「利益・財務悪化に歓喜」する狂乱の米国株式市場

[2025/09/25 ブルームバーグ]AI投資熱浮き彫り、巨額計画発表でエヌビディア株急伸-テック銘柄も

人工知能(AI)への熱狂が株式市場に奇妙な新しい「数式」を生み出している。巨額のAI投資計画が示されると、その支出額を上回る規模で企業の株式時価総額が膨らむという現象だ。

例えばエヌビディアは先週、ライバルのインテルの株式50億ドル(約7400億円)相当を取得すると発表。さらに週明けには、生成AIのChatGPTの開発元OpenAIに最大1000億ドルを投資する計画を明らかにした。こうした発表があった3営業日で、エヌビディアの時価総額は3200億ドル超増加し、投資予定額の3倍に相当した。

中国のアリババグループは、今年初めに500億ドルのAI投資計画を示していたが、それを上回る支出を行うと表明。米国預託証券(ADR)は24日に一時10%上昇した。同社は具体的な追加額は明らかにしなかったが、時価総額は350億ドル超拡大した。

AIバブルの過熱が止まらない。

大手メディアの記事を見ていると、AIバブルへの真っ当な疑問、警鐘を鳴らしているものが結構ある。

上で引用したブルームバーグの記事もそうだ。通常、巨額の設備投資計画発表はその銘柄の株安につながる。

短中期的に利益やフリーキャッシュフローや資金繰りを圧迫することになり、利益の成長見通しが下方修正され、将来のバリュエーションが割高になるからだ。

一時的な株安でなく、何年にも亘り下落トレンドが続くことも珍しくない。

アマゾン、マイクロソフト、アルファベット、メタといった大手ハイパースケーラーは営業キャッシュフローを大きく上回るペースでデータセンター投資を進めようとしている。

オラクルはオープンAIと3000億ドル規模の契約を交わしたと見られ、すでにフリーキャッシュフローが赤字のなかでデータセンター投資を益々加速させなればならない。

早速オラクルは、前年度の営業キャッシュフローの0.72倍に相当する150億ドルの社債発行を表明したが、これでは到底不十分だろう。この10倍程度の資金調達が必要になるかもしれない。

最近大手コンサル会社のベインは、ハイテク会社が無駄なコストを徹底的に削減してキャッシュを捻出しても、データセンターへの巨額投資のための資金が毎年8000億ドル不足するとの試算を出した。

ハイパースケーラー達は、巨額の借り入れをするか増資で資金調達するしかない。

AIの収益化は進んでおらず、巨額のAI投資が水の泡となるリスクは十分にある。S&P500の時価総額トップ10の企業のなかで、今後消えるところが出ないとも言い切れないのだ。

にも拘わらず、ハイテク株は値上がり、値上がりである。

英エコノミスト誌でも最近、AIバブルへの警鐘を鳴らす記事が増えている。

この前はAIサーバー向けチップ(要はエヌビディアのチップ)の会計上の耐用年数の違いにより、大手ハイパースケーラーの利益が8%以上押し下げられる可能性があるとの記事が載っていた。

ほとんどのハイパースケーラーは近年、減価償却費を減らし利益を増やすために、AIサーバーの会計上の耐用年数を伸ばしてきた。現在はどこも5~6年だ。

しかしエヌビディアが最新GPUを出すと、これまで投資したGPUは少なくともAI学習の用途では役立たずになる。

エヌビディアはいままで2年周期で最新GPUを出してきたが、現在では毎年発表するように戦略を切り替えている。

つまりAIサーバーの耐用年数は最短で1年である。

古いGPUをそこまで大きな計算能力を要求されない用途に転換すれば耐用年数は伸ばせるが、それでも5~6年が妥当かどうかは定かでない。

もし1~3年程度が妥当だと監査法人が判断すれば、大手ハイパースケーラーの減価償却費は一気に倍以上に増えることになるのだ。

会計とバブルには密接な関係がある。

粉飾決算の横行はバブルの大きな特徴である。ドットコムバブルが破裂したときに、エンロンとワールドコムの粉飾決算が暴露され、その後両企業は消滅した。

別に大手ハイパースケーラーたちが粉飾決算をしていると言っているわけではない。

ただAIデータセンターへの未曽有の投資を求められ今後の利益低下を避けられないなか、投資家からの信頼を維持し、巨額の資金調達を引き出すために、粉飾決算に手を染めるところが出ないとも言い切れないのだ。

もちろん、インサイダー達が高値で売り抜けるための私利私欲目的にも粉飾は使われる。


//★本日のアボマガ・エッセンシャル★//


インテルとエヌビディアが歴史的提携

8月以降、インテルが米国政府や民間企業から巨額の支援を受けるという報道が紙面を賑わせます。

その中で最も重要なのは、インテルとエヌビディアがデータセンター用・パソコン用チップの開発・生産で提携すると今月発表したことです。

インテルはエヌビディアやAMDにチップのシェアを奪われ続け、4年間で900億ドルを投じてきたファウンドリー事業では十分な顧客が付かず、経営的にも財務的にも苦しんできました。

CPUとGPUの巨人2社による提携は、半導体業界の勢力図を塗り替え、インテルにとっても経営の大きな転換点になりそうです。

何せインテルはデータセンター向けCPUを「18倍多く売れるようになる」のですから。

この発表を受けてインテルの株価は22%上昇し、年初来で76%高となっています。AIバブルを象徴する出来事と思われるかもしれません。

しかしPBRが1倍割れしていた中、提携によって生まれる巨大なインパクトを考えれば、この暴騰は決して理解できない話ではないのです。

詳しくはアボマガ・エッセンシャルの配信をご覧ください。Webサービスからご覧いただけます。