎖を利用して推し進める可能性があるのだ。

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市場への影響はどうか。

1975年以降、連邦政府はこれまで20回の政府閉鎖を行ってきた。閉鎖期間は最短で1日、最長で35日(2018年12月22日に始まった直近最後の閉鎖)だった。

最長の閉鎖時の大統領はトランプで、南部国境沿いに壁を建設するための予算を巡る与野党の対立が原因だった。

これまで政府閉鎖は株式市場に大した影響を与えて来なかった。18年12月22日からの1か月以上に亘る閉鎖時にS&P500は10%以上値上がりした。

現時点で市場は静観しており、政府閉鎖によるマーケットへの影響をあまり心配しているようには見えない。

ただ一つ気になる点がある。それは政府閉鎖期間中、米労働統計局(BLS)が雇用統計、消費者物価指数(CPI)を始め重要な経済指標の公表を延期することだ。

特に雇用統計はFedが労働市場の現状を把握するために最も重要視しているデータである。

Fedは新規雇用者数の急減を受けて9月に25ベーシスポイント利下げしたが、雇用統計の最新の数字が出てこない限り、データ重視でこれまで金融政策を決めてきたパウエル議長率いるFOMCは動きようがない。

政府閉鎖が続く限り、今後のFOMCで何も金融政策を決めることが出来なくなり、機能不全に陥るおそれがあるのだ。

現在のCAPEレシオは40倍を超えている。これまでの政府閉鎖期間の中でS&P500のバリュエーションは最も高い。ここまでのバブル状況での政府閉鎖は初めてなのである。

長年市場はFedの金融政策を重視しており、これは投資判断の基盤を成してきた。今でもFedの追加利下げをマーケットは期待している。

投資判断の大きな拠り所の一つが無くなったとき、果たして市場はどのような反応をするのか?

政府閉鎖からしばらくはマーケットに大した反応はないかもしれない。しかしFOMCが機能停止し、政府閉鎖が解除される気配が一向に見られなくなった場合、果たして市場は平然としていられるのだろうか。